築地の電通旧本社の思い出=作家A氏に呼びつけられて

 久しぶりに、築地・明石方面でランチしようと、ブラブラしていたら、築地の電通の旧本社ビルがあった一帯の4棟のビルが解体工事であることを知りました。

 電通の旧本社ビルは、建築家の丹下健三(1913~2005年)が設計を手掛け、竣工は1967年。老朽化を理由に、電通本社は、汐留に移転しましたが、その汐留のビルも、電通は、不動産大手ヒューリックなどが出資する会社に売却することを昨年、発表しておりました。(売却額は3000億円規模で、約890億円の売却益を見込んだとか)知らなかった!

 築地の旧本社ビルなど4棟のビルは、住友不動産が2014年に取得し、解体工事は大成建設によって昨春から始まっており、今夏には終了。住友不動産は計画をまだ明らかにしていませんが、大型オフィスや住居や商業施設など大規模な再開発地区になることでしょう。

築地・イタリアン料理「のら」

 丹下健三が設計したコンクリート剥き出しの旧電通本社ビルには思い出があります。1996年頃だったでしょうか。当時私は文芸担当記者でした。毎月1本は、有名作家さんにエッセイを書いてもらうことも仕事の一つでした。そのため、文芸出版のパーティーなどで作家さんを見つけると、名刺を渡して、「先生、何か書いてもらえませんでしょうか。ペラで5、6枚で構いませんから」などと立ち話をするのが常でした。

 ペラとは業界用語で、200字詰め原稿用紙のことです。

 「数打てば当たる」と名刺をばら撒いていたのですが、そのうち、電通社員ながら芥川賞を受賞したA氏から電話が掛かってきて、「電通本社に来ないか」と誘われたのです。「お、これは、エッセイでも書いてくれるんだな」と私は喜び勇んで、丹下健三設計ビルに足を運んだのでした。

 そしたら、通されたのは応接室でも何でもなく、彼の職場のデスク。彼がどこの部署だったか忘れましたが、次長クラスで、「次長なんて、石を投げれば誰にでも当たる。そこら辺にうじょうじょいるよ」と自嘲気味に話し、「何でもいいからお好きなテーマでエッセイを書いて頂けませんか」と、こちらが御願いすると、「『何でもいい』というのは一番良くない。作品を全て読み込んで、この作家には、このテーマが一番相応しい、と最初から持って来なければ駄目なんだよ」と散々、このほか、あれやこれやと30分ぐらい説教されました。

築地「のら」あさりトマトソース・スパゲッティ・ランチ 990円

 説教するぐらいだから何か書いてくれるのだろう、と期待したのですが、答えは「今は忙しいから駄目だ」の一言でお終い。一体、何のために、人を呼びつけたのか、非常に腹が立って会社に戻りました。「書く気がないなら、お前なんかより遥かに忙しい、ライバル社の3倍は働かされる、貧乏会社の記者を呼びつけるんじゃないよ!」と怒りが再燃しました。

 いや、実はその作家に対しては、長い間、腹の虫が収まりませんでした。その後、私は文芸担当を離れましたが、何年かして新しく文芸担当になった男は、文学の「ぶ」も知らないような、あまり本は読まない、世間知の低い人で、Aはその新人をうまくだまくらかして、自分が指名した銀座の高級フランス料理店での「取材の打ち合わせ」を条件に(しかも夫婦二人分)、短いエッセイを書いたのでした。

東京・中央区役所(元土佐藩中屋敷)

 その新人だった文芸記者は、5年前に若くして亡くなりました。

 著名な作家A氏も昨年、訃報に接しました。

豊田真由子さんと竹中平蔵さん

WST National Gallery copyright par Duc de Matsuoqua

 2017年、衆院議員時代に、自分の秘書に対して「このハゲ~!」「違うだろ~っ!」などと暴言を吐いたり暴行をしたりしたことが週刊誌やテレビで報じられ、同年の衆院選で落選した豊田真由子さんが、いつの間にか笑顔でテレビのコメンテーターとして復活していました。髪型も化粧も変えて、物腰も口調も柔らかく丁寧になり、すっかり別人。吃驚しましたね。女性誌もスポーツ紙(サンスポ)も復活を大歓迎しています。日本人ですから3年間で禊が済んだということなんでしょうかねえ?

