コロナ禍どさくさ紛れの種苗法案は今国会断念だけでなく廃案にするべき

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  新型コロナのおかげで、重要なニュースが報道されなかったり、隠されてしまっていることが危惧されます。何と言っても、ジャーナリズムの基本は、「何が報道されたか」というより、「何が報道されなかったのか」の方が需要だからです。

 そんな目立たない記事の中で、ほとんどの日本人が気付かなかった記事があります。今月5月19日に今国会での成立が見送られることになった「種苗法改正案」です。この法案廃止の急先鋒の一人と言われている元農林水産相で弁護士の山田正彦氏によると、もしこの法案が成立すると、農家は、登録品種の自家増殖(採種)が一律禁止となり、違反すると10年以下の懲役1000万円以下の罰金が科せられ、農家は毎年、高いお金を出して、モンサント(現バイエル)など外資のグローバル種子企業から種を買わざるを得なくなるというのです。しかも、それらの種子だと遺伝子組み換えやゲノム改良品種に頼らざるを得なくなる恐れがあるというのです。

 「これから大変なことが今の国会で決められようとしています。」(山田正彦オフィシャルブログ・2020年2月14日)

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 これについて、京都大学大学院教授の藤井聡氏や、どういうわけか女優の柴咲コウさんまでが賛同といいますか、論争に加わっていました。特に、柴咲さんは「新型コロナの水面下で、『種苗法』改正が行われようとしています。自家採取禁止。このままでは日本の農家さんが窮地に立たされてしまいます。これは他人事ではありません。自分たちの食卓に直結することです」(4月30日)などとSNSで積極的に発言されていましたが、どうやら今では削除されているようです。

 どうも芸能人が政治的発言をすると、日本では多くの人が匿名を使って叩く傾向があります。

 種苗法が改正されると、モンサント(現バイエル)など外資の多国籍種子企業が儲かるということに対して、「グローバル種子会社はモンサントだけでなく、日本のサカタのタネなどもあるので、山田氏の主張にはその視点に欠けている」といった批判もあります。

 それでも、私自身は、山口県の地方紙、長周新聞がコロナ禍のさなかに種苗法改定案が国会審議入りへ 農家の自家採種禁止で揺らぐ食料安保」(5月14日付)で指摘したように、食料自給率がわずか37%という日本の食料事情を鑑みても、問題がある法案であり、廃案にしなければならないと思っています。

 なお、種苗法改正法案については、農林水産省のホームページに掲載されています。

確かな情報を見極める感性を多くの人と協調していきたい=新型コロナ禍で

 緊急事態宣言が25日にも全国で解除されようとしているのに、私の自宅には、いまだに一律給付金10万円もアベノマスクも届きません。安倍内閣の支持率が急降下するはずです。23日の毎日新聞の世論調査では、安倍内閣の支持率が27%と「危険水域」の30%を切りました。末期的です。

 今回の新型コロナウイルス禍は、全世界で、大量の失業者を生み、貧富の格差拡大にさらに拍車をかけることになりました。

 私は現在、かろうじて会社使用人という給与生活者を選択したお蔭で、今回ギリギリ路頭を彷徨うことなく生きていけています。会社を辞めたいと思ったことは100回ぐらいありますが(笑)、もしあの時、フリーランスの道を選んでいたら今ごろ大変だったろうなあ、と実感しています。例えば、15年ぐらい昔に通訳案内士の試験に合格し、フリーでやって行こうかと思ったら、幸か不幸か、はとバスなど既成の職場は既に古株様に独占され、潜り込む隙間もなく、15年前はそれほど外国人観光客も押し寄せることがなく需要も少なかったので、アルバイトならともかく、「職業」にできなかったので諦めたのでした。

 今でも、ある通訳団体に会費だけ払って参加していますが、会員メールでは、「持続化給付金」の話ばかりです。来日外国人が4月は昨年同月比99%以上減少したぐらいですから、通訳ガイドの仕事なんかあるわけありません。はっきり言って失業です。そこで、ある会員さんが、個人事業主として、持続化給付金を申請したら、給付まで最低2週間は覚悟していたのに、わずか10日で100万円振り込まれていた、というのです。大喜びです。

 一般市民への給付金10万円はまだなのに、へーと思いましたけんどね。

  今回のコロナ禍について、世界の識者の所見を知りたいと思い、色々と当たっています。3月末に日経に掲載された「サピエンス全史」で知られる歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏の「コロナ後の世界に警告 全体主義的監視か 市民の権利か」や4月に読売新聞に掲載された人類生態学者のジャレド・ダイアモンド氏の「危機を認める誠実さ必要」などもよかったですが、23日付朝日新聞に出ていた歴史家・人口学者のエマニュエル・トッド氏のインタビュー「『戦争』でなく『失敗』」もかなり含蓄があるものでした。

 トッド氏は「ソ連邦崩壊」を予言した学者として一躍有名になりましたが、哲学者サルトルの大親友ポール・ニザンの孫ですから、哲学的知性を受け継いでいます。(私も好きなニザンの「アデン アラビア」の冒頭「ぼくは二十歳だった。それがひとの一生でいちばん美しい年齢だなどとだれにも言わせまい」=師・篠田浩一郎先生訳=を学生時代に読んだ時、かなりショックを受けたことを今でも鮮明に覚えています)

