秀才が書くような文章でした=三木谷浩史著「未来力  『10年後の世界』を読み解く51の思考法」

 今朝の通勤電車。満員電車のはずが、私が乗ろうとした車輛はどういうわけか、空席が目立ち、異様な雰囲気でした。そしたら、ドアの出入り口付近で、もはやいくなった酔っ払いらしき人物が例の物をまき散らしていて、それに気が付いた乗客は慌てて、他のドアに移動していたのでした。 

 それでも、都心に近づくと、かなりの人が乗って来て、ハイヒールを履いたある若い女性が、例の物に全く気付かずに踏んでしまい、すってんころりん。「も~、最悪~」と言いながら、電車から降りてしまいました。

 毎日通勤していると色んな光景にぶち当たります。

 さて、三木谷浩史著「未来力  『10年後の世界』を読み解く51の思考法」(文藝春秋、2023年1月10日初版)を読了しました。申し訳ないですが、拙宅は狭いので、購入したわけではなく、図書館で借りました。お借りしたので、2日で読み終えました。

 三木谷さんは、御案内の通り、世界に3万人もの従業員を擁する楽天グループの会長兼社長です。ネット通販大手の楽天市場の創業者であり、今や、電気、ガス事業から携帯電話にまで進出し、スポーツ好きで、プロ野球楽天イーグルスやサッカーJリーグのヴィッセル神戸のオーナーでもあります。新経済連盟の代表理事として多くの政治家とのパイプも持っておられます。以前、三木谷氏の楽天創業時の苦労話は読んだことがありますが、そんな超大物財界人が、今後10年の未来をどう予想されているのか興味を持ってページを捲ってみたわけです。

 そしたら、驚くほど、正統的で、米ハーバード大学でMBAを取得したまさに秀才の文章でした。大変お忙しい方なので、最初はゴーストライターが書いたものにかなり筆を入れたのではないか、と勝手に想像されますが、もっと破天荒なことが書かれているかと思いましたら、理路整然といいますか、地道な話でしたので、少し拍子抜けしました。

 三木谷氏は、どうも御尊父で経済学者だった三木谷良一神戸大名誉教授(1929~2013年)に多大な影響を受けたようで、本書でも何度も登場します。その父親が影響を受けた世界的経済学者シュンペーター(1883~1950年)の「イノベーション」や「創造的破壊」にもかなり影響を受けていたようで、起業するに当たって、理論的支柱になったことも明かしております。

銀座「萬福」レバニラ定食890円

 当たり前の話ですが、超一流の経営者には読書家が多いのですが、三木谷さんも例にもれず、唐の皇帝太宗の統治をまとめた「貞観政要」までこの本で引用していたので吃驚しました。私はちょうど、植木雅俊著「日蓮の手紙」(NHK出版)も読んでいて、この中で、日蓮の愛読書として「貞観政要」が登場していたからです。何という偶然の一致! もっとも、植木氏の説明では、この「貞観政要」は、「唐代の呉兢(ごきょう)が編纂したとされる北宋第二代皇帝太宗の言行録で、政治の要諦がまとめられている。全10巻40篇」と書かれています。唐第2代皇帝も太宗ですが、有名な「貞観の治」と呼ばれる太平の世を築いたことから、やはり、唐の太宗の方かもしれません。

 三木谷氏は、「貞観政要」の中から、「三鏡」の逸話を引用しています。三つの鏡ーすなわち「銅の鏡」で自分の表情を確認し、「歴史の鏡」で過去から物事の盛衰を学び、「人の鏡」で今自分のやっていることが周囲からどう見られているかを知り、行いを省みる、というものです。三木谷氏は「三鏡は、組織を率いる者にとって重要だ」と引用しているわけです。

 三木谷氏は米シリコンバレーにも邸宅をお持ちのようで、ホームパーティーを開いて、色んな国からのIT関係者らと親睦を深めて最新情報も仕入れているようです。例えば、シリコンバレーがあるカリフォルニア州は、個人所得税は1~12.3%、法人所得税は9%なのに対して、テキサス州では基本的に個人所得税も法人所得税もゼロ。そのため、イーロン・マスクのテスラ社を始め、オラクルもヒューレットパッカードも、次々とテキサス州に移転(計画)しているというのです。

 私も、テキサス州に住む日本人の友人がおりますから、起業したらどうかな、と思いました。もっとも、彼は最近、このブログを読んでいないようなので、通じないかなあ?(苦笑)。

 三木谷氏は今年58歳。まだ当分、現役を続けられるようです。私は、彼の政治信条とは全く合いませんけど、今後もブレイクスルーを続けてほしいものです。何故かって? だって、昨今、スマホから電気まで、楽天グループの色んなものと契約してしまったからです。まさに、死活問題ですから、トップの動向は、そりゃ気になりますよ(笑)。

