「生娘をシャブ漬け戦略」は翻訳不可能?

 昨日は、牛丼チェーン「吉野家」の常務取締役が、東京・早稲田大学・日本橋キャンパスで行われた社会人向け講座での「生娘をシャブ漬け戦略」なる不適切発言が大きな話題を呼びました。問題発言した常務の伊東正明氏(49)は取締役を即刻解任され、吉野家の株も下がりました。河村泰貴社長の役員報酬も今後3カ月間、削減されるといいます。

 「田舎から出てきた右も左も分からない若い女の子を無垢、生娘なうちに牛丼中毒にする。男に高い飯をおごってもらえるようになれば絶対に食べない」といった趣旨の発言があったとされますから、あまりにもアナクロニズム、という以上に、傍若無人で女性と貧困層に対する蔑視発言であることは言うまでもありません。

 私の会社の同僚の娘さんは、英国人と結婚していますが、このニュースを聞いて、旦那さんから「どういう意味なの?」と(英語で)聞かれたそうです。生娘?シャブ漬け? 同僚の娘さんは、英語で何というのか思いつきません。そこで、Google翻訳で、「生娘」を検索したところ、出てきた英語が「Raw daughter」。まさに、生の娘です。英国人の旦那さんは目を白黒させました。

 今度は「シャブ漬け」です。こちらは「Pickled in shabu」。はあ~? シャブシャブの漬物かいな!? こりゃ、駄目だあ~。

銀座・中華「東生園」 肉野菜炒めランチ 900円

 問題になった「デジタル時代のマーケティング総合講座」は、全29回で受講料38万5000円だったとか。初日16日の発言だったそうで、問題が発覚したため、講座をキャンセルする人も出たようです。(その場合、主催者の早大は受講料は返金する用意があるという)取締役を解任された伊東氏は、米系生活用品大手のP&G出身で、辣腕のマーケッティング力が買われ、2018年に吉野家に転身しました。華麗なる経歴です。今回は、顧客を小馬鹿にする本音の戦略が、ポロリと漏れてしまったということなのでしょう。

 彼の発言を聞いていると、彼は自社製品(吉野家の牛丼)は貧乏臭くて食べられない、自分は食べないからね、と言っているようなものですからね。

 ちなみに、吉野家の牛丼、私は好きで食べていましたよ。

東京・銀座 ドイツ料理「ローマイヤー」日替わりランチ1100円

 でも、世界的な某清涼飲料水の会社の社長は自社製品は飲まないと聞いたことがあるし、世界的ファストフード店の会長も食べないと聞いたことがあります。直接、本人から聞いたわけではないので、信憑性は不確かですが、むべなるかな。

 ということは、カリスマ講師伊東氏は、単に会社戦略を正直に吐露しただけで、本人は嘘がつけない大変正直な人なのかもしれません。

 だって、人間ですからね。

 

宇宙論はアインシュタインの「相対性理論」が基礎だった

 渡部潤一・国立天文台副台長監修「図解 眠れなくなるほど面白い宇宙の話」(日本文芸社、2022年4月10日第14刷)を読了しました。確かに、眠れなくなるほど面白い! この本は薄くて(128ページ)、初心者向けに分かりやすく書いてくださっているところが良いです。

 今まで私は、誰が天下国家を取っただの、戦争で虐殺があっただの、人間どもの歴史ばかり気に掛けて勉強してきましたが、今年2月24日、ロシア軍によるウクライナ侵攻で少し醒めてきてしまいました。「歴史に学べ」と言われても、「どうせ人間どもの所業なんて、所詮…」といった気持ちなのです。

ムスカリ

 それより、小学生の頃に憧れていた宇宙や天文学の勉強をした方が遥かに健康的なような気がしてきました。何しろ、宇宙論の学問の進化は、私の子どもの頃(1960年代)とは別次元のようで、幾何学級数的に大飛躍、発展して、まるで様変わりです。天体望遠鏡も電磁波や赤外線等が使われるなど技術革新が進み、かつて分からなかったことや仮説が、次々と「証明」されたりしているのです。

 現代の宇宙論は、あのアインシュタインの相対性理論が基礎になっていることをこの本で知りました。相対性理論とは、物理学で原子爆弾等の製作の理論的支柱になったとばかり思っていたのですが、もっと、もっと壮大な理論で、宇宙生成の解明に役立ち、ブラックホールの存在の予言までしていたというのです。

 私は、「世紀の大天才」といえば、モーツァルトやベートーヴェン、もしくはレオナルド・ダビンチあたりだと思っていたのですが、人類でたった一人選べと言われれば、今はアインシュタインを選びますね。全く理解不能ではありますが(笑)。(正直、好き嫌いで言えば、モーツァルトの音楽の方が好きですが)

 この本によるとー。

 ①138億年前に「無」からビッグバンとインフレーション(「相転移」現象により莫大なエネルギーが放出)によって宇宙が誕生した。(何故、「無」からそんなことが起きたのか、さっぱり分からないようです)

②宇宙はダークエネルギーによって膨張し、60億年前から膨張は加速している(ビッグリップ説)。

③マルチバース(多重宇宙)理論によると、インフレーションによって最初に出来た宇宙(母宇宙)の中に、アインシュタインの「相対性理論」から導き出されるワームホールwormhole(異次元空間)が出来て、その中に子宇宙が出来、またその中に孫宇宙が出来…と宇宙の多重発生が起き、宇宙は無限に存在していく。(キリがないじゃない!これなら何処かに地球外生物が生息していそうなものですが)

④全宇宙に1000億個以上の銀河がある。地球がある太陽系は、距離10万光年の天の川銀河のほんの片隅にある。天の川銀河とは、太陽のような恒星が約2000億以上個集まって出来ている。(ほらね。銀河なるものが1000億個以上もあるんですよ!)

⑤銀河が数十個集まると「銀河群」、さらに100個から1000個の銀河が密集すると「銀河団」と呼ばれ、天の川銀河も含まれる「おとめ座超銀河団」は重力によって、毎秒300キロの速さで動いている。結果的に、太陽系も秒速200キロで移動している。(地球が自転、公転していても、人間は分からないのに)

⑥天の川銀河とアンドロメダ銀河は「ご近所さん」で、同じ局部銀河群を構成しているが、40億年後に両銀河は衝突して20億年かけて合体する。(そう言われても、もう地球の生物は絶滅しているのでは?)