 トッド氏のインタビューのお応えは、哲学者のようなかなり抽象的な言辞も出てくるので、私自身の誤読か、勝手な思い込みの解釈に過ぎないかもしれませんが、トッド氏は、過去に起きたペストやスペイン風邪などの疫病の流行と今回のコロナと比較するのはナンセンスだとまで言ってます。

 14世紀のペストの大流行では農奴が急減し、教会の権威が失墜し、中世から近代国家の礎ができるきっかけになりました。あのルネサンスも「ペスト後」の時代です。ペストは、歴史的大変革をもたらしたわけです。

 しかし、今回の新型コロナでは、新自由主義経済や金融グローバリズムでは人間の生命を守らないことを改めて認識できただけで、それは既に新型コロナが蔓延する前から分かったことで、大変革がもたらされたわけではない。しかも、コロナによる死者は高齢者に集中し、若者は比較的軽症だったため、社会構造を決定付ける人口動態に新しい変化をもたらすことはない(つまり、若者が大量に戦死する戦争とは比較にならない。だから第1次世界大戦は今でも語られるが、同時期のスペイン風邪は忘れ去られてしまった。スペイン風邪では全世界で数千万~1億人が亡くなり、戦死者より遥かに多かったにも関わらず…)。

 そして、犠牲者は医療に恵まれない貧困層が多く、富裕層は人口の少ない田舎の別荘に避難して感染から免れることができる(トッド氏もベストセラー作家ですから、パリを離れ、ブルターニュの別宅に避難しているとか)。医療システムをはじめ、社会保障や公衆衛生を脆弱にする政府の横暴を市民らが見て見ぬふりをしてきたツケが回ってきた。だから、新型コロナは、マクロン仏大統領が言うような「戦争」ではなく、「失敗」だ。それに、コロナ対策ではEUの存在感はなく、国ごとに事情が違うわけだから、ドイツ・メルケル首相が強烈なリーダーシップを執ったように国家単位で、国際協調をすれば良いだけだ。

 まあ、以上は私自身がトッド氏の話から了解したか、誤読したかの事項ですが、トッド氏が、今回の新型コロナと過去のペストやスペイン風邪と比較するのはナンセンスで、人口動態的にも一種の自然淘汰が激化されただけだという捉え方には新鮮な驚きがありました。私なんか、特に100年前のスペイン風邪の教訓から学ばなければならないと思っていましたからね。

 それでは、これから我々はどうしたらいいのか?

 まあ、私のような貧者は感染したら一発で終わりですから、罹らないように細心の注意を払うしかありませんね。お上に「気を緩めるな」と言われる前に、自分の身は自分で守るしかありません。マスク、うがい、手洗い、三密忌避しか、方法はありませんけど。

 緊急事態宣言が解除されても、恐らく、「第2波」「第3波」はやってくるでしょうから、覚悟しなければなりません。

 情報収集のアンテナは伸ばしますが、デマやガセネタや詐欺情報だけには気を付けたいと思っています。渓流斎ブログも、皆さまに何らかのお役に立てればと思っています。コメント大歓迎です。大いに間違いを指摘してもらい、多くの人と協調していきたいと思っています。(古い記事に関しては、その当時の時点の情報に基づいて書いただけで、後世から最新情報による御指摘は、心もとないですが…)

国家間の協調とは、個人のレベルで言えば、自律した人と人同士が助け合う、ということだと思います。

青年よ、検察庁を目指せ!

 青雲の志を抱く若者よ、検察庁を目指さないか?

 何しろ、賭博罪に当たる賭けマージャンをやっても、違法駐輪をやっても、高等検察庁の検事長になれば、逮捕されることなく、懲戒免職されることなく退職金も満額の7000万円、ばっちり貰えますからね。口入(くにゅう)と言っても分からないか、差配師、手配師、これも駄目?では、人材派遣会社なら分かる?まあ、要するに人買い人足回しあがりの政治屋と昵懇になって政界に顔を利かせれば、政府が保障してくれます。

 そりゃあ、検察庁に入るのは少し大変かもしれない。でも、東大法学部に入って、国家公務員総合職の試験に合格さえすれば何とかなります。1日16時間、いや、君だったら8時間も勉強すれば必ず合格できますよ。

 実は、勉強って、とっても楽しいものなんだよ。「実録 日本汚職史」(ちくま文庫)を書いた室伏哲郎先生もこう教えてくれます。

 三面記事を派手に賑わせる強盗、殺人、かっぱらい、あるいはつまみ食いなどという下層階級の犯罪は厳しく取り締まりを受けるが、中高所得層のホワイトカラー犯罪は厳格な摘発訴追を免れている ーいわゆる資本主義社会における階級司法の弊害である。

 でしょ?弊害じゃないんです。検察官になれば、やりたい放題なんです。賭けマージャンをしようが、違法駐輪しようが、起訴するのは貴方ですからね。どんどん、下層階級のチンピラやコソ泥は捕まえて点数を稼ぎましょう。勿論、エスタブリッシュメントの貴方は、貴方自身で不起訴にできます。

 もう一つ、楽しいお勉強。「東京地検特捜部」(角川文庫)を書いた山本祐司先生も、検察と政界の癒着を見事に暴いてくれてるではありませんか。君たちの曾祖父の世代かもしれませんが、1968年に発覚した汚職の「日通事件」のことです。