 でも、心に傷を負った年配の元男性秘書の方のトラウマは、いまだに消えていないことでしょう。彼女は、もう公人ではないので、とやかく言われる筋合いはないかもしれません。でも、起用するテレビ局(民放各社)やラジオ局(ニッポン放送)のディレクター、プロデューサーは節操がない、というか、視聴率が取れれば、何をしても許されると思っているのか、日本の視聴者は何でもすぐ忘れるから大丈夫だと馬鹿にしているのか、それとも裏があるのか、バックに大手事務所が付いているのか…。そのいずれも当てはまると考えざるを得ません。

 このままでは、今の「時の人」黒川弘務・高検前検事長も、3年も経てば、コメンテーターとしてテレビに出てくるかもしれません。

WST National Gallery copyright par Duc de Matsuoqua

 以上は些細なことでしたが、今盛んに報じられている「持続化給付金」の業務委託問題は、やっぱりおかしいですね。こっちの方が深刻です。何か、権力者たちが「臭い物には蓋」をしたいといった感じで隠してきたことが、急に、真相が浮上してきたようにみえます。国会でも野党が追及しています。

 この問題解明に熱心な今日付の東京新聞などによると、まず主管の経済産業省が「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」というよく分からない法人に769億円で業務委託。これを協議会が広告代理店電通に749億円で再委託したといいます。差し引きの約20億円は、みずほ銀行(振込手数料約17億1000万円)と電通ワークス(振込の人材確保)と日本生産本部(企業へのヒアリング)に割り当てられたとのこと。

 いずれにせよ、協議会から電通に「再委託」というのは何か不可解ですね。電通は、給付金支給業務は、自社のグループ会社のほか、人材派遣会社のパソナとITアウトソーシング会社トランス・コスモスなどに再々委託する格好となっています。

 そもそも、「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」は2016年5月に、これら電通とパソナとトランス・コスモスによって設立されたというんですから、受注側と委託側がまるっきり同じじゃありませんか。自作自演? しかも、法人の東京・築地の住所に人がおらず、電話番号も明記されていないとか。幽霊会社?

 特に、パソナの会長は、あの経済財政担当相時代に派遣労働者や非正規雇用者を増大させ、「政商」と言われた竹中平蔵氏ではありませんか。ここにもいらっしゃったんですか。さぞかし、金の匂いがしたんでしょうね。これでは、「臭い物には蓋」どころか、蓋をしても、政治の臭いがプンプン漂ってきます。

 

正しく怖れよ? 新型肺炎

WST National Gallery Copyright par Duc de Matsuoqua

 後の世に語り継がれるであろう「新型コロナウイルス騒動」は、ここまで世界的に拡散するとは、思いも寄りませんでしたね。最初にニュースになった頃、テレビに出てきて、「ヒトからヒトには感染しません」と見栄を切っていたお医者さんは、今は何処に行ったのでしょうか?

 とにかく、メディアは大騒ぎです。人を宣撫して、たぶらかして、モノを買わせるのがテレビの重要なお仕事なんでしょうが、騒ぎ過ぎです。当局の言う「正しく怖れましょう」って、どういうこと? これでは、パニックにならない方がおかしいくらいです。こんな時期こそ、個人の見識と良識と教養と鑑識眼と世間知が試されます。

 冷静になりましょう。

WST National Gallery Copyright par Duc de Matsuoqua

 とはいえ、現実は見つめなければなりません。最近の報道は過剰なので、私自身の信用度は7割ぐらいに抑えています。残りの3割は、マスコミ業界で言うところの「ウラを取る」ことで、情報の精度を高めることにしています。

 昨日は、大手代理店の社員が新型コロナウイルスで陽性と診断されたことから、東京の本社ビルに勤務する同社グループの社員全約5000人に対して、当面、在宅勤務とすることを決めた、とのニュースがあったので、今朝確かめてみました。

 皆様も御存知のA氏です。やはり、本当に「自宅待機」でお仕事されていました。通勤地獄に遭うことがないので、うらやましいと思ったら、「雑談する相手がいなく、緊張感がない」とか。あらま、贅沢な悩みだこと(笑)。

 何しろ世界的な大会社ですから、自宅で「テレビ会議」が何度か行われるようです。「それって、監視されているんでしょ!?」と聞いたところ、「まあ、悪く言えばそうかもしれませんが、良く言えば安否確認です」との答え。忠誠心が違います。