⑦約46憶年前に太陽系と地球が出来たが、太陽の寿命は100億歳と考えられ、あと50億年で終末期に入る。太陽は「赤色巨星化」して膨れて表面積が広くなり、光熱量も増大。25億年後には地球の気温は100度以上に達し、地球上の全生物は絶滅してしまうと考えられる。(ほらほら、人類の歴史も消滅か?)

⑧太陽の30倍以上という超新星が、寿命が尽きて爆発した後に残った星の芯のようなものがブラックホール。自分自身の重力でどんどん収縮して、大きさが無限小の「点」になったもので、そこでは全ての物理法則が成り立たず、光も外に逃げ出すことができない。(アインシュタインが相対性理論で予言)

⑨宇宙は、銀河が長い糸状につながった骨組みのような「銀河フィラメント」とボイドvoidと呼ばれる「超空洞」が入り組んだ大規模な構造になっている。このような構造をつくったものがダークマター(暗黒物質)と言われる。これは質量を持ち、周囲に重力を及ぼすが目に見えない謎の物質。ダークマターは、重力で動き回っている銀河を引っ張って、飛び出さないような働きもしている。(そう言われても、見当がつかない。)

⑩宇宙全体の謎を解く方程式が、「アインシュタイン方程式」で、それは以下の式で表されます。

 G μν+ Λg μν=kT μν      ※ Λg μνとは斥力を表す宇宙項

 以上、 E=m c² に比べると少し手こずる方程式かもしれませんが、皆さんとってはお茶の子さいさいですね。 

Facebookやめますか?人間やめますか?

 私は、この《渓流斎日乗》ブログを独立したサイトとして立ち上げた際(2017年9月)、M氏の薦めで、初めてFacebookを始めました。それまでは、何となく胡散臭い感じがしてやらなかったのですが、「Facebookをやればアクセス数が増えますよ」とのM氏の御託宣で始めたわけです。

 でも、いまだにFacebookのカラクリについてはよく分かっていません。昨今、世界各国でプライバシー保護や独占禁止法などでFacebookに関する批判記事がかなり増え、それらを一生懸命に読んでも、実は何が悪いのかさっぱり分かっていませんでした。

 それは、Facebookはどんな会社なのか、その実体が分かっていなかったからです。

 もう10年以上昔になりますが、Facebookの創設者マーク・ザッカーバーグの半生をデビッド・フィンチャー監督が映画化した「ソーシャル・ネットワーク」(2011年)も観ましたが、やたらと、のべつまくなく喋りまくる名門ハーバード大学の学生(ザッカーバーグ)が、ネットで友人たちとの交流サイトを立ち上げる話だけは分かりましたが、肝心のビジネスモデルに関しては全く触れていないので、やはり、カラクリがサッパリ分かりませんでした。

 カラクリとは、ビジネスモデルのことであり、何を商品にして売って取引をして莫大な利益を上げているか、ということです。

 勿論、それらは「企業秘密」なので、社外の人間には全く明らかにされていません。先日、Facebookの元従業員で内部告発者のフランシス・ホーゲン氏が朝日新聞の独占インタビューに答えていました(4月16日付朝刊)。同氏は、Facebookが画面に表示する投稿の順番を決めるアルゴリズム(計算手順)を2018年に変更したため、過激な投稿が拡散されやすくなったこと。また、Facebookが利益を1、2%程度減らすだけで、75%の偽情報を減らすことができることなど、元社員でなければ分からない有益なことを明らかにしてくれました。が、平たく言えば、Facebookは何で稼いでいるのか、記事には一行も書いてくれていませんでした。つまり、利益を減らす、と言われても、どうやって減らすのか、インタビューアーはそこまで突っ込んで質問していないか、わざとなのかボカしています。

 Facebookは、大統領選挙にまで影響を与える巨大IT企業です。世界で29億人以上が利用しているといいます。我々の日常生活にも関わる大問題だとしたら、是非とも調べなければなりません。しかし、先程言ったように「企業機密」ですから、実態は分かりません。そこで、勝手に推理することにしました。

 まず、Facebookは、無料で仕入れた「個人情報」を顧客に売却していることは間違いないでしょう。「買う人」がいるから「売る人」がいるのです。個人情報を買う顧客とは、恐らく、大企業、調査会社や探偵社、宗教や政党などの団体組織あたりか。

 話は少し飛びますが、「贈収賄事件」というものは立件がかなり難しいそうですね。収賄した政治家がはっきり分かったとしても、大企業なり贈賄した側が口を割らない限り立件しづらい。それに証拠も出にくい。過日も、某マンモス私大の理事長が逮捕されましたが、贈収賄罪では難しいので、約5200万円を脱税したとする所得税法違反罪で起訴されました。

 同じように、Facebookの個人情報を「買う側」を調べ上げることは困難なことでしょう。でも、「買う側」とは、その個人情報を使って商品を販売したい企業か、世論を故意に操作して自分たちに有利に働かそうとする団体かもしくは国家であることは間違いないでしょう。個人情報を「売る側」と「買う側」はウィンウィン関係なので秘密のヴェールに包まれるわけです。

 Facebookは、世界29億人も利用しているといいますから、影響力は絶大です。いわゆるネットのプラットフォームになっていて、Facebookを通して、ニュースを見たり、個人的に商品を売買したり、人の噂やブログを見たりする国の人々が多いのです(意外にもヴェトナムなんかそうです)。それでいて、現地に相応の税金を支払っていないということで、各国は問題視しています。

 何しろ、個人情報は、馬鹿な大衆(失礼!)が、住所氏名年齢職業性別、独身、家族構成まで、せっせと貢いでくれているわけです。ハゲタカにとって、こんな無防備で御し易い獲物はいません。無駄が一切なく、ピンポイントで襲うことができるからです。となると、タダで仕入れた商品を高額で売りつける悪徳商法と変わりないということになります。例えてみれば、ゼロ金利で仕入れた原資を使って、高金利で貸し出すサラ金みたいなものでしょう。もしくは、河原で拾って来たタダの石を高値を付けて売っている商人みたいなものでしょう(つげ義春さんの漫画にもありましたね。こちらは売れずに悲惨な状態でしたけど)

 扨て、もう一度、前述した内部告発者のフランシス・ホーゲン氏の話に戻ります。「Facebookが画面に表示する投稿の順番を決めるアルゴリズムを変更したら過激な投稿が拡散されやすくなった」とはどういう意味なのでしょうか?これまた、詳細に理由を書いてくれないので、想像するしかありませんが、馬鹿な大衆は(これまた失礼!)過激な投稿を好み、「いいね」が多く付いた投稿を読みたがるので、それが相乗効果になるということが推理できます。過激な投稿とはデマでもフェイクでもお構いなしです。アルゴリズムを変更したというのは、そんなデマやフェイクを排除するフィルターを弱めた、ということなのでしょう。