新橋の高級料亭「花蝶」

 この一連の事件の中で、「花蝶事件」というのがありました。これは、日通事件の渦中の1968年4月19日に、新橋の高級料亭「花蝶」で井本台吉・最高検検事総長と自民党の福田赳夫幹事長(後の首相)と、300万円の収賄容疑の自民党・池田正之輔衆院議員の3人が会食していた事件です。同年9月になって「赤旗」と「財界展望」が、料亭「花蝶」の領収書のコピーを添えてスクープしました。井本台吉検事総長は、池田代議士の逮捕には強硬に反対した人物でした。何か裏がありそうですが、後に「この会食は日通事件とは関係がない。検事総長に就任したときに池田氏が祝いの宴を開いてくれたので、そのお返しとして一席設けただけだ」と弁明しています。 「思想検事」だった井本検事総長と大蔵省出身の福田幹事長は、ともに群馬県出身で第一高等学校~東京帝国大学法学部の同級生という間柄でした。

 ね?こういう繋がりを歴史的事実として知ると、勉強ほど楽しいものはないでしょ?

 黒川検事長の賭けマージャンが発覚しなければ、黒川氏は7月にもトップの検事総長に上り詰め、そのお祝いに公職選挙法違反の疑いで今にも起訴されそうな自民党の河井克行・案里夫妻議員が、料亭「花蝶」で検事総長就任の祝宴を開いたら、さぞかし面白いことでしょうね。「桜」前夜祭での公職選挙法違反の疑いがある安倍晋三首相も参加するかもしれません。検事総長になった黒川氏は、もちろん、井本検事総長の顰みに倣って政治家の逮捕は強硬に反対していたことでしょう(接続法過去未来推量形)。

 あ、そうそう、退職金7000万円の話ですが、君たちが、高検検事長や検事総長になっているであろう40年後、50年後は3億円ぐらいになっているはずです。どうせ、庶民どもが汗水たらして働いて貢いだ税金ですからね。それに、退職しても、その後、天下りで引く手あまたです。ヤメ検弁護士になれば厖大なコンサルタント料金で、まだまだ荒稼ぎできます。ね?楽しく勉強しさえすればいいだけなんだもん。賭博をしたり、宝くじを当てようとしたりするより手堅いじゃない?

 青年よ、検察庁を目指せ!

【追記】

 過去に書いた記事と一部重複しています。それだけ、世の中は変わっていないし、頑なに変わらないということです。

コロナ禍でも繁盛している店があるとは驚き

 緊急事態宣言下の東京・銀座のアップルショップ

 今月、後期高齢者となった京都方面にお住まいの仙人先生から昨晩、電話がありました。

 「『週刊文春』買われたようですね。巻末のグラビアにラーメン店が載っていたでしょう。銀座のHという店も載ってます。貴方の会社からも近いので、覗いてみたら如何ですか。いつも本ばかり読んでいては身体に毒ですよ。世間の人はそんなに勉強していません。ブログを読んでる人もつまらないでしょう。たまには、グルメの話題をお書きになってはどうですか」と仰るのです。

 確かに、その週刊誌には、黒川・高検検事長の賭け麻雀のスクープ記事が載っていたので、昨日買いました。巻末のグラビアを見てみたら、「味玉中華そば」なるものが950円と載っていました。ラ、ラーメンで950円もするんですか?…。まあ、出版不況にも強い天下の文芸春秋(社は付かないんですよ)といえば、結構グルメ情報誌や単行本を出していて、重宝していました。今でも忘れられないのは、北千住の立ち呑み居酒屋「X」。立ち呑みながら、安価な値段で「料亭の懐石料理並みの味が楽しめる」というので、仙人先生と一緒に行ってみたら、結構並んでいて、やっとありつけたら、本当に旨かった。コスパもバッチリでした。

この写真を撮った30分後、整理券を求めて(?)結構人が並んでいました

 ラーメン950円は、正直、あんまし、気乗りしなかったのですが、今日の昼休み、早速行ってみましたよ。

 その前に、ネットで場所を確かめたら、「超人気店」とかで、いつもは長蛇の列でかなりの時間待たされる。でも、新型コロナの影響で、今は、整理券を配っている、とか何とかコメントが載っていました。

 嫌な予感がしました。昼の12時半過ぎに店先に到着したのですが、上の写真の通り、「お昼のスープが終了致しました」とかで、売り切れでした。実は、こういう並ぶような人気店は好きじゃないんですよね(笑)。しかも、この店の若い衆が、時折、外に出てきて、周囲を睥睨して、変なおじさんが写真を撮っていないかどうか監視していました。感じ悪い。仙人先生には申し訳ないんですが、多分、もう行かないと思います。

 でも、新型コロナ禍で、99%と言っていいくらいの飲食店が、閉店したり、自粛したり、中には倒産したりしているのに、この店に限って、そんな災禍は、ものかは!すぐ売り切れてしまうほど満員御礼です。恐らく、休業手当なんぞ必要ないことでしょう。

