新聞・通信在京8社とはどこなのか?=報道とはかなり恣意的なものです

 本日12月12日(火)付毎日新聞朝刊に、「社会部長が選ぶ今年の十大ニュース」(新聞乃新聞社主催)の第1位に「自民党派閥パーティー券問題、岸田政権に打撃」が選ばれたことが報じられていました。まあ、妥当な話でしょう。

 この十大ニュースは、在京新聞・通信8社の社会部長が選出するのですが、毎日新聞は、この8社のことを「毎日、産経、日経、東京、共同通信など」と堂々と報じています。8社のうち5社だけがまるで「代表」です。残る3社は、朝日、読売、時事通信なのですが、毎日新聞をトップに持ってくる辺り、毎日新聞のかなり恣意的な「選別」を感じました(笑)。

 そしたら、産経新聞を見てみたら、全く同じ記事が載っていたのです。産経が頭ではなく、「毎日、産経、日経、東京、共同通信など」の順番も同じです。ハハア、これは共同通信の配信記事だったのか! と分かりました。小生は業界人ですからね(笑)。

 よく見てみると、毎日も産経も日経も東京も、共同通信の加盟紙です! 時事通信は共同のライバルですから、わざわざ、なかったことにして、「記事化」しないことは見え見えです。朝日は共同の外信、外報記事は契約していますが、純然たる加盟紙ではないし、読売と共同は大変仲が悪いことは、戦前の読売・正力松太郎社長と同盟通信時代の関係以来の「伝統」です。となると、やはり、共同通信の記者がわざと朝日、読売、時事通信を排除したことはかなり恣意的であり、意図的だったことが発覚してしまったわけです。

上野 ロダン「考える人」

 随分、レベルが低い話になってしまいましたので、もっと大きな国際的な話題に変えます。先日、12月5日、パリを本拠地とする経済協力開発機構(OECD)が、81カ国・地域の15歳(日本は高校1年)約69万人を対象に実施した2022年の国際学習到達度調査(PISA)結果を公表しました。全3分野のうち、日本は「読解力」が前回18年調査で過去最低だった15位から過去最高の3位に躍進。前回5位だった「科学的応用力」が2位、6位だった「数学的応用力」が5位に上がり、世界トップレベルを堅持したことが報道されました。

 しかし、これはあくまでも「日本向けの報道」で、OECDが公表した資料の10分の1、いや100分の1程度しか報道していません。他国のことについてはほとんど報道していなかったからです。「数学的応用力」「読解力」「科学的応用力」の全3分野で第1位に輝いたのはシンガポールでしたが、これは、前回1位を独占しながら、コロナ禍で学校が閉鎖されて今回不参加だった中国(北京、上海、江蘇省、浙江省)のことを割り引いて考えなければなりません。中国が参加していたら、第1位を独占していたかもしれない、ということです。

 今回、国際ニュースとして注目されたことは、欧州各国のレベル低下でした。例えば、「数学的応用力」で、エストニアが510点で7位、スイスは508点で8位、オランダは493点で10位と大いに健闘しましたが、欧州大国であるはずの英国は489点で14位、ドイツは475点で25位、フランスは474点で26位です。米国となると、465点で34位です。469点で31位のベトナムよりも低いのです。日本は536点の5位ですから、右翼雑誌や国家主義者が「欧米なんか大したことない」と大喜びするような結果です。

 加えて、上位に顔を出したのは、シンガポールと日本以外ではマカオ、台湾、香港、韓国です。いずれも東アジアです。そして、これらの国・地域はいずれも過去に欧米と日本の植民地になった所でしたが、「頭の良さなら、東アジア人の方が欧米人より上だ」とこれまた右翼雑誌や国家主義者が喜びそうな結果です。

 ただし、気をつけなければいけないことは、5位の日本の536点にせよ、34位の465点の米国にせよ、点数はあくまでも「平均点」だという事実です。ということは、個別の最低点は日本の方が上であっても、最高点は米国人の方が上であってもおかしくないのです。つまり、日本人は概ね、最高と最低の差が少なく平準化されていますが、米国ではその格差が膨大だということです。成績が悪い奴のお陰で、平均点が下がっているだけで、賢い米国人は日本人なんかよりも遙かに賢い、ということになってしまうわけです(笑)。

 実は、この話は、先日読了した安藤寿康著「能力はどのように遺伝するのか」(ブルーバックス)に掲載されていた2018年に実施されたPISAの結果から導いた著者の見解を翻案して借用させて頂きました。

 いずれにせよ、報道ニュースに関心を持たれる方は、色々と差し引いたり、疑問に思ったりしながら接することをお勧めします。

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