 ということは、ホーゲン氏が暴露したもう一点、「Facebookが利益を1、2%程度減らすだけで、75%の偽情報を減らすことができる」というのは、Facebookはアクセス数を増やすために、偽情報を黙認している、という指摘になります。

 Facebookに注目が集まれば集まるほど、存在価値が高まり、ただで仕入れた個人情報の売却益も雪だるま式に増えるということを意味します。

 そんな悪徳商法に反感を持つようならFacebookを止めれば良いのです。しかし、大企業からブログで広告収入を得ている個人に至るまで、止めることは、痛し痒しの話です。

 ヒトは、他人から利用されているのに、自分が利用している、と思いたがる動物です。「馬鹿な大衆」とは自分ではないと思っているのです。自分は絶対に騙されないと確信している人間に限って、オレオレ詐欺などに騙されるというのに。

 以上、私の推理に過ぎませんが、まさに「Facebookやめますか?人間やめますか?」という話でした。

「新富町」散歩=「新富 煉瓦亭」から鉄砲洲稲荷神社まで

 テレビの影響力はおっとろしい(笑)。

 土曜日にテレビ東京系の番組「アド街ック天国」で「新富町」の特集をやっておりました。新富町は会社から近いので、「シメシメ、月曜日のランチはそこ、かしこにしよう」と心に決めて出掛けたところ、お目当ての寿司店は予想通り、長蛇の列(昼休みの時間に間に合わない!)。もう一軒、「こだわり」のフレンチ店に行ってみたら、いっぱいの人たちが食事をしているのが外から見えましたが、12時45分だというのに、もう「closed(営業終了)」の看板。「こりゃ駄目だあ」

鮨 ishijima 新富店

 仕方がないので、新富町ならよく行く「新富 煉瓦亭」で、Bランチ(ポークカツとクリームコロッケ)1150円を食しました。「仕方ない」なんて言っちゃ怒られますねえ(笑)。このお店も番組では、堂々の「第10位」にランクされていました。銀座の老舗店「煉瓦亭」から暖簾分けされた店だとは知っていましたが、やはり味は確かです。しかも、銀座店と比べると500円ぐらい安い。(ただし、銀座店の「元祖ポークカツレツ」は2000円也です。)

 カウンターの目の前にいるマスターがテレビに出ていたので、「テレビ、見ましたよ」と声を掛けましたが、「べらんめえ、こちとら江戸っ子だあ」とも言わず、無言で頷いただけでした。照れていたのかもしれません。

新富町・仏料理「ニコラ・シュヴロリエ」

 新富町は明治になって、守田勘弥が座頭を勤める歌舞伎の芝居小屋「新富座」が出来ました。関東大震災で焼失し、今は京橋税務署になっていて、署前には「新富座跡」の看板があります。ですから、もともとこの辺りは新富町と言っていたとばかり思っていたのですが、江戸時代は「大富町」と呼ばれ、武家地だったといいます。

 それが、明治になって築地の外国人居留者を目当てに新島原遊郭が置かれ、この新島原の「新」を取って、新富町になったといいます。

鉄砲洲稲荷神社(東京都中央区湊)

 いやいやそんなんで驚いていてはいけません。この辺りの鎮守様として鉄砲洲稲荷神社がありますが、創建は平安時代初期の841年にまで遡ることができるといいます。この辺りは埋め立てが進んだ土地であり、その度に社(やしろ)は移転され、室町時代は「八丁堀神社」と称されたことがあり、江戸時代あたりから「鉄砲洲稲荷神社」になったようです。

 歌川広重の浮世絵にも描かれています。名所江戸百景の「鉄砲洲稲荷橋湊神社」です。

 5月初めの「例大祭」では三年に一度、御神輿の渡御があり、東銀座の歌舞伎座辺りまでも回るようです。(歌舞伎座に分祠された鉄砲洲稲荷神社があるため)

入船「焼鳥 さくら家」

 新富町といえば、昼休みに、これまで新富座があった京橋税務署辺りまでしか足を延ばしたことがありませんでしたが、今回初めて、「入船」とか「湊」まで、奥深く足を踏み入れました。

 最近、新富町が雑誌などでも取り上げられ、ブームになっているようですが、その取り上げ方が「奥銀座」とか、「裏銀座」。番組に出てきた地元の人が「何?奥銀座だと?新富町は、新富町じゃねえか。誰が付けたんだ!冗談言っちゃいけねえ!」と吠えていました。

 どうやら、新富町を「奥銀座」と呼ぶのは避けた方がいいかもしれませんね(笑)。最近、個性のあるシャレたお店が結構増えてきましたし、かつての花街でしたから、高級料亭やミシュランの星付き寿司店も多いようです(地元の芸者さんがお一人だけ残っていらっしゃるとか)。

 番組では入船の「さくら家」(番組では第7位にランクイン)という老舗の焼き鳥屋さん(1917年創業)のことを「手頃な価格で美味しい」と紹介していましたので、行ってみましたが、ランチはなく、営業は夕方からでした。今晩も多分、テレビの影響で超満員になるのでしょうね。

 ほとぼりが醒めた頃に行きますかあ。

超人類プーチンとスマホ奴隷の私

きのうの続き)

  データ至上主義が進化し、電車の車掌も、医者も弁護士も新聞記者もいらなくなり、アルゴリズムやAIが取って代わっていくという事態は、SFの世界ではなく現実味を帯びてきたという話でした。

 例えば、精神科医。患者は生身の人間の医者に診断してもらうのではなく、人間味のない機械、つまり、アルゴリズムとAIを塔載したコンピューターに診断してもらった方を好む傾向が出てきたというのです。

 それはある程度理解できます。人間は時に間違います。それよりも、何十億人の患者のデータが保存され、それらの対処法や、いかなる薬物を投与したら良いかといった事例が網羅されていたら、人間より遥かに優秀です。しかも、患者としては、こっ恥ずかしい話を生身の人間に話さなくても済みます。(ただし、重症の場合は、人間のお医者さんを個人的にはお勧めします)

 昔だったら、告解を引き受けていた教会の神父や牧師が、精神科医の役目を果たしていました。その代わり、免罪符を発行してもらうための大金を納めなくてはなりませんでした(ルターは免罪符を糾弾しましたが)。

 ユヴァル・ノア・ハラリ著「ホモ・デウス」(河出書房新社)では、シンギュラリティSingularity(人工知能AIが人類の知能を超える転換点)がいつ頃になるか、までは書いていませんでしたが、人類の仕事がAIに奪われ、一部の特権階級のみが生き残り、大半は「不要階級」(私の造語)として淘汰されるという夢物語の実現性はゼロではない、と思われます。

  また、神や仏や霊魂を信じている日本人は、寺社(寺院と神社)にお布施や初穂料等を納めますが、もし、宗教が、人類が思いついた妄想で、下等庶民を支配するツールかイデオロギーに過ぎないとしたら、寺社の存在意義すらなくなっていきます。

 生化学者に言わせれば、種としての人類の存在意義も生きる意味も目的もないということですから、これからの大半の人類は、何のために生きるべきなのでしょうか? 

