2028年に中国が米国を抜く?=覇権主義も長期スパンで見れば儚いもの

 コロナ禍の影響で、中国の名目国内総生産(GDP)は、当初予測の2030年より早まり、2028年にも米国を追い抜くそうですね。(英シンクタンク「経済ビジネス・リサーチ・センター」CEBR)

 あと7年後ですか…。

 鬼畜米英に負けた日本人は、日米同盟が大好きで「思いやり予算」を年間2000億円も支払っている一方、尖閣諸島問題を抱え、香港やチベット、ウイグル、内モンゴルで人権弾圧を続ける中国を嫌いな人が多い、というのが実情です。

 ですから、7年後に中国がGDPで米国を抜いて世界一になるという予測を聞くと、大抵の日本人は、不愉快になるか、見たくも考えたくもないことでしょう。

 しかも、具体的な数字が公表されていないとはいえ、中国は、ほんの一部の中国共産党幹部かその関係者が富を独占し、民主的ではないという根強い不信感が日本人にはあります。

 しかしながら、その一方で、建前上は人権が認められ、自由と民主主義の国家である米国では、上位1%の富裕層が全体資産の30%を握るという超格差社会なのです。中国とそう変わらないということになります。政治体制やイデオロギーの違いがあるだけで、これでは経済格差はどこでも同じということになってしまいますね。

 そもそも歴史を振り返ると、「四大文明」の発祥地の一つである中国は、もともと世界一の経済大国でした。19世紀に入って欧米、そして日本の植民地主義者の標的になった中国・清帝国の末路のイメージが悪いのですが、実は、最盛期の19世紀初頭の清の推定GDPは世界一で、全世界の3分の1を占めていたといいます。

 話は違いますが、ヴェネツィアの商人マルコ・ポーロによって「黄金の国ジパング」と呼ばれた日本も、戦国時代は、全世界の3分の1の銀を産出していたといいますからね。(戦国時代にアメリカはなかった!)

銀座の花壇

 2月20日付日経に出ていた歴史家磯田道史氏の「半歩遅れの読書術」記事の孫引きになりますが、アンガス・マディソン著「世界経済史概観」(岩波書店)によると、西暦1500年頃、日本の1人当たりのGDPは500ドルだったといわれ、当時の中国と朝鮮は600ドル、インドネシアは565ドル、インドは550ドルだったと推計されるといいます。つまり、日本は周辺国より生活水準が低く、はっきり言って貧しかったわけです。

 それが、江戸中期になると、日本は周辺国と並び、江戸後期の1820年頃になると一気に抜き去ったといいます。その理由について、磯田氏は、諸般の事情で人口抑制が働き、労働態勢が税負担が軽い手工業・商業にシフトし、所得水準も一気に上がり、GDPも増えたのではないかと推定しています。

 驚いたことに、この1820年はペリー黒船来航前の話ですが、当時の日本のGDPは米国より大きく、約1・65倍。人口も米国の約3.1倍もあったというのです。(現在、2021年の名目GDP予想は、米国が約22兆ドル、日本は5兆ドルですから、米国は日本の4.4倍です。人口は米国が約3億人、日本が1.2億人ですから、2.5倍です。)

 正直、江戸時代に、米国より日本の国力(GDP)の方が大きかった時代があったとは、本当に驚いてしまいますね。

 ただし、考えてみれば、諸説ありますが、実質的に米国が英国を抜いて世界一の経済大国を確立したのは第一次世界大戦以降からだと言われています。となると、予測が正しければ、米国の世界一は1917年から2028年までのたった100年ちょっとしか続かなかったということになります。

 「覇権主義」とか「経済大国」とか言っても、1000年単位の長期スパンの歴史で見ていくと、本当に儚いものです。

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