 こんな店もあるもんなんですね。私はアンチ人間なので、客が来なくて困っている馴染みのイタリア料理店に行きましたよ。

東京高検の黒川弘務検事長の賭け麻雀事件には唖然としました

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 まさに、どんでん返しの「おそ松くん」でしたね。緊急事態宣言下、「3密」状態での賭け麻雀疑惑を報じられた東京高検の黒川弘務検事長(63)事件。

 昨日、文春オンラインが報じて、大騒ぎになり、私も昨日、ネットで読みましたが、黒川検事長を東京都中央区の高級マンション前で6時間半も張って取材した記者とカメラマンの労をねぎらって、今朝、わざわざ週刊文春を買い、出勤電車の中で読んできました。やはり、ブンヤの取材と警察・公安の捜査の原点は「張り込み」ですよ。

 登場人物を、赤塚不二夫の六つ子の「おそ松くん」になぞらえば、「おそ松」は間違いなく、検事総長心待ちだった黒川高検検事長。「チョロ松」は、麻雀のショバを提供した産経新聞A記者。「一松」は、産経新聞A記者の先輩で司法クラブキャップのB記者。「カラ松」は、産経の牙城に乗り込んで諜報活動に勤しむために卓を囲んだ朝日新聞のC元記者。「十四松」は、自分の身の潔白のお墨付きを得るために黒川さんをどうしても検事総長にしたかった安倍首相。そして、「トド松」は、黒川検事長が賭け麻雀をしていることを週刊文春に密告した産経新聞関係者X-てなところでしょうか。

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 週刊文春によれば、ですが、おそ松・黒川検事長は、賭け麻雀の賭博罪のほか、産経新聞が呼んだハイヤーで深夜帰宅するなど便宜供与を受けた国家公務員倫理規程違反、そして、違法駐輪(写真付き!)の疑いがあるそうで、もうこれだけで、検察庁ナンバー2としての自覚もなく、アウトですね。本人は昨晩、官邸に辞意を申し出たそうですが、辞任じゃ済まされないでしょう。退職金を大幅に減額した懲戒解雇にすべきです。どうせ、本人は「ヤメ検」でお金には困らないでしょうから。

 あくまでも文春砲が書いていることですが、どうも黒川検事長は、かなりの賭博好きで、海外出張すれば「視察」と称してカジノに入り浸り、韓国で女を買った自慢話をしていたということですから、これでは、清廉潔白(であるべき)検察の世界ではなく、任侠の世界ですよ。それとも、両者は紙一重の世界なんでしょうか。あ、今、M氏からLINEがあり、「東京高検検事長にしてこの脇の甘さと人の良さは国民栄誉賞もの」だとか。キツー。特別諜報員M氏は、何と産経と朝日の記者の実名まで知っていましたが、私は同じ業界人としての仁義があるので、このブログには書きません(笑)。だって、文春に密告したトド松こと産経新聞関係者Xと同じになっちゃうでしょ?

  この事件は不可解なことが多いです。事件関係者を輩出した朝日新聞は、あっさり「お詫び」して謝っちゃいましたが、産経新聞は「取材に関することはお答えしない」という態度。賭博罪に当たる賭け麻雀が取材だとは凄い会社です。ただ、一番不思議なことは、麻雀のショバ提供者と同じ産経新聞のトド松Xが密告した理由です。でも、案外単純で、個人的な恨みかもしれません。それとも正義感なの? 世間では朝日と産経が天敵の関係だと思われていますが、現場の記者同士は仲が良いものです。イデオロギーも社論も全く関係ないし、同じ会社の人間より、記者クラブ等でつながった他社の記者との交流の方がはるかに濃厚になるものです。敵は本能寺にあり。天敵より身内の方が危険なのです。経験者が語ります(笑)。

 それより、「余人をもって代えがたい」と、黒川氏の定年延長を閣議決定までした十四松こと安倍首相の責任問題はどうなるんでしょうか。桜を見る会の前夜祭での政治資金規正法違反疑惑など検察庁マターを多く抱えている安倍首相のことですから、最後の防波堤が決壊してしまっては真っ青でしょう。また「僕ちゃん、もう辞める」と言い出しかねません。

【追記】

 日本の超エリートやエスタブリッシュメント(支配階級)というのは、庶民が想像もつかないとんでもないことを仕出かすことがあります。それは、世間知らずのお坊ちゃんだからでしょう。象牙の塔、霞が関の塔、永田町の塔に閉じこもって、雑巾がけなどしたことなく、若い頃からチヤホヤされ、苦労知らずなのです。貧困に喘ぐ庶民の心が分からないのです。

 戦前の軍部エリートもそうでした。純粋培養の超エリート教育で育てられ、大本営の中にいると、外の世界を知らずに、世間交渉もせずに過ごしてしまいます。仕方がない話です。

 最近では、自殺者が出たというのに、国会で忖度答弁を重ねて、財務省理財局長から国税庁長官に大出世した佐川宣寿さん(1957年生まれ、2018年辞職)、テレビ局の女性記者にセクハラ行為をしたとして辞任に追い込まれた日本の官僚のトップである財務省事務次官だった福田淳一さん(1959年生まれ)らの例があります。

 こういう超エリートが、今の国を動かしているのかと思うと、暗澹たる思いに駆られます。

新型コロナのおかげで「情報貧困社会」に

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昨日の昼休み(ということはしっかり都心に命懸けで出勤しておりまする)、ある店舗に入る際に制止させられ、まずアルコール液で消毒するよう言われ、続いて、額にレーザー光線のようなものを当てられました。

