経済学は人々を幸せにできるのか?

浜松城

学生時代は、夏目漱石や古典文学、サルトルやカミュなどの哲学など専ら人文科学に熱中していたため、社会科学、特に経済学の勉強は疎かにしておりました。

まあ、経済学については斜に構えていたところがあり、敬遠していたわけです。それでも、森嶋通夫氏や宇沢弘文といった世界的な経済学者の名前だけは知っており、老境に入り、少しずつ彼らの著作を読み始めております。

でも、門外漢なので、専門書は歯が立ちません。手始めに、宇沢弘文著「経済学は人びとを幸福にできるか」(東洋経済新報社、2013年11月7日初版)を読んでみました。これは、講演会の速記録やエッセイ風の読み物でしたので、読みやすかった。結構知らなかった、蒙を啓いてくれる箇所が多かったので、また、備忘録のため、換骨奪胎で列挙したいと思います。

浜松城

・1929年の大恐慌の時、高名な経済学者サミュエルソンの父親は、インディアナ州ゲーリー(日本の八幡のような鉄鋼の街)のUSスチール社の職工だったが、1920年代初頭はかなり景気が良く、全てのお金をはたいて、フロリダの別荘用地を買ったが、それが詐欺で一晩でゼロになった。これが、サミュエルソンの子どもの頃の大恐慌の思い出。

・第二次大戦の終わった1945年の夏にフリードリヒ・ハイエクとフランク・ナイトがスイスの避暑地モンペルランで一緒になり、戦後の荒廃から回復する経済的基盤を考えるモンペルラン・ソサイエティの原型みたいなものを作る。2人は、シカゴ学派の中心的人物だったが、それが後に、弟子である金儲け主義で新自由主義のミルトン・フリードマンとジョージ・スティグラーに取って変わってしまう。ナイトは80歳過ぎた晩年になって、フリードマンとスティグラーの最近の言動は目に余るものがあるとして、この2人の破門宣言をした。

・英国のシドニー&ビアトリス・ウェブ夫妻は、フェビアン協会を作った新しいタイプの労働運動の指導者だった。この夫妻が英国で初めて作った労働者階級のための大学がロンドン・スクール・オブ・エコノミクスだった。(今やあのトマ・ピケティも学んだ世界一流の大学として有名です。インテリ・ロックンローラー、ミック・ジャガーも通ったとか)

・ケネディ政権などの国防長官を務めたマクナマラは、ベトナム戦争でキル・レシオ(殺戮比率)を使って、ベトコン1人殺すのに何万ドルかかるか戦略・戦術を考えた。このキル・レシオはマクナマラ自身が考えた概念で、太平洋戦争中、日本爆撃の全責任を負っていた司令官カーティス・ルメイ少将の目に止まり、マクナマラはグアム島に呼ばれ、そこで日本攻略の作戦を練った。(如何に安上がりで日本人庶民を殺戮できるかを考えたってことでせう)

・第一次大戦に従軍した米帰還兵にフーバー大統領がボーナスを約束したのに、なかなかそれを履行しないので、数万の帰還兵が1932年5月にワシントンでデモを行った。このデモを共産主義者が煽動しているという根拠がない理由で鎮圧した司令官がマッカーサーだった。フーバー大統領が中止命令しても聞かなかた。徹底的に弾圧し、幼児まで殺されたという記録が残っている。米国人のマッカーサーに関するイメージは、このボーナス・アーミー事件の影響力が大きい。(日本人は誰も知らない)

浜松城

・ケインズは、第二次大戦中も、政府代表というポストを利用して結構酷いことをやっている。その代表が、印象派絵画の買い占めだった。ドイツ軍がパリ侵攻前にフランス政府から名画の疎開を要請された際、個人的に安く買い占めたという。この事実は、ブルームズベリーの一員だった女流作家ヴァージニア・ウルフの日記に残されている。

・シカゴ大学哲学科のジョン・ドラン教授はベトナム反戦運動で逮捕され大学を追われた。「ノーム・チョムスキーはえらい。彼は反戦運動で54回も逮捕されている。それに比べると自分は1回しか逮捕されていない」とドランは話したが、彼の場合、みせしめのためか、懲役10年という重い刑だった。

・私がシカゴ大学にいた頃、ジョーセフ・スティグリッツという天才的な頭脳と魅力的な人柄を持った学生がいた。それから何年かして彼をスター・プロフェッサーとしてシカゴ大学に招いた。2001年、スティグリッツはノーベル経済学賞を受賞した。

・ケンブリッジ大学をトップで卒業する学生の大部分は、イートンやラグビーなど名門パブリック・スクールの教師になることだという。少し成績が落ちる学生は、研究者を志すか、公務員を志望する。一番成績の悪い学生は銀行に行くという。(あら、日本とじぇんじぇん違う=笑)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

旧《溪流斎日乗》 depuis 2005 をもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む