3月17日付の渓流斎ブログ「チャイコフスキーはもともとチャイカさんだったとは」を書いたところ、この記事にも登場する恵雅堂出版のM氏から早速、ではなくて、1週間近く経った忘れた頃にメールを頂きました(笑)。
同出版社が運営する東京・高田馬場のロシア料理店「チャイカ」は、ロシアによるウクライナ侵攻にも関わらず、嫌がらせを受けることなく、頑張って順調に営業成績を伸ばしている、とのことでした。これで一安心しました。
3月17日と同じことを書きますが、このお店は、恵雅堂出版を創業した麻田平蔵氏が、満洲(現中国東北部)ハルビンにあったロシア語専門の大学校「哈爾濱学院」出身ということで、学生時代に現地で食べたロシア料理が忘れられず、日本でもその味を再現しようと、1972年に開店したと聞いています。
この恵雅堂出版というのは、知る人ぞ知る出版社で、私も御縁のある出版社でした。ーということは何度もこのブログに書いたことがあるのですが、恐らく、私自身の手違いでそれらの記事は消滅してしまったと思われますので、くどいようですが、同じようなことをもう一度書きます。
私と恵雅堂出版との御縁は、同社から上梓された陶山幾朗編著「内村剛介ロングインタビュー ―生き急ぎ、感じせくー 私の二十世紀 」(2008年7月1日初版)の感想文をこの渓流斎ブログに書いたことがきっかけでした。
と思ったら、実はそれを遡る遥か昔から御縁があったのです。同社は1950年に恵雅堂として創業されました(確か、社名は創業者の麻田平蔵氏の奥さんとお嬢さんのお名前から取った)。今でこそ、多くのロシア関係の書籍を出版しておりますが、最初は写真家淵上白陽(1889~1960年)の写真集の出版と東京都内の学校の卒業アルバムを手掛けることから始められたようです(現在も)。というので、その話を聞いて、自宅の奥に眠っていた、もう40年近い昔の私の東京郊外の小学校と中学校の卒業アルバムを見てみたら、何と恵雅堂出版の製作だったのです(クレジットあり)。しかも、中学卒業アルバムの巻末には当時に起きた「世界の出来事」が付いており、そのニュース写真は時事通信社のものを使っていたのです。
他にもこの出版社と私は色々なつながりがありましたが、長くなるので割愛します(笑)。でも、その度に、私は「不思議な御縁で繋がっているものだなあ」と思ったものです。
昔話を割愛したのは、今回書きたかったことがあったからです。この恵雅堂出版から出版された「悲しみの収穫」という本が、何と、今や、ネット通販の中古市場で85万円以上の値が付いているというのです。検索してみたら、151万5151円の高額の値を付けた出品者もいました(3月23日現在)。
この本は、副題に「ウクライナ大飢饉」とあるように、1932~33年、人工的にウクライナで発生させた飢饉によって400万人以上が死亡したといわれる「ホロドモール」のことが書かれているようです。
この本の編集にも携わった恵雅堂出版のM氏によると、この本は2007年4月に、本体価格5000円で発行されたといいます。しかし、2013年には品切れとなり、重版も未定ということから、「希少価値」となり、今の「ウクライナ戦争」のご時世になって価格が急騰したとみられます。
日本人の知的好奇心の旺盛さには称賛されるべきものがありますが、ちょっと価格が異常ですね。それに、版元の恵雅堂出版は既に手元から離れたわけですから、いくら中古市場で値が上がろうと、同社には一銭も入りませんからね。
売上の一部がウクライナ支援の義援金に回ることを願うばかりです。