 「ハハハア、よくテレビで見る例の体温計かな」と、初体験だったので、ワクワクしてしまいました(笑)。それで、何か言ってくれるのかと思ったら、何も言ってくれないので、お姐さんに「何度でしたか?」と確かめると、「35.7でした」との答え。今の人は「35度7分」と言えんかいなあ、と思いつつ、「えっ!?35度?」と我ながら吃驚してしまいました。自分の平温は36度5分ぐらいだと思っていたからです。ま、機械もいい加減かもしれませんが、いずれにせよ、熱がなくてよかった、と一安心。この御時勢ですからね。

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 ということで、昨日は、目下、世界で最も注目されているサイト、ジョンズ・ホプキンス大学の「世界の新型コロナウイルス感染マップ」を久しぶりに眺めていたら、刻一刻と感染者が増加しているので、怖くなりました。怖いもの見たさで、見続けていたら、一昨日まで感染者が140万人台だった米国の感染者が目の前で、あっという間に、150万人台の大台を突破。ちなみに、今日20日午前(日本時間)の時点で、米国の感染者は153万人になろうとしてます。このままでは、米国の死者も10万人を超えることでしょう。

 ニュースでは、ブラジルのボルソナロ大統領による強権的な経済優先の放任主義で、感染が急拡大して世界第3位(27万人以上)になったとか、フランスでの新型コロナによる死者が最も多いのは、貧困層が特に多いパリ北部近郊のセーヌ・サン・ドニ県だとか暗い話ばかりです。

 メディアも大衆も暗いネガティブ情報ばかり目を向けがちです。もっと明るい話はないもんですかね?

 例えば、先ほどのジョンズ・ホプキンス大学のマップによると、本日の時点で、ベトナムとカンボジアとラオスでは、新型コロナウイルスによる死者はゼロなのです。感染者は、それぞれ、324人、122人、19人といるものの、一人の死者も出していないのです。何が原因なのでしょうか? 一党独裁政権による強権的な封鎖が奏功したのではないか、という識者の意見もありますが、それだけじゃなさそうです。何しろ、同じ東南アジア諸国(ASEAN)では、インドネシア1221人、フィリピン837人、マレーシア114人、タイ56人、そしてシンガポールは22人の死者を出しています。ASEANの中では開発国と言われているCLV(カンボジア、ラオス、ベトナム)の「成功事例」を知りたいものです。

 そう言えば、北朝鮮は、死者どころか、感染者さえいないことになっていますが、世界中の人が信じていないのが可哀そうです。北朝鮮の成功例も知りたいものです。

 まあ、この御時勢では、記者や特派員が街に出て、「生の声」を拾うのも難しいでしょう。日本のテレビでは、コメンテーターと称する人たちが、現場を全く知らないのに、家に閉じこもって、したり顔で自分の意見を主張してばかり。これじゃあ、井戸端会議か居酒屋談義と何ら変わりやせん!(だから見ません)

 新型コロナのおかげで、「情報貧困社会」になったということでしょう。

責任回避は日本の伝統芸能なのか?

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 新型コロナウイルスの感染対策を医学的見地から政府に助言する「専門家会議」の議事録が作られていない、そして、今後も作る予定はない、という話を先日、ラジオで聴いて吃驚しました。また、官僚による安倍首相に対する忖度なんですかねえ?

 首都圏では東京新聞が5月14日付の朝刊で報道していましたが、他の大手御用新聞は沈黙状態です。私のように、お金がないので普段は御用新聞1紙しか読んでいない輩は、ラジオを聴かなければ、この不都合な真実を知らずに終わっていたところでした。

 専門家会議運営の庶務を担当しているのは内閣官房の職員らしいのですが、まあ、大した官僚さまだこと。とはいえ、安倍政権はモリカケ問題に象徴されるように、公文書を改ざんしたり、偽造したり、破棄したり、あるものをなかったことにしたりして、17世紀の政治思想家ジョン・ロックが吃驚するほど「暴政」をやってくれてますね。

 議事録を作成しない理由として、内閣官房は「自由闊達な議論をしてもらうため」と苦しい弁解をしていますが、これで納得する国民がいるとでも思っているのでしょうかねえ。それとも、霞が関の偉い官僚の皆様も為政者たちも、国民なんぞ、「生かさぬように死なさぬように」しておけばいいだけで、あとは知ったこたあない。文句言うのは1000年早い、とでも思っているのかしら。

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 それにしても、日本人は、どうも「専門家」となると、襟と姿勢を正して、仰ぎ見るように御託宣を拝聴するという傾向があります。でも、ひねくれ者の私なんか、専門家の発言でも少しは疑ったりします(特に新型コロナウイルスは未知の世界ですから、対処法にしても、これが絶対に正しいといったことはありえないのです)。それに、何かあれば、テレビでは専門家会議を代表して副座長である尾身茂・地域医療機能推進機構理事長ばかり出てきて、座長である脇田隆字・国立感染症研究所長が何で出て来ないのか不思議でした。やはり「自由闊達な発言」公開に差し障りでもあるんでしょうか。