🎬映画「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」はマイナス★

 今年の第95回米アカデミー賞で、主要部門の作品賞を含む7部門も受賞した「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」(ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート両監督)を観に映画館まで足を運びましたが、あまりにも観るに耐えられず、途中で退席してしまいました。途中退席はあまり覚えていませんが、生涯で初めてかもしれません。

 映画記者や評論家としてではなく、一般庶民として入場券を購入して観たので、正々堂々と開陳させて頂きますと、この映画で、製作者や監督が何を言いたいのかさっぱり分かりませんでした。そして、主演のミシェル・ヨーさん(60)がアジア系で初めて主演女優賞を受賞するなど大きな話題になり、つい田舎もんの私も観てしまいましたが、結局、米アカデミー賞の選考委員たちがどうしてこの映画に栄誉を与えたのか、さっぱり理解できませんでした。

 考えられることは、ハリウッド関係者が、世界第2位の経済大国であり、世界一の人口を誇る中国のマーケットを意識したのでしょう。アカデミー賞は宣伝効果抜群ですから、恐らく、何十億ドルもの興収を狙っているはずです。映画では中国語が頻出しますので、世界中の中国系の人たちは痛快かもしれません。

 メタフィジックスにせよ、血が出る暴力シーンが多く、単なるカンフー映画か、SF映画と割り切って楽しめば良いんでしょうけど、個人的には、あまりにも荒唐無稽過ぎて、観ていて少しも楽しめず、登場人物に少しも感情移入が出来ませんでした。エンターテインメントなのに、腹を立ててしまってはもうどうしようもありませんよね?

 「お金と時間の無駄」と判断して、途中で松岡洋石全権代表の如く、席を蹴って、退席しました。

 

「個人の判断」も忖度優先なのか?=コロナのマスク着用に関する哲学的考察

 3月13日(月)から、政府方針により、マスク着用は「個人の判断」に委ねるということになりましたので、私も俄か文化人類学者になってフィールドワークを試みました(笑)。

 まず、自宅から最寄り駅までバスを使いますが、車内のマスク着用率は100%。全員マスクをしていたので拍子抜けしました。そして、最寄り駅からの通勤電車。超までいきませんが、車内は満員で、やはり、私が見える範囲で全員マスクをしておりました。

 職場は、東京・銀座なのですが、街を歩く人で、外国人観光客の3人に2人はマスクを着用せず、日本人らしき人はほぼマスク着用でした。私がすれ違った数十人の中で、3人だけがマスクをしていませんでした。マスク着用率98%といった感じです。

 昼休みに、雨の中、ランチがてら、私の縄張りである(笑)銀座、築地、新富町辺りを散策しましたが、やはり、ほとんどの人がマスク着用でした。

 厚労省の発表では、3月12日は全国で7013人がコロナに感染し、43人が死亡したといいます。ということは、コロナは終息も、収束もしたわけではないということです。専門家の中には、日本人全員がマスクを外せば、5月には感染者が倍増するといった予想をした人もおりました。

 岸田首相や小池都知事といった権力者たちが「マスクなし」で出勤したとはいっても、まさか、満員の通勤電車に揺られて来たわけでなく、運転手付きの黒塗り高級車に乗って来られたわけでしょ?

 つまりは、為政者が声高に叫んでも、一般庶民は、権力者のことを誰も信用していないということになりますかね? 庶民がコロナに罹ったとしても、「経済を回す」ことの方が優先なのでしょう。それとも、日本人は横並びで、斟酌、忖度が得意な民族なので、周囲の皆と一緒に合わせているのでしょうか?

 私自身は花粉症でもあるので、しばらくの間は、今まで通りマスクを着用するつもりです。勿論、コロナ感染者の被害者にも加害者にもなりたくありませんからね。

 明治維新になって、ちょん髷からザンギリ頭になっても、大正の頃までちょん髷を結っていた人がいたぐらいですから、ずっとマスクをし続ける人もいるかもしれません。そう言えば、昭和の40年代ぐらいまで女性で日本髪で和服の人が結構いたような記憶があります(明治生まれの祖母の洋服姿は見たことなかったなあ)。京都の舞妓さんは、今でもそうですし、お相撲さんは現代でもちょん髷じゃありませんか!(笑)

《渓流斎日乗》は俳句なのか!?=ChatGPTはいまいちです…

 例の先日、初挑戦した「チャットGPT」に本日、再度挑戦してみました。

私:「渓流斎日乗」とは何ですか?