 私のような小さな会社は、テレビ会議なんて無理な話ですが、世の中、どんどんテレワークの時代に移行しているんですね。例のクルーズ船 「ダイヤモンド・プリンセス」 号での集団感染で、自治体職員や検疫官までも感染したため、霞が関の官庁や地方自治体でも一部テレワークに切り替えているようです。そんなものは、「未来社会」の話で、随分先のことだと思っていたら、もう時代が追い付いてしまっていました。

 一方、日本政府のウイルス対策は後手後手に回っているようです。今朝の新聞では、「ダイヤモンド・プリンセス」 号に乗船していて陰性で解放された人の投書が載っていましたが、軟禁中は「政府からの説明はほとんどなかった」と暴露していました。

 国会では、厚労相が「対策は万全であります」と自信満々に答弁してましたが、何か怪しくなりました。政府の危機管理は果たして大丈夫なんでしょうか?

 人は危機の時こそ、真価が問われるのではないでしょうか。

7900兆円が世界を回っている

スペイン・コルドバ

個人的なことながら、私の情報収集の80%は新聞からです。残りの20%が、テレビ、ネット、雑誌といったところでしょうか。

特に経済情報は圧倒的に新聞からです。経済の歴史や理論は単行本で仕入れることができますが、動きが速い経済情報はすぐ古びてしまいます。最新情報となると新聞が最適です。

新聞のおかげで、かなりの知識を得ることができました。その最大の収穫は、アナリストや評論家や学者の予想や知識が100%正しいわけでもなく、当たるわけではないということでした。

「天気予報のようなもの」と言えば、あらゆる関係筋から抗議が殺到することでしょうが、どうかお目こぼしを(笑)。とにかく、経済は、理論や法則通りになるわけではなく、例えば、株式ならその時の国際情勢から機関投資家の不安心理に至るまで、複雑な要素がドロドロとからみ、ピタリと的中させること自体がおかしいのです。

あのゴーン容疑者が、リーマン・ショックで17億円も損失して日産に肩代わりさせたという疑惑があります。カリスマ経営者でさえ失敗するのです。逆に、ど素人の中で、リーマンで大儲けした人がいたかもしれません。そういう人は絶対名乗りませんが(笑)、これこそが不可知な経済の面白いところです。

スペイン・コルドバ

さて、最近勉強になったことを羅列します。

かつて、日本の広告代理店電通は、「世界の電通」と言われた通り、売上高世界最高で、世界一の会社でした。しかし、今では世界5位(売上高7500億円)に落ちていました。知りませんでしたねえ。で、どこが、ナンバーになっていたかという英国のWPPという会社です。売上高は2兆3000億円(2015年)と電通の何と3倍強。でも、御存知でしたか?もともと、WPPは、Wire Plastic Productsの頭文字を取った会社で、ワイヤー製の買い物籠をつくっていた会社でした。それをユダヤ人のマーティン・ソレル氏が買収して、業態を広告代理店へと全く変えて、豪腕手腕で世界一に躍り出たというのです。

ソレルCEOは、今年4月に会社の資産を私的流用した疑惑(金融取引に失敗したらしい)で、CEOを引責辞任して、同社の株価が27%も下落したということですね。

会社資産の私的流用といえば、日産のゴーン容疑者にも嫌疑が掛けられ、株価も急落していますから、何か、「偶然の一致」を感じてしまったわけです。

スペイン・コルドバ

もう一つ。個人的ながら、私が少年の頃に、「3億円事件」がありました。(1968年12月10日ですから、あれからもうすぐ半世紀!)この時、親父さんが「3億円もあれば、何もしないでも一生喰っていけるよ」と言ったことを今でも忘れません。おかげで、私の頭の中の最高額は3億円です。それ以上の金額は、あるとしても想像つきませんでした(笑)。

でも、今では、つまり、50年も年月が経てば、3億円といっても一生喰っていけるかどうか分からず、映画1本もつくることさえできず、ゴーンさんのように100億円も200億円もの役員報酬を貰っても、人間は強欲で不安になるものなんですね。

スペイン・コルドバ

そこで、日々、新聞を読みながら、金融情報に注目してみました。

今、ちょっと株価急落で落ち込んでおりますが、世界一の時価総額を誇る会社は米アップルで10月初旬の段階で約127兆円です。もうここまで高額となると、全く分かりませんね(笑)。ちなみに、日産の時価総額は4兆2500億円だとか。

