現代の奴隷

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公開日時: 2007年5月25日 @ 09:23

派遣会社による給料の不透明な「天引き」に対して、派遣労働者が返還請求を始めたことがニュースになっていますね。

 

至極、真っ当な話です。もっと多くの人が声をあげなければならない事件だと思います。

 

昨今、日雇い派遣業界で、「業務管理費」「データ装備費」などの名目で、250円ほど給料から天引きされていますが、これが全く、実態のない「ピンはね」で、任意であるはずなのに、派遣労働者には説明責任を果たさず、半ば強制的に徴収しているというのです。

 

1日に約3万人を派遣する派遣大手のグッドウイル(折口雅博会長=経団連理事)は、この天引きだけで、年間約15億円に上るというのです。

これは、はっきり言ってボッタクリです。

この「日雇い派遣」のことを今は「スポット派遣」などど格好良く呼んでいますが、昔の「蛸部屋日雇い」と全く実態は変わりがありません。派遣の形態が昔の手配師が指図していたのが、携帯電話やメールになっただけなのです。生活は相変わらず悲惨で、生活保護家庭よりも収入の少ないワーキングプアで、アパートすら借りられず、インターネットカフェで夜を過す「ネットカフェ難民」になるしかないのです。

この派遣業は、まさしく人買い、平安時代の「安寿と厨子王」の世界と全く変わりがないのです。日雇い労働者は鎖のない現代の奴隷です。日本人はどこが変わったというのでしょうかね?

ジャーナリストの奥野修司氏が、この派遣業の実態を「『悪魔のビジネス』人材派遣業 時代の要請か、格差の元凶か。急成長する四兆円産業のカラクリ」というタイトルで暴いています。(「文藝春秋」6月号)

それによると、人買い、いや人材派遣業は1995年に1兆円強だったのが、昨年は4兆円を突破。「潜在市場規模は40兆円」といわれているそうです。派遣労働者の数も、95年の60万人から05年度は255万人とうなぎ上り。日雇い、いやスポット派遣というらしいのですが、彼らの年収は、ピンはねボッタクリ、いや天引きに天引きされて平均150万円。働いても働いても貯金もできず、アパートの敷金もできず、もちろん結婚など不可能だというのです。

例えば、天引きの実態はこうです。広告で、「日給8000円から」とあるのに、例の「データ装備費」を引かれ、千円の交通費が引かれ(千円を超えると自己負担だが、そもそも、天引きされるので、最初から自己負担のようなものです)、時には1枚千円のユニフォームを買わされる。強制ではないと言いながら、着用が義務付けられる。何じゃこれ?って感じですね。こうして、手取りは、5000円台後半かそこらになってしまうのです。1ヶ月20日間働いても、月収15万円もいかないのです。

「40兆円産業」ともなれば、甘い蜜を嗅ぎ付けて、政治屋も群がってきます。「規制緩和」というアメをチラつかせて、政治献金を求めてくるのです。こうして、人買いと政治屋の持ちつ持たれつの関係が見事に締結されるのです。

そういえば、グッドウイル goodwill とは、「善意」とか「親善」とかいうのが本来の意味です。この会社は福祉も食い物にして、度々、当局から行政指導を受けています。「ブラックジョークすぎるなあ」と思っていたら、辞書の片隅にこんな訳も出ていました。

お得意様

奥野修司『満足死』

ローマ

最近出版された「満足死」は、大宅ノンフィクション賞作家の奥野修司氏が、地域医療というより過疎地医療に半生を捧げている高知県佐賀町(現黒潮町)の拳ノ川診療所の勤務医、疋田善平(ひきた・よしひら)氏の日々の活動を追った記録です。

疋田医師は「寝たきりゼロ」を目指して、「死ぬまで働け」と提唱しています。人間には運動するための細胞と、生命を維持するための細胞があり、生命維持の細胞は、その個体が死ぬまで、コンスタントに働くが、運動細胞は、使われないと衰退してしまうそうです。「寝たきり」というのは、その生命維持細胞が元気なのに、運動細胞が衰退した状態で、寝たきりにならないためには、運動細胞を活性化し、生命細胞を衰退させればいい。全細胞が同じように衰弱し、器官が止まれば、苦しむことがなく、自然死を迎えることができるというのです。

死ぬまで健康を保ち、自然死したければ、「死ぬまで働け」というわけです。

面白いデータがあります。(京都大カール・ベッカー教授)

イギリス、ドイツ、日本の3カ国で「両親の面倒を最後まで看ますか」と質問したところ、

英国人は50%、独人は62%、日本人は75%の人が「ハイ」と答えました。

ところが、実際に親が寝込んだときにそれを実行したかどうか調査すると、

英国人は40%、独人は50%、日本人はわずか20%しか実行していなかったというのです。

日本人は口先だけなんですね。現実と期待値の乖離がみられます。

疋田医師は難問をぶつけます。

「子供が面倒を看てくれなかったら、行政に頼りますか?最近は、福祉予算が削られ、簡単に老人ホームにもはいれないんですよ」

それでは、どうしたらいいのか。寝たきり(生活死)になってから、臨終(生物死)を迎えるまでの間隔が短ければ短いほどいい。その理想が一週間だというのです。

疋田医師は言います。

「大体、嫁さんをはじめ、家族がお世話をしてくれるのは1ヶ月です。バカ息子でも1ヶ月はしてくれます。1ヶ月過ぎると、早く死んで欲しいとは言わなくても、粗末に扱われると思った方がいい。これが、二カ月、三カ月となると、現実問題、世話する側で困る人が出てくる。そうすると、生活死から生物死まで、最長1ヶ月以内でないと具合悪い。もちろんベストは一週間以内です。それでは1ヶ月以内にコロッと死ぬにはどうしたらいいか。それが私の言う『死ぬまで働け』という意味です」

どうです、少しは参考になりましたか?

詳細は同書を読んでみてください。