銀座「とんかつ 不二」ミックス定食(13時以降、限定15食)

 ところで、2022年2月24日のロシア軍によるウクライナ侵攻で、すっかり私の人生観、世界観が変わってしまったことはこのブログで何度も書いております。

 ウクライナ戦争というより、ウクライナ大虐殺が日々繰り返されている現状を見ると、とても、映画館や博物館に行く気になれません。人間の空想や妄想がつくったフィクションも駄目です。現実が虚構を超えてしまっているからです。

 ロシアのプーチン大統領が起こした蛮行は、19世紀的、20世紀的でアナクロニズムの極致かと思っていましたが、人間、いつになっても戦争をして殺戮と強姦と略奪を好む動物(けだもの)に過ぎず、もしかして、プーチンはその最先端の人類なのかもしれません。

 彼は、夜はゆっくり眠っていることでしょう。恐らく、良心の呵責も後悔も自責の念も全くないことでしょう。むしろ、正義の使者として自分の行為に正当性があり、アレキサンドロス大王やナポレオンと並ぶ英雄だと思っていることでしょう。80%のロシア国民の支持を得ていますから。

 それこそ、ハラリ氏が思い描くような「超人」の考え方があります。知性や記憶等の分野はアルゴリズムやAIに負けても、人間には、「最後の砦」として情念や意識や感情が残っています。しかし、変わった超人類ともなると、そんな情念や同情やら、惻隠の情やら、憐憫の情やら…難しい言葉を使いましたが、要するに他人に対して、気の毒だとか、可哀想だ、などと思う気持ちが欠けているというか、超越してしまっているのでしょう。

 プーチンは、強姦されたり、後ろ手に縛られて拷問されたりして虐殺されたウクライナ首都キーウ近郊のブチャの市民を気の毒だとか可哀想だとか思わないのでしょう。もし、そう思うのだとしたら、即座に戦争をやめるはずです。むしろ、虐殺したロシア軍兵士の勇気を讃えて勲章を授与し、夜は満足そうに寝入ることでしょう。プーチンとは、憐憫の情などの思考回路がなくなった21世紀最先端の人類だとみなせば、この訳の分からない戦争の本質を理解できます。(「虐殺はなかった。フェイクニュースだ」と嘘を付き続けるラブロフ外相やロシアのネベンジャ国連大使らも同罪で同様の思考回路なのでしょう。)

 独裁者としては、人間的感情などというものは無駄で邪魔なのでしょう。そう言えば、プーチンはスマホは持たない、という未確認情報があります。彼は、KGBで鍛えられて人間を信用せず、データも信じない、まさに最先端の超人ということになりますね。

 毎分毎秒、ニュースやメールをチェックしたり、アプリを更新したりして、「スマホ奴隷」(私の造語)になりさがった旧人類の私とはえらい違いです。

失望しても絶望はしない!=86年ぶりに新関脇優勝した若隆景と毛利元就3兄弟

 3月末は毎年忙しいです。

 3月末といえば年度末です。そう、大量の人事異動の季節でもあります。となると、私は、これでも、まだ仕事をしているので、霞ヶ関の人事異動情報が殺到して、とても忙しくなり、ブログなんか書いている暇がありません(笑)。

 おまけにお花見の季節です。ウイル・スミスに平手打ちされても、桜見だけは欠かせません。

 とはいえ、このブログは私の「安否確認」サイトにもなっているので、暫く間が空くと皆様に御心配をお掛けすることになりますので、本日はお茶を濁すことに致します。

 何と言っても、2月24日のロシア軍によるウクライナ侵攻で、すっかり人生観、世界観が変わってしまいました。皆さんも同じでしょう。プーチンの戦争は、19世紀的、帝国主義的、領土拡大主義です。人間なんて、誇大妄想だらけで、これっぽちも進歩していません。

 並行してユヴァル・ノア・ハラリ著「サピエンス全史」と「ホモ・デウス」の両書を読んでいましたから、余計にその思いを強くしました。自由も平等も人権も平和も神も宗教も、現生人類が考えた妄想か虚構、もしくは共同主観的ということになります。(ハラリ氏は「ホモ・デウス」の中で、「聖書」でさえ、「多くの虚構と神話と誤りに満ちた書物」=上巻215ページ=とまで言って糾弾しています。)

MInuma-tanbo 2022

 ところで、日曜日、大相撲の千秋楽で三つ巴になった優勝争いは、新関脇の若隆景が、大激戦を制して初優勝を遂げました。新関脇の優勝は、1場所11日制だった1936年5月場所のあの双葉山以来86年ぶりだということで、歴史的瞬間に立ち合ったような気分になりました。大袈裟ですけど、1936年といえば、「2.26事件」があった年ですからね。

 福島県出身の若隆景(27)は、祖父が元小結・若葉山。双葉山に弟子入り入門を許されて角界入りした力士でしたから何か縁を感じます。父が元幕下の若信夫。その息子たち、兄弟3人が、そろって角界入りを果たしました。長兄は幕下の若隆元(30)、次兄は前頭9枚目の若元春(28)、若隆景は三男になります。三世代かけて、そのDNAが受け継がれて、やっと幕内優勝を遂げたということになります。

 この3兄弟の四股名は、毛利元就の3兄弟から取ったといいます。つまり、あの「三本の矢」で有名な毛利隆元、吉川元春、小早川隆景です。戦国時代ファンとしてはたまらない、と言いますか、覚えやすいですね(笑)。

