新型コロナウイルスの正体を知りたい人のための入門書

WST National Gallery Copyright par Duc de Matsuoqua

 私は、生まれながらにして 根が真面目なもんですから、水谷哲也著「新型コロナウイルス 脅威を制する正しい知識」(東京化学同人、2020年5月19日初版)が今話題になっているという情報を察知し、早速購入し、読了しました。1964年生まれの水谷氏は北大で獣医学の博士号を取得し、現在、東京農工大付属国際家畜感染症防疫研究教育センター長。

 ネットで注文したら、プライムとか小賢しい割り増し料金を払っていないのに(A社じゃありませんよ)、何と翌日届き、2日ほどで読んでしまいました。

 本書は、素人にも分かりやすく、「新型コロナウイルス」とは何者なのか説明してくれます。巷では色々な情報が溢れすぎて、何を信じたらいいのか分からない状況ですが、筆者は、「正しく怖がる」ためにも、できるだけ正確な正しい知識を身に着けてもらいたい、と平易に書かれた啓蒙書として提供してくれます。

 平易とは言っても、nsp(non-structural protein=非耕造タンパク質)だの 、nsp12(ポリメラーゼ=複製タンパク質)だの、干渉現象だの専門用語がバシバシ出てきますが、それは致し方ないこと。最低限の知的武装手段として覚えるしかありません(笑)。

 読者を、一般や生徒、学生を想定して書かれ、ウイルスの変異や検査、ワクチン、治療薬について、などほとんど網羅されています。日々刻刻と状況が変化しているため、情報は刷新しなければならないので、本書だけでは古びてしまうという難点がありますが(ただし、水谷教授のネットでは日々情報が更新されているようです)ポイントはしっかり抑えています。(予防に関しては、マスクと手洗いとアルコール消毒と「3密」回避という地道な努力しかないようです。)

 ただ、ちょっと残念だったことは、これだけニュースで毎日報道されているPCR検査とは何なのか、それらの原理や仕組みについては専門的概念で事細かく詳述されているのに、そもそもPCRとは何の略なのかさえ説明がなかったことでした。自分で調べたら、PCRとは polymerase chain reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)の略で、性病や淋病などの検査にも使われていたらしいですね。

 国際ウイルス命名委員会によると、新型コロナウイルスの正確な名称は、SARS-CoV-2というそうです。SARS(サーズ=重症急性呼吸器症候群)は2002年に中国・広東省で初めて感染者が確認され、翌年にかけて猛威を振るった(感染者8098人、死者774人、致死率9.4%)コロナウイルス(Cov)のことで、このあと発生したMERS(マーズ=中東呼吸器症候群)でも、日本人の感染者が出なかったせいか、今では日本人には忘れられてしまったウイルスです。しかし、今回の新型コロナは、ニドウイルス目ーコロナウイルス科ーコロナウイルス亜科ーベータコロナウイルス属で、SARSと全く同じ「属」に属しているのです。ですから、SARSのことが分かれば、新型コロナの正体も治療法も予防もワクチンも分かるというわけで、日々、研究者たちは開発に努力しているわけです。そして、筆者の水谷氏は「感染源はコウモリで間違いありません」と断言しております。コウモリは、中国では高級食材として使われ、東南アジアやアフリカなどでも食べる習慣があるそうです。コウモリを捕獲したり、肉をさばいたり、市場で売られたりした際にウイルスに感染する機会があるというのです。

 ウイルスの歴史を遡ると、コロナウイルスの祖先は約1万年前に誕生したと言われますが、ストレスがあると口の周りにブツブツができるヘルペスウイルスは、約4億年前に誕生し、インフルエンザウイルスは約1億年前に誕生したといいます。46億年の地球の歴史の中で、ウイルスという生物は、我々、人類、霊長類より遥かに大先輩だったわけです(昆虫までウイルスに感染するとは!)。コロナウイルスが1万年前に発生したとしたら、紀元前8000年で、この頃、シュメール文明やクレタ文明が栄え、人類が野生動物を家畜化した時期です。野生動物との濃厚接触が感染に至らしめたことは間違いないことでしょう。

 水谷氏は「新型コロナが終息しても、何年か後に新たな感染症が必ず出現する」と強調しています。その通りでしょう。ウイルスは全て撲滅できないので、共存共生していくしかないのでしょう。

 新型コロナウイルスに関して、漠然とした不安を持っている人にとっては、敵の正体を知る上でも、本書は良い治療薬になるんじゃないかと思います。

“新型コロナウイルスの正体を知りたい人のための入門書” への1件の返信

  1. コロナ君は老生には近寄らず日々、のんびりと過ごしています。こんな時間の過ごし方は久しぶりです。明日(9日)、喜寿を一歳超えます。先日、中公新社から拙著(ルポ老人受刑者)を会社宛てに送らせました。一読ください。現実の老後世代の生き方の一つを提示しています。

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