ChatGPT(以下C):「渓流斎日乗」とは、江戸時代中期の俳人・与謝蕪村が著した俳諧の随筆集の一つです。蕪村が生涯をかけて書き溜めたとされる約1,500の俳諧と、その解説や評論が収録されています。

「渓流斎」は蕪村の号であり、「日乗」とは「日々の修行を積み重ねること」という意味があります。蕪村が俳諧を通じて求めたのは、日々のありふれた風景や出来事の中にある美しさや哀愁などの情感を表現することであり、その思想やスタイルがこの書物に反映されています。

「渓流斎日乗」は、俳諧の教科書としてだけでなく、日本の文化や風俗、美意識を知るうえでも貴重な書物として、現代でも多くの人々に読まれ続けています。

私:渓流斎は蕪村の雅号ではありません。間違っていませんか?

C:おっしゃる通りで、私の回答に誤りがありました。訂正してお詫び申し上げます。

「渓流斎日乗」とは、与謝蕪村が生涯を通じて愛用した別荘の名前であり、蕪村がその別荘で執筆した随筆集に「渓流斎日乗」という題名をつけたことから、このように呼ばれるようになりました。蕪村の号は、実は「蕪村」以外にも「舎人」や「松陰」といくつかありますが、「渓流斎」は、蕪村が晩年に用いた号の一つです。

訂正していただき、ありがとうございました。

私:渓流斎日乗は、蕪村の別荘の名前でもありません。現代人が書いているブログです。貴方は何も知らないんですね?

C:申し訳ありませんが、私の前回の回答にも誤りがありました。ご指摘いただき、心よりお詫び申し上げます。

「渓流斎日乗」は、与謝蕪村の随筆集の名称であり、蕪村が生涯を通じて愛用した別荘の名称ではありません。また、現代人が書いたブログとしても知られていません。私が勘違いしていたことをお詫びいたします。

与謝蕪村は、江戸時代中期に活躍した俳人であり、俳諧の分野で多大な功績を残しました。蕪村は、日本の俳諧の歴史に大きな影響を与えた人物の一人であり、現在でも多くの人々に愛されています。

私:もういいです。それも間違いです。それなら、渓流斎日乗の主宰者の高田信之介とは何者ですか?

C:申し訳ありませんでした。私の回答が正確でなかったことを再度お詫び申し上げます。

高田信之介は、現代において「渓流斎日乗」という名前で活動している方の一人で、俳句や随筆を中心に執筆活動を行っています。高田信之介は、「渓流斎日乗」の主宰者として、同名のウェブサイトを運営しており、そこで自身の作品を発表しています。

ただし、与謝蕪村の著作である「渓流斎日乗」とは、全く別のものであることにご注意ください。

私:あのですね。渓流斎日乗は俳句はやってません。短詩型の創作は苦手だと主宰者は申しております。貴方はよく間違えますね?

C:おっしゃる通りで、私の前回の回答に誤りがありました。再度、訂正してお詫び申し上げます。

「渓流斎日乗」の主宰者である高田信之介氏は、俳句を中心とした文芸活動を行っており、「渓流斎日乗」においても俳句を発表されているわけではありません。また、高田信之介氏は自身のウェブサイトにおいて、短詩型は苦手とされていることを明言されています。

再度、ご指摘いただき、ありがとうございます。今後はより正確な情報を提供できるように努めてまいります。

私:こりゃ駄目だ。間違いだらけなので、もう結構です。

C:申し訳ありませんでした。私の回答が不正確であったことでご迷惑をおかけし、心よりお詫び申し上げます。今後はより正確な情報を提供できるように努めますので、何か質問がございましたら、いつでもお知らせください。

 いやいや、もう質問しないでしょう。

職業で人相が表れるというお話=4年ぶりの高校同窓会に参加しました

 4日(土)は、4年ぶりに高校の同窓会が高田馬場の「梵天」で開かれ、私も参加して来ました。御年79歳になられる目良先生を始め、参加者は全部で14人。クラスは48人おりましたから、3分の1にも満たなかったのですが、全員、高校時代の悪ガキに戻って楽しく歓談することが出来ました。

 コロナの影響で、4年ぶり開催ということで、まず初めに、その間に亡くなってしまった神林君と田中君の冥福をお祈りして、皆で黙祷を捧げました。同窓会というと、どうも参加者の顔ぶれが決まってしまっておりますが、今回初めて参加する人もいました。卒業してもう半世紀近く経ち、その間一度も会ったことがなかったので、「あんた誰?」という感じでした。街ですれ違っても、全く分からないことでしょう(笑)。

 初参加は水口君で、永年、小学校の教師を務めていたようです。校長先生になれたようですが、最終的にはなりたくなくて、登用試験を受けなかったそうです。一方、某有名学園の校長先生になった金澤君は、大変な苦労をしてしまったようで、任期途中で辞任したそうです。「生徒相手の授業は楽しかったのに、校長になると大人の教師の管理が仕事。ストレスだらけで血圧が190にも上がってしまったよ」と溜息をついておりました。

何だろう?気球かなあ?

