WST National Gallery Copyright par Duc de Matsuoqua
先日、作家の溝口敦氏の公式ホームページを見ていたら、同氏は「ノンフィクションの『巨人』佐野眞一が殺したジャーナリズム 大手出版社が沈黙しつづける盗用・剽窃問題の真相」(宝島社、2013年) という本を出版されていることを初めて知りました。内容は「本書では、出版界内部からの自浄作用を促すことを目的に、佐野作品に発覚した140件以上の盗用・剽窃箇所(ネットメディアではまだ指摘されていない盗用を多数発掘)および、その疑惑をすべて公開するとともに、佐野氏の釈明がいかに欺瞞に満ちたものなのか、徹頭徹尾、指弾する。… 全出版人、マスコミ関係者、取次ぎ、書店関係者、そして何よりも『佐野文学ファン』必読の書! 」などと書かれていました。
私は、溝口氏とは会ったことはありませんが、佐野氏とは一度だけお会いしたことがあります。彼の「巨怪伝」「阿片王」「甘粕正彦 乱心の曠野」などその濃密な取材力には圧倒され、大変お世話になった作家です。私も「佐野文学ファン」なので、ショックでしたね。
この溝口氏の本を読まず、また両者の話も聞かずにあれこれ言うのは、フェアではないので、この辺でやめておきますが、「盗作」と「引用」の問題については深く考えさせられました。(人気作家だった故・立松和平氏の盗作問題も思い出しましたが、佐野氏の盗作問題は、裁判で既に和解が成立しているようでした)
まず、引用についてですが、文化庁のホームページにある「著作物が自由に使える場合」の「引用」の定義としてこう書かれています。
公正な慣行に合致すること,引用の目的上,正当な範囲内で行われることを条件とし,自分の著作物に他人の著作物を引用して利用することができる。同様の目的であれば,翻訳もできる。
そりゃそうでしょうね。引用が許されなければ、学術論文さえ書けないでしょう。ただ、この「正当な範囲内」というのが微妙ですね。
盗作は、英語で plagiarism と言いますが、どなたが言ったことか忘れてしまいましたが、「他人の書いたものを10行書けば『引用』になるが、100行書けば『盗作』になる」といった迷言がありました。うまいことを言ったものです。
さて、現在のようなネット全盛時代、SNSではニュースが拡散されてますが、これも厳密に言えば、著作権侵害に当たりますよね?
著作権問題は、私のようなブログ書きにとっても、深刻な問題です。私の場合は、しょっちゅう、出典を明記して「引用」しているつもりなのですが、「著作権者に許諾を得ていない。盗作だ」と言われて訴えられれば、グウの音も出ません。
ということで、こんな問題に頭が悩まされると、正直、ブログを書くのが馬鹿らしくなってきます。
先ほどの「迷言」ではありませんが、「出典を明記すれば、10行以内ならオッケー」とでも不文律でも良いから言ってくれれば楽になれるんですが…。写真も頭が痛い。なるべく自撮りや確かなソースから拝借しておりますが、「自撮りでも、本の表紙なら駄目」という説を聞いたことがあり、「じゃあ、撮影者の著作権はどうしてくるんじゃ!」と突っ込みたくなります。
ところで、この《渓流斎日乗》の著作権はどうなのか、と御下問があれば、著作物ですから勿論、著作権は主張します。とはいえ、ちゃんと、問い合わせて頂き、悪用ではなく、出典を明記さえしてくだされば、オッケーです。
でも、面倒臭いんですよね、恐らく…。私も気持ちは分かりますから(笑)。また、どうも、紙の著作権とネット上の著作権も違うような気がします。詳しい方、御教授くだされば幸甚です。