 ただ、小早川隆景の養子になった小早川秀秋(豊臣秀吉の正室ねねの甥)は、1600年の関ヶ原の戦いで、東軍の徳川家康方に寝返って、「裏切者」の汚名を歴史に残してしまいました。でも、大相撲とは全く関係ない話ですから、せめて若隆景はこれから大関、横綱と昇進して大活躍してもらいたいものです。

MInuma-tanbo 2022

 以上のことは相撲ファンにとっては常識の話でしたが、敢えて書くことにしました。知らない人は知らないでしょうから(笑)。

MInuma-tanbo2022

◇ブログを書くという恥ずべき行為

 実は、私は、ここ数日、ブログを書いて、世間の皆様に公にするような行為が浅ましいと、思うようになっておりました。

 しかし、侵略主義というパンドラの箱を開けてしまったプーチンの蛮行のおかげで、北の若大将がミサイルを狂ったように撃ち始め、大陸の皇帝は、数年以内に南の小さな島を侵略しようと目論んでいるようです。いずれも、「ロシアがやったんだから、我々がやってもいいじゃないか」といった論理で。

 そんな「プーチン後の世界」となり、刹那的でも人生を謳歌するしかない、と思い直しするようになりました。いつ何時、何が起きるか、これから先、分かったためしがありません。相撲でも観戦して、沢山の本を読んで、ブログでも書いて、ピアノでも弾いて、大いに人生を楽しむしかないじゃありませんか。

 人間に対して失望しても、絶望してはいけないというのが私のスタンスです。たとえ、人間は妄想の中で生きている動物だとしても、生きている限り、希望はあるはずですから。

生き延びるための楽観主義のすすめ=北条早雲、藤堂高虎にみる

 ロシアによるウクライナ軍事進攻は2週間以上経ってもいまだに続いています。平気で民間のアパートや病院、保育園などにもミサイルを撃ち込み、子どもや女性ら多くの社会的弱者が犠牲になっています。チェルノブイリ原発などまで占拠しています。狂気の沙汰です。

 まさに、民間人への殺戮であり、戦争犯罪です。それなのに、たった一人の誇大妄想の犯罪者を誰も止められません。 2022年2月24日を期して世界は一変しました。無力感に苛まれ、悲観的になってしまう人も多いと思います。

 そんな時こそ、逆に、あまり落ち込まない方がいいですね。

築地・寿司「きたろう」おまかせランチ握り1580円

 今の時代より遥かに生きるのが厳しく苛酷だった戦国時代に思いを馳せると、意外にも楽観主義者の方が長生きしています。その代表が北条早雲(1432~1519年)と藤堂高虎(1556~1630年)です。早雲は数えで88歳、高虎は75歳まで生きました。「人生50年」と言われた時代です。しかも、戦闘有事の乱世の時代です。当時としては、相当長生きだったことでしょう。

 小田原城主北条早雲は、後北条氏五代100年の礎を築いた人です。戦国時代で最初に下剋上で這いあがった武将とも言われます。謎の多い人物で、88歳ではなく、60代で亡くなったという説もあります。本人は生前、北条早雲と名乗ったことがなく、伊勢宗瑞、もしくは伊勢新九郎の署名が残っています。

 伊勢氏は室町幕府の足利将軍の申次衆(仲介役)を務める家柄で、早雲(と、します)も1483年、52歳で第九代将軍足利義尚(よしひさ)の申次衆を務めます。それが、守護の今川氏の後継者争いが起きたことから、急遽、遠江に下り、姉の北川殿(夫は八代今川義忠)が産んだ龍王丸(後の九代今川氏親、桶狭間の戦いで敗れた今川義元の父)を擁立し、暫定的に守護職に就いていた小鹿範満(のりみつ=今川義忠の従兄弟)を討ち取ります。小鹿範満の背後にいた扇ガ谷上杉家の家宰太田道灌が暗殺されていなくなった隙をついたといわれます。そっかあー、北条早雲と太田道灌は同時代人だったんですね。

 この功績で早雲は1487年、56歳にして興国寺城(静岡県沼津市)の城主となります。これから権謀術数を弄して、まずは93年(62歳)に堀越公方を追放して伊豆を支配し、95年には64歳にして、ついに小田原城主となります。そして、仕上げは1516年、85歳にして相模を平定して、平安末期から続く有力大名である三浦氏を追放するのです。

 早雲はまさに大器晩成だったんですね。長寿の秘訣は、修善寺温泉などでの温泉療法と朝4時に起き、夜8時には寝る規則正しい生活。そして粗食(梅干しを好んだ)のようです。歴史家の加来耕三氏は、早雲の来歴を見て、「何事も気楽に考え、ストレスを溜めない。健康に留意し、重々しく考えず、切羽詰まらない生き方が良かったのではないか」と評しておりました。

築地・天ぷら「つきじ天里」大海老天丼1280円

 もう一人の藤堂高虎も実に楽観主義者です。「築城の名人」として、宇和島城、今治城、伊賀上野城、津城(32万石)など20の城を手掛けたと言われるので、城好きの私としては、大ファンです。(是非とも行ってみたい!)

 しかし、高虎は、「世渡り上手」だの「薄情者」だのといった悪評に付きまとわされていました。主君を何度も何度も代えたからでした。でも、よく見ると、それは致し方なかった面があります。最初の主君浅井長政は織田信長に滅ぼされますし、300石の家臣として召し抱えてくれた羽柴秀長(秀吉の弟で、天下統一の立役者)は病死してしまいます。秀吉の家臣になりますが、関ヶ原の戦いでは東軍につきます。これは裏切り行為かもしまれませんが、徳川家康に懸けたということなのでしょう。(ただし、幕末の藤堂家は、恩顧ある徳川家を見限って、薩長主体の官軍に寝返り、「さすが高虎の子孫」と揶揄されたそうな)

 この功績で、藤堂高虎が家康から江戸に与えられた最初の屋敷の地名は、伊賀上野にちなんで上野と付けられたという説が有力です。つまり、東京・上野の本家本元は三重県の伊賀上野市ということになります。

 藤堂高虎は、近江の小土豪の次男として生まれましたから、家督は相続できず、自分の力で這いあがっていかなければなりません。嫌な仕事でも腐らず、最初は無給でも手柄を立てながらのし上がっていかなければなりません。高虎が築城の名人になれたのも、底辺から城づくりの基礎を学んでいったからだといいます。信長の安土城の築城にも参加し、この時、石垣づくりでは定評の石工集団「穴太衆」(あのうしゅう)との交流を深め、今後の城づくりには欠かせなくなりました。これも、嫌な仕事でも前向きに受け入れていったお蔭だったようです。