でも、上には上があるもので、全世界の運用会社の運用残高は、7900兆円(2017年末)もあるというのです。これは、08年のリーマン・ショックの頃の3900兆円の約2倍です。

この内訳として、運用資産の第一位は、米ブラックロックの691兆円です。日本の最高は、三井住友信託グループの24位で、85兆円です。

残念ながら、皆様には全く関係ない話でしたねえ。失礼致しました(笑)。

ちなみに覚えておくと便利な数字は、日本の昨年のGDPは550兆円だということです。日本は中国に抜かれて世界第3位になりましたが、今ではその中国のGDPは日本の2倍強の1300兆円にもなっているのです。

もちろん、GDPの第1位は米国で、2000兆円です。こんな国に、どこの国が逆立ちしても勝てるわけありませんよね?(笑)。

ただ、その米国GDPの4倍近いおカネが、世界中を回っているという事実を知っていても損がないかもしれません。得もしませんが(笑)。

スペイン・コルドバ

同盟通信の異能の記者大屋久寿雄

鳥居英晴著「国策通信社『同盟』の興亡ー通信記者と戦争」(花伝社、2014年7月25日初版)は、著者が5年以上の歳月をかけて執筆した800ページ以上にも及ぶ大変な労作でした。

大変歴史的、資料的価値が高い本で、明治時代の通信社の勃興期(中小さまざま100社以上の通信社が創立されては消えていったらしい)から、先の大戦の敗戦により、同盟通信が、社団法人共同通信社と株式会社時事通信社と広告会社電通の3社に分かれて再出発を果たすところまで、綿密に追っています。

著者は、元共同通信出身の記者らしいですが、比較的、公平に冷静に文献を掘り起こして分析しています。多くのガサツな学術書やネット情報では、「戦前の同盟通信は、現在の共同通信のこと」の一言で済まされる場合が多いですからね。

確かに、同盟通信の遺産のほとんどが共同通信に受け継がれました。時事通信の古いOBから言わせると「かまどの灰まで共同は持って行った」そうで、それでいて、大陸や南方など海外に派遣された何百人もの特派員ら「引揚者」を引き取る役目を時事通信は背負わされました。

同書の第17章には「共同は、同盟の総務、報道、連絡の3局と写真部から選んだ約1000人で発足。…これに対して時事は報道(主として旧海外局系)、経済、調査の3局から約250人で発足。外地からの引き揚げ社員で3年後には1000人を超えた。同盟の資産の中の通信社の生命ともいうべき国内専用線は共同に引き継がれた」と書かれています。

また、同盟通信の異能の記者で、戦後は時事通信に入社した大屋久寿雄は「将来のはっきりしない時事よりは、大磐石かに見える共同の方へ行くのは、人情であり、当然すぎるほど当然だった。かくて、時事は、共同に拒まれたノコリモノだけの救済収容機関と化したわけでした」と書き残しています。

この本では、この同盟通信の大屋記者にかなりのページを割いています。著者も、この大屋久寿雄の遺稿を入手できたことから、「いつかぜひとも出版したい」と「あとがき」に書いております。

大屋久寿雄とはどういう人物なのか?

フランス文学者の高橋治男というが方が1989年に、パリでフランスのプロレタリア作家アンリ・プーライユ(1896~1980)の書簡を調べていたところ、「オオヤ・クスオ」という日本人の書いた15通の書簡を発見し、1930年代の日本人が書いたものにしてはなかなかよく出来ていたことから、興味を持ち、2008年に「プーライユと文通した日本人ー大屋久寿雄」というブックレットを出版しています。

それによると、大屋久寿雄は1909年7月5日、福岡県生まれ。13歳の頃に医者だった父が病死したため、母親は3人の子供を連れて上京。大屋は成城第二中学に入ります。この時の同級生が大岡昇平です。(ちなみに、同じ1909年生まれの作家に太宰治と松本清張らがいます)。早熟な左翼の文学青年で、小説、戯曲、短歌までつくります。(大屋は書いた小説を当時小説家だった犬養健が住む東中野の自宅にまで見せにいったようです。のちに、大屋はハノイで軍属になっていた犬養と再会します。犬養健は、暗殺された犬養毅の子息で、ゾルゲ事件で連座。戦後法相)

