若冲展には大した魂消た 5th edition

これから城壁に上る Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

 ゴールデンウイークの真只中に無謀にも、東京・上野公園内の東京都美術館で開催されている「生誕300年記念 若冲展」(約80点展示)を観に行ってきました。

 (例によって、著作権の関係で若冲さんの写真は掲載できません。いつもながら、松岡総裁の写真でお楽しみくだされ)

 伊藤若冲(1716~1800年)、江戸時代の18世紀後半に京都で活躍した謎の大天才絵師。裕福な青物問屋の長男として生まれて、23歳で家督を継ぎ、40歳で次弟に家督を譲って、画業に専念しますが、基礎は学んでもその後はほぼ独学だったらしく、その独自の手法についてはいまだ解明されていないそうです。

 何しろ、驚くべきことに19世紀のフランスのクロード・モネらによって始まる印象派の点描画法などは、その前から既に、若冲が100年前から確立していたというのですからね。

 こんな大天才が身近にいたのにも関わらず、その後ほとんど顧みられることなく、私も含めて、世間で再評価が始まったのが、わずか16年前の2000年。「没後200年記念」として京都国立博物館で「若冲展」が開催されて以降です。

 大変話題になりましたから、私も、是非観に行きたかったのですが、結局、観ておりません。その後、何かの展覧会で、1、2点を垣間見たことがありましたが、今回のような大展示会は初めてです。

 その前に、日本人より、ずっと昔に、この若冲に魅せられてコレクションを始めた米国人がいたんですね。ジョー・プライスさんというエンジニア。父親の会社の本社ビルを建築する際に、日本の帝国ホテルも設計したあのフランク・ロイド・ライトの仲介役になり、1953年、日本美術蒐集が趣味だったライトと一緒にニューヨーク市内の古美術商を回っていたとき、若冲の「葡萄図」(今展でも出品)を一目見て気に入り、その後、当時ではあまり評価されていなかった若冲を中心に、収集を始めたといいます。

 プライスの奥さんは、通訳だった日本人の悦子さんで、今は財団をつくって広く公開しています。2013年には東日本大震災の復興を願ってコレクションが仙台美術館などで巡回公開されたことは記憶に新しいですね。

 城壁を歩く Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

 印象派の100年も昔に独自の画法を生み出していた日本人の天才を、最初に米国人が発見していたなんて、色んな見方や御意見があるでしょうが、私は、作品が散逸しなくてよかったと思います。感謝しなくてはいけませんね。

 さて、肝心の展覧会ですが、バックに天下のNHKさんが控えているせいか、そして、そのNHKさんが硬質な番宣、つまり番組宣伝放送番組を次々とオンエアしてくれるもんですから、開催前から大評判で、日本中、世界中から押しかけたと思われる人、人、人、人…でした。

 残念なことに、この天下の大NHKの膨大な影響力を全く知らないのが、灯台下暗し、本家本元のNHK会長さんなのですから、何が哀しくて、あんなつまらない人物を頭として抱いているのか不思議です。

 まずは、入場するまで70分から90分待ち。そして、やっと中に入ることができても、作品の前には、三重、四重どころか、五重、六重、いやいや、七重、八重もトグロを巻き、人いきれで卒倒しそうになります(苦笑)。

 幸いにも、私は六尺の長身ですから、遠くからでも拝見できますが、小さい方は大変でしょうね。

 城壁角の望楼 Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

 この展覧会で、何と言っても、宮内庁(三の丸尚蔵館)御所蔵の「釈迦三尊像と動植綵絵」33点が出色でした。特に、鳥から動物、魚、貝、植物などありとあらゆる自然の動植物(変な言い方ですね=笑)が細密に描かれている作品は圧巻で、まさしく圧倒されて、何度も絵の前を(遠くからですが)ウロウロしました(笑)。この33点だけを見に来るだけでも十分価値ありです。全ての作品に集中していては途中で疲れ果ててしまうでしょうから、このコーナーまで余力を残しておきましょう。

 江戸時代ですから、若冲さんは恐らく、本物の虎や象を見ていないでしょう。これまた、恐らくですが、長崎の出島から色んな文物が流れてきて、京都では普段見られない動植物でも、西洋の図版画などで参照できたのではないでしょうか。それに、若冲さんは、大変高価な絵の具を使っているらしいですね。

とにかく、卒倒するほど根気がいる細かい作業を成し遂げた人です。やはり、若冲さんの描く鶏はピカイチですね。絵画だけで、言葉をほとんど残すことがなかった彼は、ただ一言、「千載 具眼の徒を俟つ」と認(したた)めたと言われています。「1000年後には私の絵を評価してくれる人が現れるだろう」といった意味ですが、「いえいえ、若冲さん、1000年も掛かりません。200年で十分でしたよ」とお伝えしたいです。

“若冲展には大した魂消た 5th edition” への1件の返信

  1. 大きな収穫
    伊藤若冲の展覧会を、やはりゴールデンウィークに観に行きました。凄い人出でしたね。
    こんな時、小生のようなチビは不利です(笑)。
    けれども思い切って足を運んで本当に良かった。
    大胆な構図、目が眩むほどの美しい色彩、近くに寄るとその細密さに息を呑み、しばらく足を進めることが出来なくなることしばしばでした。
    正に究極の芸術に触れることが出来ました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください