クリント・イーストウッド監督の硫黄島2部作の「硫黄島からの手紙」を丸の内ピカデリーで見ました。既にニューヨークの全米映画批評会議とロサンゼルスの映画批評家協会の最優秀賞を獲得し、来年のアカデミー賞の有力候補でもあります。
第一部の「父親たちの星条旗」より、人物描写がしっかりしていて断然、面白かったですね。日本人だからかもしれません。でも、この映画、アメリカ人の監督によるハリウッド映画であることをすっかり忘れさせてくれます。よくぞ、ここまで、日本と日本人について調べ上げて描いたものだという感嘆と、よく、あそこまで、アメリカ人の恥部ともいえるような描写をカットせずに上映したものだという驚嘆の2つがありました。
日本のことについては、台詞の中で「靖国で会おう」とか、「武運長久で」などと出てきます。英語でどう訳されているのか知りたいくらいです。弾避けのおまじないの「千本針」で縫った腹巻も登場しますが、アメリカ人の観衆は理解できたのかしら。
アメリカの恥部とは、戦場で、米兵が日本人の捕虜を持て余して射殺してしまうシーンです。普通、こんな卑劣な場面はわざわざ取り上げないか、隠してしまいますよね。一方で、日本側では、1932年のロス五輪馬術競技の金メダリスト「バロン西」こと西竹一中佐(伊原剛志)が、負傷したアメリカ兵を手厚く手当てさせて、優しく英語で話しかけるシーンを織り込みます。主人公の栗林忠道中将(渡辺謙)も米国経験があり、その言葉遣いからして、ジェントルマンシップの格好いいこと!無様な「やらせ」の旗揚げ兵士たちが主人公だった「父親たちの星条旗」と比べ、何か、日本の方を贔屓目に描いているような気がしてなりません。
こんなんでいいのかなあ、というのが正直な感想です。(もちろん、戦場でボロボロと無残に殺されたり、自決したりしている日本兵を見て、涙なしには見ることができませんでしたが)
これで、アカデミー賞でも受賞したらもっと株をあげるでしょう。色々批判されている超大国アメリカですが、何と言っても「自由の国」アメリカの懐の深さを痛感させてくれます。