日本学術会議問題に杉田官房副長官が関与か

 日本学術会議が推薦した会員候補105人のうち6人が任命を拒否された問題。あっさり片付くかと思ったら、菅義偉首相は「総合的、俯瞰的に判断した」と理由にもならない禅問答に終始して撤回を拒否し、一層、混乱に拍車が掛かっています。

 それが、今朝(13日)の毎日新聞によると、6人の名前名簿から除外する判断に杉田和博官房副長官が関与していていたというのです。

 杉田官房副長官? 知らなければ潜りですね。有名な杉田水脈さんじゃありませんよ(笑)。

 今年4月16日、首相官邸の事務方トップを務める官房副長官職の在職日数が石原信雄氏の2668日を抜き、単独2位となった方です(歴代1位は古川貞二郎氏の3133日)。

 埼玉県立浦和高校から東大法学部を卒業し警察庁へ入庁。主に公安畑で活動し、1995年のオウム真理教による地下鉄サリン事件では警察庁警備局長を務め、陣頭指揮を執った人です。1941年生まれの79歳にして未だに現役バリバリ。2004年、内閣危機管理監を最後に退官しますが、12年には第2次安倍内閣の下で内閣官房副長官に就任し、17年からは内閣人事局長まで兼務しております。

 本人は温和な性格らしいのですが、警察官僚、しかも公安出身ということで、強面(こわもて)のイメージが先行しますね。その上に、官僚人事の差配まで多大な影響力を持つ内閣人事局長ということになれば、官邸の事務方トップというより、官僚事務方トップと言えるでしょう。この人に睨まれては、左遷させられるか、名簿から削除されかねません。周囲も忖度するしかないことでしょう。

 毎日新聞の記事では「政府関係者が12日、明らかにした。」となっていますが、この政府関係者がどなたなのか、気になりますね(笑)。この方は「杉田さんですよ。名簿から削除したのは」とでも毎日の記者にしゃべったのかしら。

 それにしても、この学術会議問題は泥仕合のようになっています。フジテレビ上席解説委員が5日のテレビのワイドショーで「この人たち6年ここ(日本学術会議)で働いたら、その後(日本)学士院というところに行って、年間250万円年金もらえるんですよ。死ぬまで。みなさんの税金から。だいたい。そういうルールになっているんですね」と発言したことから、世間は、大騒ぎ。しかし、日本学術会議の会員経験者が全員、学士院会員になれるという決まりはなく、発言は誤りだったことはすぐ判明しましたが。

 日本学術会議は内閣府の所管で、210人の会員は非常勤特別職の国家公務員。年金なし。会合の度に交通費並みの手当が支給されます。一方、日本学士院は文部科学省の特別機関で定員は150人。年金250万円が出ますが、終身会員のため、欠員が出て初めて新会員が推薦募集されるといいます。

 とばっちりを受けたのは日本学士院です。年金は国民の税金から出ているからです。「学問の自由を叫ぶ前に、ひも付きをやめて、民間として独立したらどうか」とネット上で叫ぶ人も。

 結局、自由とはお金の問題なんですかね?

  

東証は大丈夫なのか?=そして「学問の自由」の侵害に物申す

銀座・能登輪島 

 昨日10月1日、東京証券取引所のシステム障害で前代未聞の「終日、全銘柄の売買停止」の事態となり、関係者は泡を食ったことでしょう。1日3兆円もの取引があるとは、知らなかったなあ…。

 何しろ、東証に参加している7割が外国人投資家だということですから、世界的な大事件になってしまったわけです。でも、単純計算すると、日本人はわずか3割しかやっていないということでしょうか。じゃ、ほとんどの皆さんには関係ない話でしたね(笑)。

 私が興味を持ったのは翌日の新聞紙面はどうなるか、ということでした。何しろ「終日停止」は初めてのことです。まさか白紙の紙面を出すわけにはいかないはず、どうなるのかなあ、と思いましたら、2日の日経朝刊紙面は上の写真の通り、「-」が並びました。(朝日、毎日、東京は株価欄は掲載せず、読売、産経はデータなしで掲載)

 2日はシステムも回復して、通常通り取引が再開されたということで、やれやれです。「バックアップ」が機能しなかったということが今回最大の問題点だったでしょうね。

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 さて、菅義偉首相が1日、「日本学術会議」(政策提言を行う国の特別機関)が新会員として推薦した法律・歴史学者ら6人の任命を拒否していた問題が発覚し、本当に唖然としました。政府は、その理由を開示することを頑なに拒否しましたが、任命拒否された6人は安全保障関連法や特定秘密保護法などで政府の方針に異論を唱えていた学者ばかりです。任命拒否は、憲法が保障する「学問の自由」の否定につながり、「ついにここまで来たか」との意を強くしました。

 任命拒否された一部の学者をご紹介すると、特定秘密保護法について、「民主主義の基盤そのものを危うくしかねない」と批判した東京大社会科学研究所教授の宇野重規教授(政治思想史)、長年、改憲や特定秘密保護法などに反対してきた東京大大学院人文社会系研究科で日本近現代史の大御所・加藤陽子教授、「共謀罪」の趣旨を含む改正組織犯罪処罰法案について、参院の参考人質疑で、「戦後最悪の治安立法となる」と批判した立命館大大学院法務研究科の松宮孝明教授(刑事法)らです。

 随分あからさまですねえ。6人全員、菅氏から見れば、いわば国家権力に歯向かった人ばかりです。でも、ここは、民主主義国家日本ですよ。中国や香港や北朝鮮やベラルーシやロシアの話じゃないんですからね。これでは、「彼らには人権がない」なんて批判すらできませんよ。このままでは「表現の自由」まで脅かされかねません。

 2日になっても、加藤勝信官房長官は「任命権者である首相が日本学術会議法に基づいて任命を行った」と繰り返すのみで、任命拒否を見直す考えはないことを改めて強調しました。

 菅政権になってまだ間もないですが、こういう風潮では「この道はいつか来た道…」になりかねません。安倍前首相が後ろで糸を引いているのか、菅首相自身がしたたかに独裁しているのか、今の時点ではまだ推し量ることはできません。でも、黙っていたら、菅首相に同調することになるので、私は断固、任命拒否の撤回を求めます。