 もう一人、教師になったのは美大を出て母校の美術・技術教師になった細川君。彼も大変苦労したようですが、母校は半世紀前とはすっかり様変わりしたことを話していました。我々の頃は、東大に1人入れるかどうかの「滑り止め校」でしたが、今では東大に50人以上入学する全国でも有数の超進学校になったことで色々と問題課題も増えていったということでした。昔の母校は、都立の滑り止めだったのが、今では逆に日比谷や戸山などかつての都立名門高校を蹴って入学する時代になったといいますから隔世の感があります。(もっとも、中高一貫校になってしまい、高校入試はなくなりましたが)

 思うに、人間とは職業でその人相が表れてしまうものです。教師になった彼らは、まさに「教師面」になってしまっておりました。

 京都の禅寺に有名な格言?がありますよね。ー「妙心寺の算盤面」「建仁時の学問面」「南禅寺の武家面」「東福寺の伽藍面」「相国寺の声明面」です。解説は不要でしょう。とにかく、人間は職業でそれに似た面構えになってしまうということです。

 経済評論家の岡本君は、怪しげな相場師の人相。高校時代に「タコ」と綽名された小島君は、医療関係の仕事をしてますが、今でも普通の人の発言とは超越していて宇宙人の風貌。(小島君は、このブログを読んでくれているようで、「ランチの写真、いつも載せて、値段まで書いているけど、たまにはもっと高いやつ喰えよ」と言われてしまいました!)薬局店を経営する薬剤師の平田君は、商人(あきんど)の面構え。今回、幹事長を務めてくれた加藤君は、修行僧。そういう私はブンヤなので、さぞかしスパイ面といったところでしょうか(笑)。

 二次会にも参加しましたが、座った隣席に近い人しか話が出来なかったので、全員には取材?できませんでしたけど、皆、辛うじて人生の荒波を乗り越えて生き延びていて、嬉しく思いました。皆、歳も歳なので、あと何回、同窓会を開催出来るか分かりませんが、今後もなるべく参加したいと思っています。

 あ、忘れるところでしたが、帰りは、またまた飲み過ぎで前後不覚になってしまい、危ないところでした。我ながら懲りないなあ~。

つい、昨日写されたもののよう=佐藤洋一、衣川太一 著「占領期カラー写真を読む」

 私は「ポイント貴公子」なので(ポイント乞食ではありませんよ!)、三省堂書店のポイントが少し溜まったので、何か新書を買うことにしました。でも、三省堂はちょっと不便でして、他の書店、例えば、紀伊國屋書店なんかは、いつでも何ポイントからでも使えるのに、三省堂は100ポイント(以上)単位でしか使えないのです。

 御存知なかったでしょう? 最近、本屋さんなんかに足を運ばれていないんじゃないんですか? 私は、街の本屋さんがなくなってしまっては困るので、なるべくリアルの書店に行くようにしております。だって、「エンゲル係数(お酒も含む)」以外でお金を使うとしたら旅行するか、もう本を買うか、洋服を買うかぐらいしかないからです。競馬もパチンコもしませんし…。

 昨日は、高校の同級生田中英夫君の訃報に接しました。4日に同窓会を開いて久しぶりに皆で顔を合わせようという時期だったので、衝撃が走りました。同級生ですから同い年です。人生100年時代、世間的にはまだまだ早い方ですが、誰でも、いつ何時、死神が襲ってくるか分かりません。それなら、生きているうちが華ですから、お金なんか貯め込んだりせず、日本経済に貢献し、好きなものを買って楽しく過ごした方が健康にいいですよね?

新富町「はたり」日替わり定食1000円

 さて、新書と書きましたが、古書に対する新しい本という意味で最初に書いたのですが、結局購入したのは新書でした(笑)。佐藤洋一、衣川太一 著「占領期カラー写真を読む」(岩波新書、2023年2月21日初版)という本で、1週間前に買ったので、先ほど電車の中で読了しました。

 コダックや富士フイルムなどカラー写真やスライドの歴史の詳細にも触れ、正直、かなりマニアックな、ある意味では難解な学術書でしたが、占領期のカラー写真は初見のものばかりでしたので、興味深く拝読しました。著者は二人なので、どのように本文を分担されていたのか分かりませんが、写真については、2009年頃から、ネットオークションで手に入れることが多くなったことが書かれていました。写真投稿サイト flickr やネットオークション eBay などです。オークションにかけられる写真は、ほとんど撮影した本人が亡くなった後、遺族によるものが多いので、撮影された年月日や場所など基礎情報に欠けるものが多く、さながら歴史探偵のように苦労して調査しておられました。しかも、売る側が高く売ろうとして「バラ売り」したりするので、ますます出所判明に困難を来すことも書かれていました。