 これまた、歴史家の加来耕三氏は「藤堂高虎は、190センチ、113キロという体格に恵まれ、明るい性格でした。良い方へ良い方へと楽天的に考える。そうすることによって、物事が良い方向に向かう。高虎は、苦手なことをこなせば、自分の『伸びしろ』になると考えていたのではないか」と想像していました。

 北条早雲と藤堂高虎という歴史に残る人物の共通点は、やはり、楽観主義にあったようです。

※BS11「偉人・素顔の履歴書」の「第19回  主君を7度も変えて出世した戦国武将・藤堂高虎 編」と「第20回  戦国大名の先駆け・北条早雲 編」を参照しました。

※諸説ありますが、藤堂高虎の主君は、7人ではなく、「「浅井長政⇒阿閉貞征(あつじ・さだひろ=長政重臣)⇒磯野員昌(かずまさ=長政重臣)⇒織田信澄(信長の甥)⇒羽柴秀長(秀吉の弟)⇒秀保(秀長婿養子)⇒豊臣秀吉⇒秀頼⇒徳川家康⇒秀忠⇒家光」の11人が有力です。

政商の正体を知りたくなって=武田晴人著「財閥の時代」を読んでます

 一昨日の渓流斎ブログでは、「今、10冊以上の本を並行して読んでいます。」と、偉そうにぶちかましてみました。一番古いのが、もう数カ月かけてチビチビと読み進めているアダム・スミスの「国富論」上下巻(高哲男訳、講談社学術文庫)です。そして、一番新しいのが一昨日取り上げたユヴァル・ノア・ハラリの「サピエンス全史」上下巻(河出書房新社)です。その間に途中で摘まみ読みしている本が8冊ほどあるのですが、若くもないのに、よくもそんなことが出来るものかと思われることでしょう。

 その通りです。

 聖徳太子じゃありませんからね(苦笑)。途中で何のことが書かれていたか忘れ、目もシバシバでぼやけて、腰も肩も痛い。まさに、「少年老い易く学成り難し」です。でも、何を読んでも、辛い人生経験のお蔭で若い頃に分からなかったことが理解できるようになりました。

築地・海鮮料理「千里浜」

 特に40歳を過ぎた中年の頃から、会社員の私自身は、不遇の部署ばかりに塩漬けにされ、冷や飯ばかり食べさせられてきたので、虐げられた人々の苦悩がよく分かります(苦笑)。当時は悲憤慷慨して、ルサンチマンの塊になってしまいましたが、過ぎてしまえば、塩漬けも冷や飯も、なかなか「おつな味」だったと振り返ることができます。途中で何度もおさらばしたくなりましたが、「命あっての物種」です。何よりも、私を陥れた最低な人間たちは、気の毒にも、ことごとく早く亡くなりました。

 私の若い頃は、それはそれは純真でしたから、「転向」だの「裏切り」だのがとても許せませんでした。それだけでなく、「心変わり」も「日和見主義」も「勝馬に乗る」行為も許せませんでした。でも、沢山の本を読み、歴史上の人物を具に見ていけば、誰もが明日の行方を知ることができず、右往左往しながら、人を裏切ったり、出し抜いたり、洞ヶ峠を決め込んだりして生き残っていきます。

 もうこうなれば、「心変わり」も「日和見主義」も「優柔不断」も、現生人類(ホモ・サピエンス)の性(さが)だとしか言いようがありませんね。

 今はたった一人の戦争好きの暴君が世界中を引っ掻き回している時代です。

 若い頃から、人間とはそういうものなんだということを達観していれば、入院することもなく、あんなに苦悩まみれにならなかったものを、と今では後悔しています。

 本日は、武田晴人著「財閥の時代」(角川ソフィア文庫、2020年3月25日初版)を取り上げます。摘まみ読みしている本群の中の一冊です。この本は、国際経済ジャーナリストの友人から勧められましたが、長年疑問に思っていたことが少し氷解しました。

 長年の疑問とは、昭和初期に「5・15事件」や「2・26事件」などを起こした青年将校たちが、何故、あれほどまで財閥を敵視していたのか、ということでした。血盟団事件では、三井合名会社理事長の団琢磨(元福岡藩士、米MIT卒。日本工業倶楽部初代理事長、作曲家団伊玖磨の祖父)が暗殺されています。昭和初期は立憲政友会と立憲民政党の二大政党制で、政友会は三井と民政党は三菱と密接に結びついていたことはよく知られています。

 昭和4年(1929年)からの世界大恐慌の余波と東北地方での飢饉、政治家の腐敗という時代背景があり、一連の事件をきっかけに政党政治の終焉を迎え、軍事独裁国家に邁進する起因にもなりました。

 この本では、財閥の成り立ちについて、幕末(江戸時代)から筆を起こしてくれています。「政商」といえば、今ではTさんやMさんらのように、政官にべったりくっついていち早く情報をつかんで抜け駆けして甘い汁を吸う、狡猾で薄汚いイメージが強いのですが、もともとはそんな悪いイメージはありませんでした。むしろ、明治新政府は、欧米列強の植民地にならないように、「富国強兵」「殖産興業」政策を進め、そのためにも政商が必要で、逆に育成しようとさえしたというのです。

 明治の初め、人口の7~8割は農村に住み、農業に従事していました。鉱山開発や鉄道など工業がほとんどなく、基本的には、政府が農民から年貢・地租を取り、この税金を原資に近代化のための施策を行うことによって民間にお金が流れていくという、著者が造語した「年貢経済」システムでした。(P31)

 当時はほとんど年貢で苦しんでいる人ばかりなので、預金する余力はなく、都市にいる職人たちは「宵越しの金は持たない」気風なので、銀行に用がありません。結局、税金(地租)は商人たちが無利子で預かることができる土壌があったわけです。

 これがまさに「殖産興業」につながるわけですね。

築地・海鮮料理「千里浜」鯖塩焼き定食850円

 政商には、三井、鴻池、住友、小野組、島田組といった江戸時代以来の豪商と三菱(土佐の岩崎弥太郎)、古河(近江の古河市兵衛=小野組の丁稚奉公からの叩き上げ)、安田(富山の善次郎)、大倉(新発田の喜八郎)、浅野(総一郎)といった明治に入って勃興する新興財閥があります。現在残っている財閥もあれば、途中で淘汰された財閥もあります。

