身体を動かせば人生が好転する!?=アンデシュ・ハンセン著「運動脳」

 アンデシュ・ハンセン著、御舩由美子訳「運動脳」(サンマーク出版)を読了しました。渓流斎ブログは、まるで読書感想文みたいですが、堪忍してください。出典を明らかにしたいだけなのです。読書感想文と言っても、何百ページの中から、抽出できるエキスはほんのわずかです。全て、私が「これだ!」と思ったことを作為的に選んで、その感想を述べております。ですから、読書感想文とはいっても、百人いれば百通りの感想文が出来なければおかしい、と思っております。この本についても、私自身が「これだ!」と思った、書きたいことを書いていきます。

 はい。この本は実に興味深い、大変ためになることばかり書かれていました。著者は書くのに2年もかかった、と前書きに書いていますが、あらゆる文献を逍遥した著者の苦労も表れています。著者はスウェーデン人の精神科医ですが、ジョギング好きで知られる日本人ベストセラー作家村上春樹さんまで取り上げて、ランニングによる効能を説いておりました。

浮間舟渡公園

 この本を簡潔に要約すると、運動さえすれば、集中力が増し、気持ちが晴れやかになり、不安やストレスが減り、記憶力が向上し、創造性が増し、知能が高まるーといった良いことずくめばかりです。科学的試験から実証されたことばかりなので説得力があります。

 私は最近、人類学、進化論、宇宙論、相対性理論、量子論など理系の学問に一段と興味を持ってしまったので、その辺りからアプローチした記述には特に注目しました。例えばー。

 ・人間の脳の大きさは25歳ごろがピークで、その後、年齢とともに徐々に小さくなっていく。脳細胞は(特に運動によって)一生涯作られ続けていくものの、1日に約10万個の細胞が失われている。脳には1000億個の細胞があるが、時間とともに失われる数は厖大で、脳そのものは毎年0.5~1.0%ずつ縮んでいく。

 ・この地球上に脳細胞が初めて出現したのは約6億年前で、その脳細胞の最も大切な仕事は、その生物を移動させることだった。

 ・つまり、脳は「移動」するためにあり、最も動く祖先が生き残った。

 ・微小な線虫には約300個の脳細胞があり、800ほどの細胞同士のつながりがある。これに対して、人間の脳細胞は1000億個もあり、細胞同士のつながりの数は100兆にも及ぶ。

 ・ヒトの遺伝子の数は約2万3000個。細胞同士のつながりの数は100兆。たった2万3000個の遺伝子だけでは、100兆ものつながりは支配できない。我々は遺伝子によって形作られるか、それとも育った環境によるのか、といった論争が続いてきたが、そのどちらかではなく、遺伝子と環境の要因が密接に絡み合って、影響を及ぼすことが分かってきた。

浮間舟渡

 ⇒ということは、ヒトは、遺伝によって性格や体形まで決まってしまいますが、本人の努力(環境を改善していく)次第で、改良できる、ということになりますね。

 つまり、著者が力説するように、遺伝だからといって諦めないで、環境を改善して、運動さえすれば、集中力が増し、気持ちが晴れやかになり、不安やストレスが減り、記憶力が向上し、創造性が増し、知能が高まる、という結論になるわけです。