先日来、このブログで何度も、小生が人類学や進化論にはまってしまったことを取り上げさせて頂いております。人類学や進化論が行き着く先は、生物学であり、生命論であり、地球物理学であり、宇宙論となります。まさに、「我々は何処から来て 何処へ行くのか」というアポリアに答えてくれます。
今読んでいる田近英一東大大学院教授監修、小林直樹著「文系のためのめっちゃやさしい地球46億年」(ニュートンプレス、2022年6月20日初版、1650円)は確かにめっちゃ面白くて、読了してしまうのが勿体ないぐらいなのです。書かれていることは、理系の人にとっては基本中の基本で常識なのかもしれませんが、私のような文系人間にとっては初めて知る専門用語ばかりです。しかも、私は年配の人間ですので、私が学生時代に習った地球史なんて全く役に立ちません。教科書も新しく書き換えられていることでしょう。何と言っても、21世紀になって人類の化石のゲノムが解読されるようになって古生人類学が飛躍的に進歩したわけですから、20世紀に学生時代を送った今は40歳代以上の方の多くも知らないことばかりだと思われ、この本を読めば吃驚することでしょう。
大変失礼ながら聞いたことがない出版社ですから、何処でこの本を見つけたかと言いますと、久しぶりに浦和にある須原屋書店に行き、地下にある人類学・進化論のコーナーで発見したのです。やはり、アナログの店舗に行けば、セレンディピティ、つまり思わぬ好運に恵まれるものです(笑)。須原屋は、江戸時代、最大手の版元だった浅草の須原屋茂兵衛(蔦屋重三郎のライバルだった)の流れを汲み、明治9(1876)年に浦和宿に貸店舗として創業されました。ということは創業147年という老舗です。出版不況でつぶれてほしくないので、足を運んだわけでした。
さて、「地球46億年」ですが、何が面白いかって言ったら…、いやあ、皆さんも是非とも手に取ってくださいな(笑)。大きな活字で、ヘタウマのイラストが入り、ちょっとお子ちゃま向けの書き方なので、人前で読むのは恥ずかしいかもしれませんけど、恐らく、知らないこと(人)ばかり出て来ると思いますよ。シアノバクテリア、ストロマトライト、スタンリー・ミラー、アノマロカリス、ダンクルオステウス、超大陸パンゲア、アルフレッド・ウェゲナー、P/T境界大量絶滅イベント(2億5200万年前、生物の90%以上が大量絶滅)…等々ですが、これら全て御存知でしたら、この本を読む必要はありませんが(笑)。
でも私のような文系人間にとってはほとんどが初耳です。しかも、私の学生時代は「氷河期」と習ったのに、今では「全球凍結」なんてシャレた言い方になっています。ちなみに、全球凍結は、過去に少なくとも3回あったらしく、最初が約23億年前のマクガニン氷河期、次が約7億年前のスターチアン氷河時代、今のところ最後が約6億年前のマリノアン氷河時代です。ということは、あと何億年?かしたら、地球はまた氷河期、いや全球凍結になるのでしょうね、きっと。勿論、そうなれば人類も確実に滅亡します、残念ながら。
まさに、レヴィ=ストロース言うところの「世界は人間なしに始まったし、人間なしに終わるだろう」(「悲しき熱帯」)です。
現在、地球温暖化が叫ばれ、温暖効果ガスとして二酸化炭素(の排出)が悪玉の親分のように毎日取り上げられていますが、逆に、全球凍結になれば、回復するにはこの二酸化炭素が何よりも必要なことがこの本で初めて知りました。また、38億年前に生命が誕生し、27億年前に出現した二酸化炭素と太陽光で光合成を始めたシアノバクテリアのお蔭で、酸素が生まれ、その酸素をエネルギーとして多種多様な微生物(まだバクテリアの段階ですが)が生まれたという話には、ロマンを感じましたね。色々な偶然が重なって、生物が進化していく過程は、必然ではなく、まさに奇跡と言って良いでしょう。
このような地球46億年の歴史は、聖徳太子が教科書から消えて厩戸皇子となったとか、鎌倉幕府成立が1192年ではなく、1185年に教科書が書き換えられたというレベルなんかの話ではありません。私の学生時代の教科書が全く通用しないぐらい全面的に書き換えられたと言って良いでしょう。
そんな新しい知識がこの本には分かりやすく網羅されているわけですから、こうして開かれた新知識に接しないなんて勿体ないですよ!何歳になっても勉強しなきゃ(笑)。
そうそう、忘れるところでしたが、何で地球46億年で、宇宙誕生138億年なのか、その関連性が分からず疑問に思っていたら、138億の3分の1=46億という数式から出されたらしいですね。これも、この本で初めて知り、ちょっとスッキリしました。
(つづく)