米国差別の構造=そして誕生日メッセージ御礼申し上げます

あまり個人的な話を書くことは気が引けますが、昨日は誕生日で、予想もしなかった多くの家族親戚友人知人の皆さんから多くの祝福メッセージを頂きました。有難いですね。お一人おひとりの名前は茲では書けませんが、本当に感謝申し上げます。

 ただ、フェイスブック(FB)もやっているせいで、強制的に誕生日が通知されてしまい、本当に甚だご迷惑のことだったと存じます。だからFBは嫌いなんですよ(苦笑)。

 FBは個人情報満載ですから、勿論、実年齢はバレてしまいます。昨日の誕生日は、私にとって大変特別でした。皆さん御案内の通り、私はビートルズ・フリークです。彼らが1967年に発表したアルバム「サージェント・ペッパーズ・ロンリーハーツ・クラブバンド」に収録されている曲「When I’m 64」があるからです。1967年ですから、今から実に53年前。当時、アルバムは高くて買えませんでしたから、最初はラジオで聴きました。ビートルズと言えば、ロックですが、この曲は、ポールの作品で、影響を受けた1930年代のジャズ風の明るい曲です。

 今から何年も先の話だけど、歳を取って髪の毛が薄くなっても、君はバレンタインや誕生日を祝ってくれるのかなあ。ワインのボトルで。僕が64歳になった時に。君も同じように歳を取っていることだろう。孫たちが膝にまとまりついているかな。ーといった内容です。

 実に53年間、私も何百回も聴き続けてきましたからね。ついに、その歳になってしまいました!

 そんな特別な誕生日に娘夫婦が自宅に招待してくれて祝ってくれました。婿殿は米国人。ハーフの孫はもうすぐ1歳8カ月で可愛い盛りです。ビートルズの「When I’m 64」の再現です。まさに正夢です。

婿殿の誕生プレゼント

 婿殿は、かなり高価な日本酒「越王」を奮発して買ってくれました。日本語があまり出来ず、かなりシャイな性格なのですが、一緒にお酒を飲むと、やっと少し饒舌になり、こちらの質問にも色々と応えてくれました。こんなに深くしゃべったのは初めてぐらいです。

 例えば、小池都知事が口癖のように言っていた”Stay home” は和製英語ではないか? Stay at home が正しいのではないか? もしかして、Stay the home が正しいのかもしれない…。小生の愚問に丁寧に答えてくれました。こういう時に、身近にネイティブさんがいると便利ですね(笑)。

 彼によると、やはり、Stay home が一番正しい。「外に出ないでください」というニュアンスが強くなる。Stay at homeだと、「特定の家に留まるように」と限定される。at は場所が限定される。at the restaurant のように。Stay the home は間違い。home にtheは付けない。theを付けるとしたら、the house になる…まあ、こういった感じです。

 日本人、いや外国人にとっては、英語の冠詞や前置詞が一番難しいものです。

 例えば、It’s nice to talk to you.と It’s nice to talk with you.の違い。前者のtoだと、「貴方とお話ができて光栄です」と丁寧になりますが、後者のwith だと、「君とおしゃべり出来て楽しかったよ」とお互いの立場が対等に近いニュアンスだというのです。こういうのなかなか外国人は分かりませよね。

 今、米国で一番話題になっているのが Black lives matter(黒人の命こそ大切)運動です。黒人のジョージ・フロイド氏がミネアポリスで警察官に圧死させられて全米、全世界でこの運動が広がりました。婿殿は黒人ではありませんが、米国内ではヒエラルキーの上位に属さないので、差別については、大変よく理解できるというのです。

 米国の階層は、白人、ヒスパニック、アジア系、黒人ぐらいの区別しか日本人の多くはできませんが、彼によると、もっともっと複雑でした。白人の中でも差別意識があり(それらは職業や住居などに表れる)、「支配階級」の一番トップは、アングロサクソン系、次がドイツ系、その次がフランス系辺りじゃないかといいます。同じ白人でも後から来たイタリア系や英国と長い間戦争していたアイリッシュ系は下に見られる。ポーランドやハンガリーなど東欧系も同じように見られる。でも、ロシア系は国力があるので、かなり上のランクだそうです。そして、ユダヤ系はやはり、上位ではありません。

 続いて、ヒスパニック。ラティーノと呼ばれることもあります。ヒスパニックの中でもスペイン系は白人なので、白人系に属してかなりの上のランク。同じヒスパニックでも米国に近いメキシコ系はまだましですが、その下がペルーやコスタリカなどの南米系、その下がホンジュラスなどの中米系、最後はプエルトリコなどカリブ海系のヒスパニックなんだそうです。なぜなら、カリブ海系は肌の色が黒い人が多いからです。彼は「結局、見た目で判断されます」。(そう言えば、英国人は植民地の現地人とほとんど結婚しませんが、スペイン人は現地人との混血が進んだ。そのため、肌の白いヒスパニック系が多くなったといいます)

 続いてアジア系は、「エイジアン」の一言でお終い。米国人は、日系と韓国系と中国系が全く区別できないから「エイジアン」の一括りで、多くの米国人は、アジアの国の文化も理解しようとしないし、区別しようともしないといいます。東南アジアもエイジアンですが、インド人は、エイジアンとは言わず、インディアンと別のカテゴリーになります。これも、インド人の肌がやや黒いからです。

 黒人は、アフリカンですが、例えば、アルジェリア系、エジプト系、コンゴ系は民族も宗教も文化も全く違うのに、全部いっしょくたんで、区別しようとしないそうです。

 ロサンゼルス出身の婿殿が、差別問題で印象的だった事件の一つは、2013年2月に起きた「クリストファー・ドーナー事件」だというのです。クリストファー(クリス)・ドーナーは黒人で、ロス市警の優秀な警官でしたが、同僚の白人女性警官の不正を告訴したら、逆に解雇されたというのです。彼は「人種差別だ」とすっかりキレてしまい、ロス市警の家族ら3人を殺害し、山小屋に逃亡したところを見つかり、銃撃され、最後は警察によって爆死させられた可能性が高いという事件です。

 この間は、ロス市警は黒人と見れば、怪しいと銃撃して、誤射で何人かの黒人が亡くなったといいます。そこで、街では、「僕はクリス・ドーナーではありません。どうか撃たないでください」と大きくプリントしたTシャツが黒人の間で飛ぶように売れたそうです。

 いやあ知りませんでしたね。婿殿はこういう治安の悪い米国が嫌になったことが、日本に来るきっかけになった一つだったようです。「米国では、車のスピード違反が白人だったら、警官は『今度は気を付けなさい』で終わってしまうが、黒人ではそうはいかない。日本は平気で何処でも安全に歩き回れるけど、ロスでは絶えず緊張して外に出なければならない。いつ、何処からか銃弾が飛んで来るか分からず、心が休まらなかった」と打ち明けてくれました。