現代の理論物理学は、「相対性理論」と「量子論」の二つの革新的理論に代表され、目下、この二つの理論を統合した「究極の理論」の構築の段階に入っていることは、この渓流斎ブログをお読み頂いている皆様は熟知されていると思います。
このブログでは、これまで、超ひも理論に代表される究極の「万物の理論」と「相対性理論」は取り上げさせて頂きましたが、「量子論」はまだでしたので、またまたNewton別冊「知識ゼロから理解できる 量子論の世界」(ニュートンプレス、2023年5月10日初版、1980円)を買って来ました。読み始めましたが、なかなか手強いです。もっと頭が柔らかい若い頃に勉強したかった、と声を大にして言いたいのですが、私が若い頃は、量子力学、もしくは量子論はほとんど習いませんでした。(本書によると、量子論の中に量子力学や量子化学などがあり、量子論の方が意味が広いといいます)。文系バリバリの私が、量子論といえば、辛うじて、ハイゼンベルクの「不確定性原理」という名称を聞いたことがあるぐらいで、恐らく、当時(1960~70年代)の文部省の学習指導要綱の文系必修科目に量子論はなく、大変失礼ながら、当時の理科の先生も量子論には精通していなかったと思います。
今回取り上げた「量子論の世界」は「知識ゼロから理解できる」と銘打っておりますが、やはり、知識ゼロでは理解できないのではないかと思います。後で詳しく触れますが、理解しようと思っても、とても理解できない「現象」が出てきます。
まず、量子とは何か?ーですが、それは、粒子と波の性質を併せ持ったミクロな物質のことで、物質をつくっている原子そのものや、その原子を形作っている電子、中性子、陽子が代表的なものです。光を粒子として見たときの光子やニュートリノやクォーク、ヒッグス粒子などの素粒子も量子に含まれます。そう言えば、量子とは何か、すら私は最近知りました。特に、ニュートリノやクォークといった素粒子についてはつい最近です。
続いて、量子論とは何か?ーですが、それは「非常に小さなミクロな世界で、物質を構成する粒子や光などがどのように振舞うかを解き明かす理論」だといいます。扱うミクロの世界とは、原子や分子のサイズで10のマイナス10乗メートルです。つまり1000万分の1ミリ以下の世界だといいます。原子核ともなりますと、10のマイナス14乗メートル、つまり1000億分の1ミリとなりますから、あんぐりと口を開けたくなる世界です。
私は素人ですから、電子顕微鏡でもあれば、量子を観察できると思っておりましたが、1000億分の1ミリの原子核を見ることが出来る顕微鏡なんてあるのかしら? 多分、見られないことでしょう。量子論自体も諸説あり、まだ実証実験で確認されていない理論もあるといいますから。
量子論を理解するカギとなる重要項目が二つあるといいます。一つは「波と粒子の二面性」、もう一つは「状態の共存」です。一つ目の「波と粒子の二面性」とは、電子などのミクロな物質や光は、波のような性質と粒子のような性質の両方を持つということです。これは、相対性理論の時にも勉強しましたので、スッと頭に入りました。
よく分からなかったのは二つ目の「状態の共存」です。先述しましたが、理解しようと思っても、とても理解できない「現象」です。この本の42ページにこんなことが書かれています。
箱の中にボールを入れて、揺らして、真ん中に中敷きを挿入すると、ボールは右か左のどちらかにあるはずです。しかし、量子論によると、電子は左右両方に同時に存在することになります。「一つの物体は、同じ時刻に複数の場所に存在できない」ことは常識ですが、ミクロの世界ではそれは通用しません。一つの物体は、同じ時刻に複数の場所に存在するというのです。これは、電子が複数に増えるということではなく、箱のふたを開けて電子がどちらかにあるかを観測すると、右か左かのどちらかにあることが「確定」します。電子は「観測前」に右にいる状態と左にいる状態が「共存」していますが、観測して初めてどちらの状態が観測されるかが「確定」します。この時、どちらの状態が観測されるかを「確率的」に予測することは出来ますが、「確実」な予測はできません。この話は奇妙で納得がいかないでしょうが、それも仕方ありません。量子論では常識を捨て「物の存在」について根本から考え直す必要があるのです。
箱の中で電子が観測後に左にあることが分かったとしても、もともと電子が左側にあったわけではなく、「左右両方に存在する状態」が観測によって、「左側に存在する状態」に変化したのです。つまり、観測すること自体が、電子の状態に影響を及ぼしてしまうのです。
そう言われましてもねえ。。。
とは言いながらも、私は何となく分かる気がします。常識では理解できない世界が量子論だという覚悟さえあれば、少しも怖くありません。
量子論のお陰で、ビーム(CDやDVDなどの読み書き)が開発され、半導体(スマホやドローンなどにも応用)の性質が分かるようになったといいます。コンピュータ技術の発展も量子論抜きには語れないのです。
勿論、私が最も関心がある宇宙論もそうです。人類としてこの世に生を受けたからには、量子論ぐらい知っていても悪くはないなあ、といった気分です。いや、今は安価で情報が手に入るので有難い世の中です。私も衰えた記憶力に負けないよう、量子論の勉強に励もうと思っておりまする。