友がみなわれよりえらく見ゆる日よ 花を買ひ来て 妻としたしむ(石川啄木)
これは、「一握の砂」(1910年)に所収された有名な短歌です。この「友」とは、一体、誰のことなのかー? 岩手県立盛岡中学(現盛岡第一高校)時代の友人だった金田一京助や、後に海軍大将になる同校先輩の及川古志郎、「銭形平次捕物控」で名を成す野村胡堂(長一)ら色んな説がありますが、特定の友ではない、という説もあります。(ちなみに、啄木の盛岡中学の11年後輩に宮沢賢治がおり、加藤哲郎一橋大学名誉教授も盛岡一高出身です。)
私は短詩型はあまり得意ではありませんが、若い頃に覚えた句や短歌は、何かあると、ふと口をついてきたりします。
友が皆、我より偉く見ゆる日よ…
本日、文部科学省から発表された文化審議会委員の人事名簿を見て、すぐにこの短歌が出てきました。
委員の中に、お二人、しのぎを削ってスクープ記者合戦に勤しんだ「戦友」のような方のお名前を発見したからです。ライバルの大手新聞社(出身)のOさんとKさんです。Oさんはノーベル賞作家に食い込んで、文庫の解説まで書かれ、文化部長から有名大学教授に華麗なる転身を遂げた方です。Kさんは、歌舞伎界で知らない人はいない、何冊も本を出されている専門編集委員さんです。いやあ、お偉くなりました。
文科省の文化審議会には四つの分科会がありますが、その中に「文化功労者選考分科会」があります。主な所掌事務として「文化功労者年金法により審議会の権限に属させられた事項を処理すること」とあります。詳しくは分かりませんが、恐らく、年金350万円といわれる文化功労者になる方を選んだり、推薦したり、答申したりするお役目ではないかと想像されます。作家さんも、役者さんも、画家さんも誰でもこの文化功労者だけにはなりたいと思っていますからね。
文科省のお役人さんはお忙しいですから、沢山の本を読んだり、演劇、映画、音楽、美術鑑賞したりできないわけですから、専門家の意見や助言を仰ぐしかないですからね。ですから、委員の方々の責任は重大です。そして、何と言っても、審議会委員の皆様は本当に偉いのです。
もっとも、OさんやKさんと取材現場で御一緒したのはもう30年も前の大昔のこと。無位無官の「無用の人」である私のことなどもう覚えていないことでしょう。「あんた誰?」と言われる前に、早めに退散することに致します。