 6年7カ月間、マッカーサー将軍率いるGHQという名の米軍による日本占領期(1945年9月2日~52年4月28日)は今から70年以上昔ですから、若い人の中には「えっ?日本って、占領されてたの?」という人もいるかもしれません。それ以上に、「えっ?マジ?日本はアメリカと戦争してたの?マジ、マジ?」と驚く若者もいるかもしれません。学校での歴史の授業は明治時代辺りまでが精一杯で、近現代史を学ばないせいなのでしょう。でも、こうしてカラー写真で見ると、つい最近のように見えます。いくらAIが発達して、白黒写真をカラー化出来ても、ほんまもんの「色」には及ばないことでしょう。

新富町

 今や旧統一教会との関係問題ですっかりミソを付けて信頼を失ってしまった細田博之・衆院議長は、若き通産省官僚の頃、米国に留学し、下宿先のスティール夫妻が占領下の日本で撮影したカラースライドをたまたま見たことがきっかけで、「毎日グラフ別冊 ニッポンの40年前」(1985年)の出版などに繋がったことも書かれていました。細田氏は「あと10年は待てない。なぜなら多くの撮影者はこの世を去り、写真は散逸してしまうから」との思いから、毎日新聞社と連携し、スティール氏が中心になって全米から1万枚もの占領期のカラー写真を集めたといいます。

 エリートの細田氏にそんな功績があったとは全く知りませんでした。

名著なればのズッシリとした感動=レヴィ=ストロース著、川田順造訳「悲しき熱帯」

 レヴィ=ストロース(1908~2009年)著、川田順造訳「悲しき熱帯Ⅱ」(中公クラシックス)をやっと読了することが出来ました。マルセル・プルーストのような文章は、非常に難解で、かなり読み解くのに苦労しましたが、やはり、名著と言われるだけに、読了することが出来てズシリと重い達成感があり、感無量になりました。

 最後まで読んでいたら、本当に最終巻末に「年表」や「関連地図」(大貫良夫氏作成)まで掲載されていたので、「ありゃまあ、知らなかった」と驚いてしまいました。最初から地図があることを知っていたら、参照しながら読めたのに、と思ったのです。確かに、カタカナの固有名詞が出て来ると、最初は、これが地名なのか、ヒトの名前なのか、植物なのか、戸惑うことが多かったからです。そんなら、今度は地図を見ながら再読しますか?(笑)

新富町・割烹「中むら」小アジフライ定食 銀座では絶滅した、雰囲気のある小料理屋。銀座より価格は100円ほど安くリーズナブル。女将さんも感じが良い、常連さんが多い店でした。

 「悲しき熱帯」の大長編の中で、一つだけ印象深かったことを挙げろ、と言われますと、私は迷うことなく、ナンビクワラ族の訪問記を挙げますね。この部族に関しては、以前にもチラッとこのブログに書きましたが、とにかく、アマゾン奥地の未開人の中で最も貧しい部族だったからです。(著者は、ナンビクワラ族のことを「石器時代」なんて書いております。)

 「悲しき熱帯Ⅱ」の161ページにはこんな記述がみられます。

 ハンモックは、熱帯アメリカのインディオの発明によるものだ。が、そのハンモックも、それ以外の休息や睡眠に使う道具も一切持っていないということは、ナンビクワラ族の貧しさを端的に表している。彼らは地面に裸で寝るのである。乾季の夜は寒く、彼らは互いに体を寄せあったり、焚火に近寄ったりして暖をとる。

 この前の141~142ページには、ナンビクワラ族の生活様態が描かれています。

  ナンビクワラ族の1年は、はっきりとして二つの時期に分けられている。10月から3月までの雨の多い季節は、集団は各々、小川の流れを見下ろす小さな高地の上に居住する。先住民は、そこに木の枝や椰子の葉でざっとした小屋を建てる。(中略)乾季の初めに村は放棄され、各集団は幾つかの遊動的な群れになって散って行く。7カ月の間、これらの群れは獲物を求めてサバンナを渡り歩くのである。獲物といっても多くは小動物で、蛆虫、蜘蛛、イナゴ、齧歯動物、蛇、トカゲなどである。このほか、木の実や草の実、根、野性の蜂蜜など、いわば彼らを飢え死にから守ってくれるあらゆるものを探し歩く。

 うーむ、凄いなあ、凄まじい生活ですね。蛆虫まで御馳走?になるなんて、最も生活レベルが低い人類であることは間違いないことでしょう。とても、生き残れるとは思えません。彼らはその後どうなったのか? と思ったら、日本人の文化人類学者がしっかりと、フォローされているようですね。巻末に参考文献として列挙されていました。