高卒後、フランスのリヨン大学に留学し、パリでは作家の林芙美子の案内役を務めたりします。帰国後の33年に聯合通信にコネ入社します。(大赤字だった聯合は、36年に、反対する電報通信社を吸収合併して同盟通信を設立します)38年6月、29歳で仏領インドシナのハノイ特派を命じられ、同年12月に、重慶を脱出して昆明からハノイに潜入した汪兆銘の居所を突きとめようと手に汗を握る取材合戦に巻き込まれます。

汪兆銘の滞在先は分かったものの、中国から派遣された刺客によって、汪兆銘の側近の曽仲鳴が暗殺されるなど混迷状態となり、結局、世界的スクープになる汪兆銘との会見記事をものにすることはできません。それどころか、影佐禎昭大佐(引退した自民党の谷垣さんの祖父)率いる梅機関などによる「和平工作」に協力し、汪兆銘がハノイから上海に脱出する手助けをしたり、汪兆銘の脱出先に関する虚報記事を書いたりして、軍部に協力したりするのです。

大屋は「仏印進駐記」「戦争巡歴」などの著作を残しています。(大屋の後任の香港兼ハノイ特派員は前田雄二で、彼は東京帝大仏文科の学生時代、後のゾルゲ事件で連座して処刑されたアバス通信(今のAFP)記者ブーケリッチの牛込の自宅で会話のレッスンを受けていたそうです!)

大屋は、戦争末期は、日本放送協会(今のNHK)に出向し、「玉音放送」の後、海外編成部長としてマイクの前に立ち、「敗れはしたが、これは一時的なものです」と発言したことから、報道された米国で大変な物議を醸したりしたそうです。

前述しました通り、大屋は戦後、時事通信に入り、48年にカリエスを発症し、51年に42歳の若さでこの世を去ります。

◇◇◇◇◇

この本の著者鳥居英晴さんは、このブログで以前ご紹介した「北多摩通信所の傍受者たち」(けやき出版)の著者でもあり、傍受・通信所関係にはかなりご興味あるようで、今のラジオプレス(RP)の前身に当たる「蔽之館(へいしかん)」のことに触れたり、「極秘扱い」で当時ほとんど存在が秘匿されていた同盟通信の川越分室(埼玉県)の場所を突き止めたりします。

同盟川越分室は、当時、川越商業学校があったところでした。日本の運命を決めたポツダム宣言、トルーマン大統領の原爆投下声明、ソ連の対日宣戦布告などをここで傍受して政府に伝えたといわれます。

【追記】この本を読了するのに3週間半、この拙文を書くのに3時間半かかりました。

ワセダクロニクルが天下の電通と共同に果たし状!

久し振りの

今、早稲田大学ジャーナリズム研究所が運営するワセダクロニクル(Waseda Chronicle)というネット上の調査報道メディアが注目されています。

編集長は昨年、朝日新聞の調査報道の「限界」を見極めて同社を退社した人です。

本来、ジャーナリズムというものは苦労と手間ばかり多く、あまり儲からないものです。

昔は「ブン屋」と蔑まれ、まずは表玄関では会ってくれず、「裏口に回れ!」と叫ばれた賤業でした。相手の男の職業がブン屋だと分かると、父親は「娘は嫁にはやらん!」と断ったものです。

これは、嘘でも冗談でもなく、ブン屋は職業として「犬殺し」と同等の扱いでした。

何故これ程まで、ブン屋が嫌われたのかと言いますと、「報道」にかこつけた恫喝、恐喝まがいなことをする事案が多く、報道と宣伝との境界が曖昧だったからなのです。

業界の専門用語に「記事稿」と呼ばれるものがありますが、これは、一般の報道記事に見せかけた広告のことを指します。今でも、証拠隠滅逃れのために紙面の片隅に虫眼鏡で見ないと分からないほど細かい字で「広告」と書かれています。

この記事稿を発明した人は誰なのか分かりませんが、日本でその手法を高めたのは恐らく、1901年に電報通信社を創業した光永星郎だと思います。

電報通信社は昭和11年、聯合通信社に吸収合併される形で同盟通信社となり、戦後は電通として復活します。同盟が解散してできたのが、この電通と共同通信社と時事通信社です。

