アレン著「オンリー・イエスタデイ 1920年代・アメリカ」で学ぶ現代史

スペイン・ラマンチャ地方

近現代史といっても、これまで、自分でも、どうも偏って勉強してきた感じがします。

私は、特に、昭和2年の金融恐慌に始まり、翌年の張作霖暴殺事件、満洲事変、五・一五事件、二・二六事件、やがて開戦に至る一連の日本軍部の台頭とスパイ・ゾルゲに代表される諜報活動ばかりに目を向けてきたわけです。

しかし、それでは足りません。もっと、世界史的視野がないと、何で日本は、あんな無謀な戦争に突き進まざるを得なかったのか理由が見えてきません。

となると、ターニングポイントは第1次世界大戦だったような気がしてきます。天文学的数字の賠償金を押し付けられたドイツは、超インフレに悩まされ、やがてナチス・ヒトラーを選択して、破滅的な第2次大戦に突き進みます。ヴェルサイユ体制下で、国際連盟を提唱しながら参加しなかった不可思議な米国。金本位制から離脱した大英帝国は没落し、覇権とともに、基軸通貨も米ドルに奪われてしまいます。近代経済学はこの時代のケインズに始まったという識者もいます。

ということで、前置き長くなりましたが、手始めに、フレデリック・ルイス・アレン(1890~1954)著「オンリー・イエスタデイ 1920年代・アメリカ」(ちくま文庫)を、色々と忙しくて1カ月近くかかりましたが、ようやく読破しました。今、その続編の「シンス・イエスタデイ 1930年代」を読んでいるところです。

もともと、世界大恐慌の引き金を引いた1929年の株価大暴落「暗黒の木曜日」には興味がありましたが、1920年代そのものについてはよく勉強していませんでした。

でも、米国人にとっては、最も懐かしい思い出がある「古き良き時代」だったことが、この本を読んで初めて分かりました。それは「クーリッジ(当時の大統領)景気」とも呼ばれました。第1次大戦で疲弊した落ち目の欧州を尻目に、米国は経済的繁栄を謳歌したのでした。何しろ、針子から靴磨きまで、こぞって株に投資する時代でした。フォードを始め、自家用自動車が大衆にも行き渡るようになり、映画のほか、ニューメディアとしてラジオが生まれ、誇大広告も盛んになりました。発明王エジソンの創業したGEは、電気冷蔵庫や洗濯機を売り出します。フロリダへの過剰な不動産投資、そしてバブルがはじけて、恐慌へ。。。

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まるで、私の同年代に体験した現実の原点を見るかのようです。昔の話なのに古びていない。人間の心因性は変わらないことが分かります。「ローリング20s」とか「狂騒の20年代」とも呼ばれ、その風俗はフィッツジェラルドが「華麗なるギャツビー」(1925年)で活写しています。ホームラン王ベーブ・ルースの全盛期、世界ヘビー級王者のジャック・デンプシーら大掛かりなプロボクシング興行、禁酒法の時代で、シカゴではアル・カポネらギャング団が暗躍。大西洋を単独横断して一躍ヒーローに祭り上げられたリンドバーグ…この本では、ほぼ時系列のクロニクルの形式で、非常に細かい統計数字も拾って描かれているので、後世の歴史家や経済学者がどうしても参照しなければならないほど、信頼できるノンフィクションの力作になっています。

著者のアレンは、米ハーバード大学大学院で、名誉法学博士号を得て、「ハーパーズ・マガジン」などの編集長を歴任したジャーナリストです。「オンリー・イエスタデイ」が出版されたのは、1931年のことで、この時、アレンはまだ41歳という若さ。とにかく、当時のジャーナリズムの水準の高さには驚かされます。(日本では1975年になってやっと、藤久ミネ氏によって翻訳出版されました)

景気の良い20年代は、女性のスカートの丈の長さがどんどん短くなっていったのに、失業者があふれる不景気になった30年代になると、また長くなった、といった逸話も出てきます。著者の観察眼には脱帽しました。

私の知っている1960年代はミニスカートが流行しましたが、高度経済長期で、景気が良かったということなんでしょうね。

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