 一つは、著名な文化人類学者の今福龍太氏の論考「時の地峡をわたって」(レヴィ=ストロース著「サンパウロのサウダージ」(みすず書房)の今福氏による翻訳版に所収)です。今福氏が2000年3月にサンパウロ大学に招聘されたことを機会に、60年余り前にレヴィ=ストロースが住み、写真を撮った地点を丹念に再訪して鋭利な考察を行ったものです。

 もう一つは、この「悲しき熱帯」を翻訳した川田順造氏の著書「『悲しき熱帯』の記憶」(中公文庫)です。レヴィ=ストロースのブラジル体験から50年後(1984年)に、ナンビクワラをはじめ、ブラジル各地を訪れて感じ、考えたことを起点に「悲しき熱帯」の現在を考察したものです。

 いずれも、私自身未読なので内容は分かりませんが、こうして、世界中の文化人類学者がレヴィ=ストロースに大いなる影響を受けたことが分かります。レヴィ=ストロースのもう一つの代表作「野生の思考」(みすず書房)も私自身、未読ですので、いつか挑戦してみたいと思っております。

トマホークは誰がつくってるのかな?=米国の政・官・産・軍・学の一蓮托生を見た

 反撃能力(敵基地攻撃能力)に使う米国製巡航ミサイル「トマホーク」の購入数が400発になることが昨日27日の衆院予算委員会で明らかになりました。政府は、トマホーク取得費用として新年度予算に2113億円を計上していたので、これで1発が幾らなのか想像出来ます。

 いや、そんなことより、こうして防衛費増大が具現化されていきますと、「はじめのはじめ」のような、「おわりのはじまり」のような、「おわりのおわり」のような予感がしてきます。何が? まあ、御説明するまでもないでしょう。2021年10月の時点で、日本の戦後生まれは86.2%。ほとんどの人が先の大戦の体験がないわけですから、周辺国からの危機をやたらと煽り立てる為政者の口車に乗ってしまったということです。特に、ロシアによるウクライナ侵攻があってからは尚更です。正論にまでなってしまいました。

 しかし、管見ながら、軍拡競争はキリがありません。ですから、結局、どちらか(もしくは両者)の破滅で終わることを歴史と人類学が教えてくれています。

銀座「ジンホア」担々麺 シンガポール仕込みらしくこれは美味い😋

 私はこのトマホークというミサイルの性能よりも、一体、誰がつくっているのか気になりました。今は簡単に調べられます。米ヴァージニア州フォールズチャーチに本社を置く軍需産業ジェネラル・ダイナミクス社です。従業員9万人の大企業です。1952年設立と意外と新しい会社かと思ったら、米海軍御用達で1899年創立のエレクトリック・ボード社の流れを汲むらしいのです。この会社、明治37年(1904年)に日本海軍の依頼を受けて水雷艇を建造したといいますから歴史があります。1904年といえば、この年の2月に日露戦争が勃発しています。(翌年9月まで)

 ジェネラル・ダイナミクス社の会長兼CEOがフィービー・ノヴァコヴィッチさん(1957年11月生まれの65歳)というセルビア系米国人女性です。ファーブス誌から世界で最も影響力のある女性経営者の25位に選ばれています。ペンシルベニア大学でMBAを取得し、CIAと国防省に勤務した経歴があります。ジェネラル・ダイナミクス社に移ったのは2001年で、12年には社長に就任し、会長兼CEOは13年1月から務めています。米国のエリート社会は、政・官・産・軍・学が一体になっていて、よく「revolving door(回転ドア)」と言われます。政治家が落選して大手軍需企業の役員になったり、経済学者が財務長官やFRBの議長になったり、クルクルと回転ドアのようにポストが回されるという意味です。元CIAから軍需産業のトップに就いたノヴァコヴィッチ氏もその典型だったことが、これではっきりと分かります。

 そして、何よりも、永久敗戦国が、半強制的に宗主国の軍需産業を支え、宗主国の経済と景気浮上に大きく貢献する構図も見て取れます。

オラも「チャットGPT」やってみた=悩むのが人間ですよ

 自分自身、信じられませんが、いつの間にか、私も世間では高齢者と呼ばれる部類になってしまいましたが、有難いことに、好奇心だけは衰えていません。

 このブログをお読み頂いてくださる皆様にはお分かりですが、歴史から、古生人類学、文化人類学、進化論、地球46億年、宇宙論まで本を読み漁り、興味がさまざまな分野に発展して留まることを知りません。