 公文書をつくらない、ということは歴史をつくらない、ということであり、当事者たちは責任は取りたくないという、ことになります。あまりにも日本的な態度です。

 昨晩、感染者がいまだに出ていない岩手県にお住まいの宮澤先生から電話があり、そんなことを話していたら、宮澤先生は「所詮、庶民は騙されるのが大好きなんですよ。国際機関と聞いただけで、誰もがひれ伏して、有難がっていますが、あんな胡散臭いものはないんですよ。庶民の目の玉が飛び出るほどの高給取りです。WHOの事務局長だって、『中国寄り』と批判されてますが、やり方が露骨だからです。世界でも稀に見る手法で感染者を抑えることに成功した台湾を総会から排除したのも、あからさまな中国への御機嫌伺いです。人相悪いでしょ?あの人。もらった顔してますよ」と、とても私なんかブログでは書けないことをズバズバ言うのです。

 あっ!この責任回避の仕方は、我ながら、見事な日本の伝統芸でした!

検察庁法改正で「暴政」を見てみたい

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フランス語で「自爆テロ」のことを Attentat-kamikaze と言うんだそうです。kamikazeとは勿論、「神風」のこと、特攻隊のことです。欧米人は日本語を取り入れる際、karoshi(過労死)だとかhentaiだとか、あまりいい言葉を採用したがりませんね。嫌な性格だなあ…(苦笑)。

 付け焼き刃の知識で言えば、神風特攻隊は、大西瀧治郎少将(終戦時自決)らの発案によるものですが、東京帝大の平泉澄教授の「皇国史観」と筧克彦教授の「神ながらの道」思想により、天皇は現人神であり、御国のために散華することは臣民の務めであるということを尋常小学校の時から教育させられ、それがニッポン男子の誉れだと賛美されました。私自身、歴史を勉強する際、いつも、自分がその時代に生まれていたらどんな行動をするのか想像しますが、もし、戦時下の若者だったら特攻隊に志願していたんじゃないかなと思っています。

 聞いた話ですが、私の父親は大学受験に失敗して、18歳で陸軍に志願して一兵卒となりました。所沢の航空少年隊に配属されましたが、幸か不幸か、先天的色覚障害だったため、パイロットになれず、整備兵に回され、戦地に向かう航空機を見送っていたそうです。もし、父親がパイロットになっていたら、当然ながら、自分はこの世に存在していなかったろうなあ、と機会あるごとに考えたりしています。

さて、今、検察庁法改正案を安倍政権が今国会で強行採決しようとして、国民的関心を呼んでいます。野党は「このコロナ禍の最中、まるで火事場泥棒だ」と猛反発し、芸能人の皆様までツイッターで「#検察庁法改正案に抗議します」と投稿し、470万件以上のツイートに発展しました。

 中でも「身内」の元検事総長松尾邦弘氏までもが15日に記者会見して定年延長を目論む検察庁法改正案に検事OB連名で反対を表明し、17世紀の政治思想家ジョン・ロックまで持ち出して、「ロックは、その著書『政治二論』(岩波文庫)の中で『法が終わるところ、暴政が始まる』と警告している。心すべき言葉である」と主張していました。流石ですね。箴言です。

 私自身は、今年1月31日の閣議で、東京高検の黒川弘務検事長の定年を8月7日まで半年間延長する決定をした翌日からこのブログで反対表明をしてきましたが、少し気持ちが変わってきました。どうせ「多勢に無勢」ですから、民主主義の原理で自民党と公明党による強行採決で法案は通ってしまうことでしょう。これで、安倍政権に近いと言われる黒川氏が検察庁トップの検事総長になるわけですから、ジョン・ロックの言うところの「暴政」なるものが見られるわけです。

 安倍首相のからむ森友・加計学園問題や、「桜を見る会」の前夜の後援会員優遇パーティーが公職選挙法と政治資金規正法の違反容疑ではないかという弁護士有志による刑事告発も、そして今、公選法違反に問われている河井克行・前法相と妻の案里参院議員の件も、63歳の黒川氏が検事総長になれば、本当に鶴の一声で、捜査が中止されたり、不起訴になったりして、有耶無耶になたりするのか、「暴政」を見届けたくなりました。

 とはいえ、安倍一強独裁政権になってから、特定秘密保護法、共謀罪法、カジノ法などを成立させるなど既に暴政は始まっているというのに、どこのメディアも政治評論家も誰もそんなこと指摘しません。御用記者、御雇評論家ばかりです。

 いえいえ、安倍首相は、我々が選挙で選んだ合法、合憲の誇るべき首相です。-確かにそうかもしれません。ただし、小選挙区制度のお蔭で、候補者は40%の票を獲得すれば、60%は死票になってくれて当選しますからね。つまり、国民の半分以下の支持でも十分、国家の最高権力者に登り詰めることができるのです。

 18日付読売新聞1面トップは、「検察庁法案 見送り検討 今国会 世論反発に配慮」です。読売は機関紙と言われるほど安倍首相ご愛読の新聞ですから、情報は確かなんでしょう。なあんだ、「暴政」が見られないのか、と思いきや、ほとぼりが醒めた秋の臨時国会で採決するようです。