で、最初に取り挙げたワセダクロニクルですが、調査報道として、この電通と共同通信社を俎板に乗せております。両社が製薬会社と結託して、記事に見せかけた広告を共同が全国の地方新聞社に配信し、その記事を一方的に信じた読者が、その高価な脳梗塞の予防薬や糖尿病治療薬などを購入したというシリーズ「買われた記事」を報道しております。

まあ、詳しくは「ワセダクロニクル」http://www.wasedachronicle.org/ を検索して読んでみて下さい。

ワセダクロニクルは、広告「記事」を執筆した共同通信社の編集委員にまで突撃インタビューしており、まさに調査報道の最たるもんです。

恐らく、世間一般の人の中で、新聞の記事やラジオ・テレビのニュースが共同通信社が配信したものだと知っている人はほんの僅かでしょう。

全国には一県一紙以上は必ず地元紙があり、そこのニュースは大抵、共同通信社から配信されております。「朝日だ、読売だ」と騒いでいるのは、東京や大阪の大都会に住む人だけで、北海道の人なら道新、名古屋なら中日新聞しか読まないのです。

ですから、共同通信社の読者の累計は1000万部を超え、その影響力は、朝日や読売は足元にも及ばないわけです。少し言い過ぎですが(笑)。

その天下の共同が「成功報酬」を得て、記事に見せかけた広告を配信する暴挙は、何処のメディアも取り上げることはないので、ワセダクロニクルというネットメディアが今、注目されているわけです。

ついにネットが雑誌を超える!

電通の調べ(20日発表)によると、昨年2007年の日本の広告費で、ネット広告がついに雑誌を抜きました。

これは、大事件です。

インターネット広告は前年比24・4%増の6003億円。

雑誌は、前年比4%減の4585億円。

ちなみに、テレビは0・9%減の1兆9981億円。新聞が5.2%減の9462億円。ラジオが4・2%減の1671億円。

先日、O氏の送別会で、オンラインのビジネス誌に勤めるO君と話す機会があり、聞いて見ると、本当にネットの世界ではすごいことが起きているのですね。これなら、ネット広告が雑誌広告を抜くはずです。

なぜかというと、ネットには紙雑誌やテレビの視聴率のような「あいまいさ」がないというのです。

「オンラインの雑誌」の場合は、読者の個人情報が登録され、性別、住所、氏名、年齢、職業はもちろん、年収、趣味趣向までわかってしまうので、誰がどの記事をどれくらい時間をかけて見ているかすぐわかってしまうというのです。

これは、広告主にとっては有り難い情報です。どにに何を売りたいかについては、その筋をターゲットにして広告を張ればいいからです。

私は、パソコンには全く疎いのですが、グーグルには、誰がそのサイトを見ているのか探知する能力があるのですね。

世界地図が出てきて、まずどこの国で何人見ているかすぐ分かります。これを見て、ビックリしてしまいました。また、どんな検索語を使って、そのサイトに辿り着いたか、順位が付くのです。例えば、何でもいいのですが、私のこのサイトに辿り着く場合、「渓流斎」が1位、「朋之介」が2位、「へんなおじさん」が3位…といった具合です。

O君によると、この機能を逆手にとって、グーグルなどは、「言葉」を売っているというのです。これはどういうことかと言うと、誰でも検索エンジンで最初に出てくる言葉をとりあえず、クリックするものですよね。よって、検索の順番というのは非常に大切なのです。誰も、100番目にある言葉をわざわざ捜して検索したりしません。(研究者なら別ですが)

そこで、検索の1番目に載りたい会社は、グーグルにお金を払って、載せてもらうのです。以前は「消費者金融会社」が数万から数十万円(一日か、1カ月か聞きそびれました)を払っていたそうですが、今ではグレーゾーンの廃止によって、消費者金融も減益となり、代わって、多重債務解消を引き受ける会社の名前の取引が活況を呈しているそうなのです。

私の知っている若い友人も、まず本は読まない。新聞も読まない。テレビもそれほど見ず、ネットにどっぷり浸かって、ニュースも仕事もゲームも音楽も買い物もほとんどパソコンに依存しているというのです。読書は若い時の習慣の産物ですから、恐らく一生、本も新聞も読まないことでしょうね。

明日を担う若者がこうなのですから、これからどんな時代になるのか、おじさんは想像もできません。