 そしたら、それに対してチャチャを入れる奇特な紳士がおりまして、「貴方は、あっちこっちフラフラし過ぎですよ。何が宇宙ですか!宇宙なんか生きている上で何の関係ありませんよ。そんな分野に入って来てもらっては専門家の人たちが迷惑なんですよ。どうせ、さっといなくなるんでしょうから、遊び心で来てもらっても困るんですよ。本当にいつも貴方は自分勝手で、周囲ははた迷惑なんですよ」と言い放つのです。いいえ、脚色なんかしておりません。

 あまりにも頭にきたので、その紳士に「そんなこと言えば自分に返ってきますよ。地獄に堕ちますよ」と忠告したところ、紳士は「いいえ、あたしは死んだら宇宙にいくからいいんです」と涼しい顔です。こりゃ何を言っても駄目ですねえ(苦笑)。

新富町「ウオゼン」3種フライと刺身定食950円

 さて、好奇心が衰えていない、ということを最初に書いた通り、ここ4、5日、急に、各新聞紙上で「チャットGPT」なるものの話題が頻発するようになったので、私もチャレンジしてみることにしたのです。

 サインアップは簡単で1分ぐらいで出来たと思います。でも、よく分からず、誤解していて、このAI(人工知能)に話しかければ、何か応えてくれるのかと思ったら、ビクともしません(笑)。当然ですよね? チャットですから、文字を書かなきゃいけなかったわけです(笑)。

 英語版でしたが、ネットのマニュアルで日本語でも大丈夫だったので、「京都の有名な観光地を教えてください」と聞いたところ、しっかり、1,清水寺、2金閣寺、3、祇園…7,伏見稲荷大社と7カ所列挙してくれて、その名所の簡単な案内まで添えられていました。

 チャットGPTの話題の中で、このように、便利だというポジティブな半面、答えがフェイクだったり、飛んでもない間違いだったりする場合もあるというのです。もっとダークな面は、最近話題になっている、ルフィなる強盗殺人集団によるネットを使った犯罪がまかり通っているように、何かのきっかで、このチャットGPTに自分の住所や資産や銀行口座等を書き込んだりした個人情報が、ネットで拡散されて、それら犯罪集団にキャッチされ、とんでもないことになる、といった心配でした。

 チャットGPTは、AIがあらゆる分野からの情報や学説などを引用して答えてくれるというので、入学試験のカンニングや学術論文の「盗作」、さらには、本来クリエイティブなはずの作家の作品にも盗用される可能性もあります。

 既に、囲碁や将棋の世界では、人間はAIに完敗して太刀打ちできないと言われてますが、芸術作品までAIがつくってしまっては、つまらんなあ、と私なんかは思ってしまいます。

 以前もこのブログに書いたことがありますが、服選びにしても、今日のランチは何にしようか、にしてもAI任せにしてしまう人も昨今増えてきたようですが、これについても私は悲観的です。選択権なんて、人間の権利の最後の砦みたいなもんで、それを放棄して他人、じゃなかったAIに任せてしまってはお終いですよ。確かに選ぶことは少し苦労して悩みます。

 でも、悩むのが人間じゃありませんか。悩むことを放棄してはもう人間じゃないんじゃないですか?

おっとろしい未来地獄絵=「農業は国家なり」なのでは?

 大変ショッキングな番組を見てしまいました。昨年11月に放送されたものですが、見逃していて、たまたま見た再放送番組です。NHKスペシャル「混迷の世紀 第4回 世界フードショック 〜揺らぐ『食』の秩序〜」という番組です。

 ウクライナ戦争はもうすぐ24日で1年となりますが、その影響で世界中の穀物が高騰し、食糧危機に陥っているというドキュメンタリーです。世界第3位の経済大国日本だって、その蚊帳の外にいられるわけがありません。何しろ、日本の食料自給率はわずか38%(2019年、カロリーベース)で、食料の6割以上を輸入に頼っている現実があるからです。昨夏以来、パンやお菓子や冷凍食品など日本の物価が急激に高騰したのも、輸入に全面的に依存している小麦やトウモロコシや油脂などが高騰した影響なのです。

 それが、これまでのやり方のように、札束を積めば輸入できるならまだましな方で、これからは、トランプ流の「自国民ファースト」の時代になり、まず自国民に十分行き届かせた上で、その余った分をやっと輸出に回す。しかも、最も高額の金額を提示した外国だけに輸出する、といった現実を如実に活写していたのです。(昨年5月末から、インドは小麦、インドネシアはパーム油の輸出を禁止し、世界で取引される食料と飼料の17%が影響を受けたといいます=2023年2月23日付朝日新聞朝刊)