 淘汰された財閥の典型は、討幕派に援助してのし上がった小野組と島田組ですが、明治7年(1874年)、政府が清国との開戦に備えた軍事費調達で、官公預金の抵当を全額に増額したために破産に追い込まれます。その一方で、三井は三野村利左衛門が大蔵卿の大隈重信と掛け合って難局を切り抜けます。三井だけ助かった理由については諸説あるようです。

 元薩摩藩士で後に大阪商法会議所会頭まで務めた五代友厚は、染料業の失敗(この時、政府から借り受けた準備金約69万円の返納率はわずか8%!)と北海道開拓使払い下げ事件などで事業が頓挫し、五代家の事業は現在ほとんど残っていないといいます。 

勝鬨橋 隅田川

 この他にも、住友を救った番頭の広瀬宰平や、毛利家から莫大な借金をし続けた藤田組の話など、色んな話が出てきますが、話を簡略するために、私が一番驚いたことを書きます。この渓流斎ブログでは何度も取り上げておりますが、1881年に「明治14年の政変」が起きて、大隈重信が失脚します。(三菱財閥と縁が深かった大隈はその後、東京専門学校=早稲田大学を作ったり、立憲改進党を作ったりします。改進党は、憲政会となり、昭和初期の民政党の源流ですから、民政党と三菱との縁が続いたということなのでしょう。一方の三井は、伊藤博文らがつくった政友会とくっつくようになりますが、初期はどこの財閥も維新政府とべったりの関係です。)

 大隈失脚後の中枢政権を担ったのが、伊藤博文と井上馨です。その下で大蔵卿を務めた松方正義は日本銀行を設立し、この日本銀行だけを紙幣発行銀行とするのです。これは、西南戦争などで過剰に発行された政府紙幣や国立銀行券を回収し、紙幣価値を安定させようという目論見があったからでした。

 国立銀行の「国立」とは名ばかりで、全国に153行つくられましたが、例えば第一国立銀行は、三井と、小野組が出資して設立し、渋沢栄一が頭取を務めたように、れっきとした民間銀行です。それまで銀行券を発行する特権があったのに、その特権が剥奪されては倒産する国立銀行が多かったわけです。

 歴史は、政治上の人間の動きだけを見ていては何も分からないことを実感しました。経済的基盤や資金源、お金の流れといったことも重要です。ということで、私が今並行して読んでいる本群は、必然的に経済や社会科学関係の本も多くなったわけです。

ウクライナ Ukraine  意外な人物

 ロシアによるウクライナ侵略で、目下、2000人以上のウクライナ市民が犠牲になっている、とウクライナ当局が3月2日に発表しています。国際社会は、国際法違反のこの蛮行を黙って見過ごすわけにはいきません。単なる殺戮です。

 日本にとって、ウクライナは遠い異国の地ですが、意外と馴染み深い人がいらっしゃったりします。

 まず、昭和のスポーツ史に名を残す大相撲の横綱大鵬は、白系ロシア人の血を引く、と聞いたことがありましたが、大鵬の父親はウクライナ第2の都市ハリコフの出身だといいます。(ハリコフ市の州の政庁舎など中心部が爆撃され、多数の死傷者を出しているという情報も)

 個人的には、ウクライナといえば、ビートルズの「バック・イン・ザ USSR」という曲です。1968年に発表された「ホワイトアルバム」の最初に収録されたノリが良いロックで、この中で、「ウクライナの女の子には、マジ、悩殺されるよ。the Ukraine girls really knock me out.」とポールは唄っています。特に、ウクライナは美男美女が多いので、英国人でも一目置いていたのでしょう(笑)。

銀座・ベトナム料理「ニャーヴェトナム・プルミエ銀座 」バインミーランチ(バインミーサンドウィッチと海鮮フォー)1150円

 歴史的には、9世紀後半から栄えたキエフ公国がルーツになります。10世紀にウラジーミル大公がギリシャ正教を国教にしたことから、いわゆるロシア正教の総本山となりますが、13世紀から始まるモンゴル族の侵攻で壊滅します。その代わりに、辺境の小国に過ぎなかったモスクワ公国が台頭し、ウクライナに代わりロシア正教の総本山となり、宗教的国家的盟主となるわけです。

 もともと兄弟みたいな国でしたが、ソ連時代は、モスクワのクレムリン政権は、ウクライナを「豊かな穀倉地帯」として搾取しました。特にスターリンは、ウクライナ人を強制移住させて、後に「ホロドモール」と呼ばれる人工的に発生させた飢饉によって1932~33年、400万人以上を死亡させたと言われます。

 この「ウクライナ大飢饉」を映像化したのが、「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」(ポーランドのアグニェシカ・ホランド監督作品)という映画で、私も一昨年の夏に観て、渓流斎ブログ2020年8月15日付「『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』は★★★★★」で感想を書いております。

 「兄弟国」と言いながら、ロシア人はウクラナ人を見下しているのでしょうか? そうでなければ、今回の侵略もそうですが、こんな酷いことを出来ないはずです。

有名人に多いウクライナ系ユダヤ人

 また、19世紀から20世紀にかけて、「ポグロム」(破壊させる、という意味)と呼ばれた虐殺により、ウクライナに住む何万人とも言われるユダヤ人が殺害されました。

 となると、多くのユダヤ人がディアスポラ(移民)を余儀なくされます。米国では、100万人近いウクライナ系ユダヤ人が住んでいると言われます。作曲家・指揮者のレナード・バースンスタイン、映画監督のスティーブン・スピルバーグ、俳優のダスティン・ホフマン、カーク・ダグラス、マイケル・ダグラス親子、それに、意外にもシルベスター・スタローン(母の旧姓はラビノヴィッチ)や「ウエストサイド物語」「理由なき反抗」のナタリー・ウッド(本名ナタリア・ザカレンコ)もウクライナ系ユダヤ人だといいます。知らなかった。

 「へー」と思って、調べてみると色々出てきます(笑)。ウクライナ系ユダヤ人の中には、ヴァイオリニストのダヴィッド・オイストラフ、ピアニストのレオ・シロタとウラジーミル・ホロヴィッツ、作曲家のセルゲイ・プロコフィエフとクラシック音楽界の巨匠を輩出したほか、何と、メキシコで暗殺された革命家レフ・トロツキーもウクライナ系ユダヤ人だったというんですからね。ユダヤ人だったことは知っていましたが、ウクライナ系だったとは!

