WGT National Gallery Copyright par Duc de Matsuoqua
この本を読むと、腰の辺りがムズムズして痛くなり、腰痛解消のために、何処でもいいから、そこらへんを駆け巡りたくなります。
ヴァイバー・クリガン=リード著、水谷淳、鍛原多恵子訳「サピエンス異変 新たな時代『人新世』の衝撃」(飛鳥新社、2018年12月31日初版)は、まさにタイトルそのものと同じで、衝撃的な本です。
人類学、環境科学、動体力学、動物生理学…等あらゆるサイエンスを動員したノンフィクションです。結論を先に言ってしまえば、「人類は、快適さと便利さを追求したおかげで、身体を動かさなくなり、糖尿病や肥満による心臓疾患、腰痛、近視、骨粗しょう症、精神疾患などさまざまな病気や障害を自ら引き起こしている」といったことになるでしょうか。
「座りっぱなしが死を招く」といった衝撃的な章もあります。現代の先進国のサラリーマンと官僚のほとんどが、冷房の効いたオフィスで、何時間も何時間も座ったまま、パソコンの画面に向かっていることでしょう。著者の最終的な結論は、「人類は1日1万歩歩くのが一番良い」(1日8~14.5キロ、1週間で10万歩)といった今まで多くの専門家が指摘していたことと同じでした。
そもそも、人類は、800万年前に直立二本足歩行する生物から、30万年前に現在のヒトとなるホモ・サピエンスに進化して、1万年前に農耕定住生活が始まるまで、毎日、平均6時間も歩いて食料を確保してきたといいます。
つまり、ヒトは動く生物として生活に適応してきた歴史があるわけです。それが、わずか100年か200年前の産業革命で機械化、モータライゼイション、そして20世紀末のIT革命で、ますますヒトは身体を動かさなくなりました。最近は、スマホなどのやり過ぎで、RSI(反復運動過多損傷)と呼ばれる病気を患って、生産性が低下したり、仕事を辞めたりする人もいるといいます。
私の周囲にも、ほとんど身体を動かさず、近距離でも車ばかり使っていたお蔭で、まだ若いのにほとんど歩けなくなった友人もいます。
かつての人類は、歩けなくなれば食料を確保することができず、即、死を意味していました。ということは、人類の滅亡が始まっているということなのでしょうか。本当に衝撃的な本でした。