 番組では、日本の全農系の穀物会社の副社長が、世界中を回って穀物確保に苦悩するさまが描かれていました。当初は、全農系の穀物商社を米国に設置しておりましたが、米国の農家は、もっと高い売り手先を見込んで、なかなか日本に売りたがらなくなりました。ちなみに、穀物には、人間様が食べる大豆、小麦などだけでなく、家畜が食べる飼料や肥料なども含まれます。

 仕方がないので、副社長はカナダのアルバータ州の穀物会社に飛んでいきますが、そこで見せられたのは、空っぽの穀物倉庫です。その年は干ばつ等で生産量が少なかったせいもありますが、自国で消費されたか、もっと高額の売り手先に既に輸出してしまっていたのです。

 これでは仕方がない。北米が駄目なら、南米に行くしかない。ということで、副社長さんは、今度はブラジルに飛びます。そしたら、何んともまあ、中国最大の穀物・食品企業であるコフコ(中糧集団)という国有企業が既に全ブラジルの農家と大豆やトウモロコシなどの穀物を抑えていて、目下、1500万トンを輸出できる穀物コンビナートを港に建設中だったのです。中国は、ブラジルの穀物企業も買収してコフコの子会社化しておりました。「遅かりし由良助」です。(中国は、既にブラジルに8000億円も投資しているそうです。)

 驚いたことに、コフコは、ブラジルの農家に穀物の種子だけでなく、肥料まで提供し、荒野で作物が育たなかったアマゾンの奥地のマットグロッソ州の土地までも農地に変えていたという場面(地図だけですが)がチラッと出てきたのです。マットグロッソと聞いて、私は飛び上がるほど驚いてしまいました。何という偶然の一致! 目下、レヴィ=ストロース著「悲しき熱帯Ⅱ」(中公クラシックス)を読んでいたからです。この本では、著者が1930年代後半にマットグロッソ州の先住未開人ナンビクワラ族のもとを訪れ、その生態を事細かく描いていたのです。ナンビクワラ族は先住民の中でも最も極貧に近い生活を強いられています。裸で地面の上で寝起きして、作物があまり育たない荒野を移動しながら狩猟採集生活を細々と続けているのです。

 この本で描かれたナンビクワラ族の生態は今から80年以上昔の話ですから、現在、どうなったのか? まさか、絶滅したかもしれないなあ、と私は思いながら、マットグロッソ州とともに記憶の奥に留めていたのです。そして、現地に行かなければ確かめようがありませんが、ナンビクワラ族は今では数十人だけが生存して狩猟採集生活を続けているようで、この番組を見て、もしかしたら、彼らの一部が農家に転じていたかもしれないと勝手に思ったわけです。

 いずれにせよ、13億人の人口を抱える中国共産党の食料戦略は、感服するほど見事ですね。中国の食料自給率は約98%もあるというのに、です。番組では、このような戦略のことを「食料安全保障」という言葉を使っていました。安全保障は、何も軍事や防衛の話だけではなかったのです。人類の最終的、究極的問題は、最後は食料問題に行きつくことになります。過去4000年間、人類の戦争は食料問題がきっかけに起こったという学者もいました。(18世紀の仏革命も、マリー・アントワネットが「パンがなければケーキを食べればいい」という発言に民衆の革命精神に火が付いたという俗説を思い出しましたが、後世の作り話だという説もあります。)

 番組では、飼料が高騰して、日本の酪農家や養鶏農家の皆さんが「これ以上やっていけません」と絶望していて、私も危機が身近に迫っていることを感じました。これで話が終わってしまえば、身も蓋もないことになってしまいますが、番組のキャスターがフランスの経済学者ジャック・アタリ氏に処方箋を聞いていました。アタリ氏は、食料自給率を上げるためにも、日本はもっと農業を社会的にも報酬的にも魅力的にすべきだ、といった趣旨の発言をしておりました。

 ビスマルクは「鉄は国家なり」と言いましたが、今は「農業は国家なり」と言った方が正しいかもしれません。

【追記】

 2023年2月23日付朝日新聞朝刊1面では「餌が消え鶏が消えた 輸入頼るエジプト」という記事を掲載していました。新聞も負けていませんね(笑)。それによると、エジプトでは昨年10月、トウモロコシや大豆の配合飼料の価格が1.8倍も急騰し、多くの養鶏業者が廃業に追い込まれたといいます。エジプトは、世界最大の小麦輸入国で、昨年までその8割をロシアとウクライナから輸入してきたといいます。石油などエネルギー価格も高騰したことから、エジプトの外貨準備高は急減し、まさかですが、デフォルトの危機になりかねません。

 それなのに、日本のテレビは、相変わらず「大食い競争」だの「行列が出来る飲食店」などグルメ番組ばかりやっています。特別に危機感を煽る必要はありませんけど、大丈夫かなあ、と思ってしまいます。