表札泥棒

銀座

その話を聞いたとき、不謹慎とは知りながら、思わず大声でお腹を抱えて笑ってしまいました。

京都にお住まいの京洛先生の表札が盗まれたというのです。

私も何回か、いや、何回も京都の御自宅にお邪魔させて頂き、いつもその不釣り合いな立派過ぎる表札(恐らく、白檀の高級材が使われ、末端価格10万円か?)を崇めたことがありますが、まさか盗難に遭うなんて思いも寄りもませんでした。

第一、盗んだところで、どうするんでしょう?人様の名前ですから、使いものにならないのでは?

「それが、転売するらしいんですよ」と京洛先生。

しかし、同姓同名ならともかく、京洛先生の本名は、戦国武将のようなお名前で、まず、現代人にはいません。せめて、江戸幕末の頃までは多かったかもしれませんが、恐らく、明治に入り、絶滅危惧種となりました。

本当です。

だから、まず、現代人で同姓同名はあり得ないと思いますので、再利用は不可能です。

ヤフーオークションに掛けても、買う人がいるかどうか。

それとも、あまりにも立派なお名前で、異様に黒光りして屹立する表札には、神々しささえ感じられ、マニアの盗人が神棚に飾るのでしょうか?

「そうです。表札を貰った人は出世すると言いますからね。皆さん御存知の一部上場の大企業に勤務されているXさん。あの方から所望されて、昔、小生の表札を差し上げたことがあるんですよ」

嗚呼、そう言えば、Xさん。今や、グループ社員20万人を抱える大企業のトップ目前です。

それに比べ、渓流斎は、出世とはまるで縁がなく、「終わった人」(内館牧子)と相成りましたが、京洛先生から表札を頂いたことがありませんでしたからね。

なあるほど。

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