 やれやれ。

庶民の歴史は「歴史」にならない

昭和30年代、あるメーカーの「コロナ」という名前の車が人気で、街中でよく見かけました。今の御時世、この名前での販売はとても難しいでしょうが、当時はコロナにネガティブな意味は全くありませんでした。むしろ、高度経済成長の象徴的な良い響きがあり、「サニー」や「カローラ」といった大衆車よりちょっと上のレベルといった感じでした。

 それが、昭和40年代になると、「コロナ マークⅡ」という名称になりバージョンアップされて、スポーティーな中級車になりました。今では知っている人は少ないでしょうが、スマイリー小原という踊りながら楽団を指揮するタレントさんがCMに出ていたことを思い出します。平成近くになると、コロナの名前が取れて、単に「マークⅡ」だけとなり、グレードアップした高級車になり、今でも続いていると思います。

 私は、何か不思議な符丁の一致を感じました。今世界中を災禍に陥れている新型コロナは、夏場に一旦、収束すると言われますが、また今秋から冬にかけて「第2波」がやって来ると言われています。初期の「武漢ウイルス」から突然ではなく、当然変異して、より強力になって、殺傷力の強いウイルスに変身すると言う専門家もいます。疫病と自動車の話とは全く関係ないのですが、何で、コロナがマークⅡに変身したのか、まるで未来を予言したかのような奇妙な符牒の適合を、私自身、無理やり感じてしまったわけです(笑)。恐らくそんなことを発見した人は私一人だけだと思いますが(爆笑)。

 さて、ここ1カ月間は、立花隆著「天皇と東大」(文春文庫・全4巻)のことばかり書いて来ました。このブログを愛読して頂いている横浜にお住まいのMさんから「圧倒的分量で流石でした。私も読んでみるつもりです」との感想をメールで頂きました。私自身は、このブログを暗中模索で書いていますから、このような反応があると本当に嬉しく感じます。

 あまりよく知らなかったのですが、Mさんの御尊父の父親(つまり彼にとっての祖父)は、終戦近くに予備役ながら召集され、小笠原の母島で戦死されたといいます。そのため、御尊父は母子家庭となり、大変な貧困の中で育つことになりますが、その母親も17歳の時に亡くし、本人は自殺すら考えましたが、周囲に助けられ、借金をしてようやく高校を卒業したといいます。当時は同じような境遇の家庭が多かったことでしょう。私の両親の父親、つまり私にとっての祖父は、2人とも戦死ではなく40歳そこそこで病死したため、両親2人とも10代で母子家庭になり、相当苦労して戦後の混乱期を切り抜けて、貧しいながら家庭をつくり我々子どもたちを大学に行かせるなど一生懸命に育ててくれました。

 「天皇と東大」は、エスタブリッシュメント階級の歴史が書かれ、読み応えがありましたが、我々のような庶民はいくら苦労しても「歴史」にもなりません。学校で教える歴史は、いつも特権階級や勝者から見た歴史だからです。

 話は変わって、先日から山岸良二監修「戦況図鑑 古代争乱」(サンエイ新書)を読んでいますが、古代は、本当に驚くほど多くの争乱があったことが分かります。その争乱の大半は「皇位継承」にからむクーデタ(未遂も)と内乱です。九州筑紫の豪族が新羅と結託して大和朝廷転覆を図った古代史最大の反乱である527年の「磐井の乱」、蘇我氏が物部氏を排斥して政権を掌握した587年の「丁未の変」(物部氏は、娘を大王に嫁がせて外戚を誇った例は見られないそうで意外でした)、中大兄皇子と中臣鎌足らによる蘇我氏を打倒したクーデタ、645年の「乙巳の変」(1970年代までに学校教育を受けた世代は、「大化の改新」としか習わず、私自身はこの名称は10年ぐらい前に初めて知りました!)、天智天皇の後継を巡る叔父と甥による骨肉争いである「壬申の乱」、奈良時代になると「長屋王の変」「藤原広嗣の乱」「橘奈良麻呂の変」「藤原仲麻呂(恵美押勝)の乱」、平安時代になると「伊予親王謀反事件」「平城太上天皇の変」(従来は「薬子の変」と習いましたが、最近は名称が変わったそうです。歴史は刷新して学んでいかないと駄目ですね)「承和の変」「応天門の変」(応天門とは平安京の朝堂院に入る門だったんですね。図解で初めて確認しました=笑)…と本当にキリがないのでこの辺でやめておきます。

 古代史関係の本を読んでいて、心地良いというか、面白いというか、興味深いのは、古代人の名前です。現代人のキラキラ・ネームも吃驚です。有名な蘇我馬子とか入鹿なども随分変わった珍しい名前ですが、人口に膾炙し過ぎています。663年の有名な「白村江の戦い」(中国や韓国の史料では「白村江」ではなく「白江」なので、そのうち「白江の戦い」に変更されるかもしれません。何で日本で白村江と言い続けてきたのか理由があるのでしょうから、不思議)に出陣した将軍の名前が残っています。

 第1陣の前将軍大花下(だいけげ)・阿曇比羅夫(あずみのひらふ)、小花下・河辺百枝(かわべのももえ)、大山下(だいさんげ)・狭井檳榔(さいのあじまさ)。第2陣の前将軍・上毛野稚子(かみつけののわかこ)、間人大蓋(はしひとのおおふた)、中将軍・巨勢神前訳語(こせのかむさきのおさ)、三輪根麻呂(みわのねまろ)、後将軍・阿倍比羅夫、大宅鎌柄(おおやけのかまつら)…。「あじまさ」とか「かまつら」とか、戦国武将にも劣らない強そうな名前じゃありませんか(笑)。