 何よりも、ウクライナのゼレンスキー大統領は、ユダヤ系ウクライナ人だといいます。

 日本では、ウクライナ系の有名人として、現在、モデル・タレントとしてテレビで活躍中の滝沢カレンの父親がウクライナ人(生まれる前に既に離婚)だという情報もあります。

 日本に住むウクライナ人は2020年12月現在、1876人(うち女性1404人)で、北方領土に住む全人口の4割程度がウクライナ人だと言われています。ソ連時代、ロシア人によって、ウクライナ人が強制移民させられたのではないか、と勘繰ってしまいますが、単なる個人的妄想で、公式データではありません。

銀座・蕎麦「笑笑庵」新ワカメ蕎麦980円

 本日、久しぶりに文春砲を購入しましたが、この中のトップ記事「プーチン『殺戮の履歴書』」を読みたかったからでした。1953年生まれのプーチンが、KGBに入ったのも、リヒャルト・ゾルゲに憧れていたからだったとは!…。彼の公式自叙伝では、父親は工場労働者で、20平方メートルのトイレもバスも共有だったネズミが出る狭いアパートで苦労して育った「立身出世」の人に描かれています。しかし、プーチンさん自身は認めていない非公式評伝では、父親は工場技師で、副業として秘密警察の工作員をやっていたので、普通の家庭には普及していなかったテレビを持つなどかなり裕福で、郊外に別荘まで持っていたといいます。

 自分の履歴書を嘘でかためて塗り替える有名人は古今東西、数多おりますが、プーチンさんもその一人ではないか、と疑わざるを得ません。

 ※ウクライナの歴史は、3月1日付読売新聞国際面の三浦清美早大教授の記事、「加藤哲郎ネチズンカレッジ」などを、ウクライナ系ユダヤ人に関しては、週刊文春に掲載された町山智浩氏の「言霊USA」などを参照しました。

【追記】2022.3.4

 反戦歌「風に吹かれて」を唄ったボブ・ディランもウクライナ系ユダヤ人でした。

ジョン・レノンが愛した洋食店に行って参りました=東京・上野の老舗「黒船亭」

 ロシアが2月24日にウクライナに侵略して、5日経ちます。民間人にもかなりの犠牲者が出たようですが、停戦交渉も「画に描いた餅」のように現実性がなく、膠着状態のようです。

 こんな蛮行は、冷戦時代にもなく、戦後初めてではないかと思っていたら、冷静に振り返ってみれば、ソ連時代の1956年に「ハンガリー動乱」と1968年に「プラハの春」がありました。いずれも、戦車で首都を制圧し、ブタペストでは数千人、プラハでは約400人の市民の死者を出しています。前者は、ソ連のフルシチョフ首相、後者はブレジネフ第一書記が最高責任者でしたが、プーチン大統領も彼らの顰に倣ったのでしょうか。

 ただ、信じられないような未確認情報が飛び交っています。「プーチン大統領は、パーキンソン病を患っており、正常な判断ができない」(英「サン」紙など)のだと。プーチン大統領は、ベラルーシのルカシェンコ大統領と会談した際、彼の左手が痙攣しているようで、椅子の後部を左手で必死に抑えているビデオが流れ、確かに不自然さを誰でも感じてしまう映像でした。

 ロシアによるウクライナ侵略について、世界の多くの識者が「狂気の沙汰」と批判していますが、もし、そのまま文字通り、プーチン大統領が正常な判断が出来ない状態だとしたら、そんな人間が核のボタンを握っていることになり、夜も眠れないほど恐ろしくなりますね。

上野・洋食「黒船亭」ビーフシチュー・セット グラスワイン クロズリーデ・ピノ・ノワール950円

 さて、昨日の渓流斎ブログの「昭和の香りがする名店を紹介=森まゆみ著『昭和・東京・食べある記』」の中で、「上野の『黒船亭』には、いつか行くしかない」と書きましたが、昨晩、会社の帰りに途中下車して行って参りました。

 思い立ったが吉日。「このブログを書くため」にですから、御苦労さまのことです。どうせ、誰一人、褒めてくれないでしょうけどねえ(苦笑)。

上野・洋食「黒船亭」1979年8月 ジョン&ヨーコ ※お店の人に許可を得て撮影しております

 何としてでも行きたかったのは、偏に、尊崇するジョン・レノン様が行かれた店だったからでした。並ぶのが嫌なので、ネットで予約しましたが、結構空いていて、何と、私が予約して確保して頂いた席の壁に、ジョンとヨーコが訪問した時の記念写真が飾ってあったのです。

 撮影日は「1979年8月」とありましたから、ジョンが暗殺される1年4カ月前のことでした。老けて見えますが、当時38歳です。

 天下のジョン・レノンなんだから、カラーで撮ってくれよお、と突っ込みたくなりましたが、こんなに当たり前にカラー写真が普及したのは、せめて、80年代以降だったことでしょう。私の学生時代は1970年代でしたから、白黒写真が多いです。

上野・洋食「黒船亭」ビーフシチュー・セット5220円

 何を注文しようかと思いましたが、電車の中で考えていた通り、ビーフシチューにしました。コース料理もありましたが、それほど空腹でもなかったので、サラダとパンとコーヒーの付いたセットにしました。

 このセットで5220円ですから、あのプーチンさんの全盛期のように、正常な判断が出来る状態でしたら、こういう高級料理店に足を踏み入れることはありませんでした(笑)。

 ついでに、仏産クロズリーデ・ピノ・ノワールのグラスワインを頼んだら、驚くほどドデカイ、ワイングラスを持ってきてくれ、「どんだけ注いでくれるんかいなあ」と愉しみにしていたら、全体の8分の1程度、ちょこっと、注いでくれただけでした。これで950円。

 締めて、6170円でした。

上野・洋食「黒船亭」

 ビーフシチューは、シチューが少しだけで、ほとんどビーフでした。4~5時間もグツグツ煮込むようです。味付けは抜群。大抵しょっぱくなるんですが、塩加減を抑えている感じでした。こんな高くてうまいもん、ジョンとヨーコは毎日喰っていたんだろうなあ、と羨ましくなりました。

 「ビーフは4~5時間煮込む」というのは、実は、隣りのテーブルの老夫婦も同じビーフシチューを注文していて、彼らの会話が耳に入ってきたのでした。お二人とも85歳は超えているような感じで、旦那さんの方はかなり衰弱していて奥さんには我が儘放題に振舞っていました。でも、何となく、この近くに住み、不動産からの莫大な不労所得がありそうな富裕層で、通い慣れた常連客といった感じでした。

 何故なら、店の奥から、若手のシェフがわざわざ二人のテーブルの側に出てきて、「いつも有難う御座います」と最敬礼して会話しておりましたから。