 この本を読むと、丁未の変(587年)で物部氏が没落し、乙巳の変(645年)で蘇我氏が没落し、伊予親王謀反事件(807年)で藤原南家が没落し、承和の変(842年)で藤原北家(良房)の政権が台頭し、応天門の変(866年)で大伴氏と紀氏といった古代豪族が没落して、藤原北家が独占状態となり、阿衡の紛議(887~8年)で橘氏、昌泰の変(901年)菅原氏が排斥される、といった具合で、なるほど、「権力闘争」というものは、こういう流れがあったのかということが整理されていて分かりました。

ブラームス交響曲第1番から原節子まで

 上の写真は、すべてブラームスの「交響曲第1番」です。カラヤン、バースタインからトスカニーニ、ブルーノ・ワルター、小澤征爾まであります。クラシックの中で、この曲だけは特別に好きなのです。「あ、この音とは違う」「この音じゃない」と、一度、FM放送か何かで聴いたことがある「失われた音を求めて」色んな指揮者の演奏CDを集めたらこんなになりましたが、まだまだあることでしょう。

 ブラームスの交響曲第1番ハ短調は、皆さまご案内の通り、恩師シューマンの「マンフレッド序曲」を聴いて感激した1855年に着手し、21年もの長きの歳月を経て、1876年にやっと完成した作品です。22歳の若者が43歳の中年になっていました(ブラームスは64歳で死去)。何でこの曲が好きなのかは、最初の重苦しいテーマが、ゆっくりとだんだんと高まっていき、最終楽章では、ついに「生の躍動 elan vital」を感じさせてくれるからです。我慢して最後まで聴いた価値があるわけです(笑)。クラシックを聴いて、あまり涙を流したりしませんが、この曲とワーグナーの「マインスタージンガー序曲」だけは別格ですね。感情が高まりカタルシスを感じます。

 ということで、私は、ブラームスの1番を聴きながら、ブログを書いています。昨日なんかも書くのに4時間は掛かりましたからね。4時間も、5時間もかけて書いたブログにあまり反応がないのに、20分~30分でさっと書いたブログに注目されたりすると、「あれま」とガクっときます。だって、人間なんだもん。

 この1カ月ばかしは、立花隆著「天皇と東大」(文春文庫)ばかり読み、昨日でやっと完読したことを書きましたが、その間、浮気して月刊文藝春秋も読んでいました。

 さすがに日本で最も売れている雑誌とあって目の付け所が大衆誘導的です。私も洗脳されて買ってしまいました。ざっと主な記事を読みましたが、どうせ忘れてしまうので、備忘録をー。

・巻頭のノーベル賞学者山中伸弥教授と橋下弁護士(呑み友達らしい)との対談「ウイルス vs 日本人」ー。山中教授の仮説では、日本人は欧米人より感染による死者が少ないことから、日本人には「ファクターX」なるものがあるのではないか。それは、日本人は、マスクや入浴など清潔意識が高く、ハグや握手、大声で話すことが欧米人より少ないこと、そしてBCGワクチンにも相関関係あるかもしれないこと等々…。あくまでも仮説なので、楽観視できませんが。

・奥村康・順天堂大医学部免疫学特任教授の「最後は『集団免疫』しかない」は、刺激的、絶望的な論説ではありましたが、最も説得力がありました。直視しなければならないことは、ウイルスは消えたり無くなったりしないということです。共生するしかない。でも、発症しても軽症で済む人や症状が出ない人も大勢いるので、彼らに免疫ができ、免疫を持つ人が一定の割合を占めた時にウイルスの流行は収束に向かう、という話です。そして、軽症で済ますには、個人の免疫力を高めることが大事で、それには(1)不規則な生活(2)激しい運動(3)精神的ストレスーを避けることが最も肝心だといいます。やはり、一番参考になりました。

・村中璃子医師「WHOはなぜ中国の味方なのか」-WHOのテドロス事務局長が「中国寄り」との批判が多いが、テドロス氏はエジプトの保健相、外務相を経て、WHO事務局長選挙で、中国によるプッシュで当選した人。エチオピアは2019年、国全体の直接投資額の60%も中国に頼っている。だから、テドロスさんは中国寄りになっているーという話。あれ?この話は新聞でも報道されていて皆知っている話。村中医師はWHOで勤務した経験があるらしいので、もっと奥深い裏情報を知りたかったので残念。

・峯村健司・朝日新聞編集委員「CIAと武漢病毒研究所の暗躍」は、米中コロナ戦争の内幕を描いたルポ。でも、何で、朝日新聞を蛇蝎の如く嫌って、機会があれば貶めようとしている文藝春秋が朝日の記者やOB(船橋洋一)を採用するのかしら。文春記者でもこれぐらい書けるはず。もしかして、朝日と文春は、表向き「敵対関係」を装っておきながら、テーブルの下ではちゃっかり握手して相互利益を図っているのかしら?

・芝山幹郎×石井妙子対談「『原節子』生誕100年 映画ベスト10」-。1963年に42歳で引退して本名の會田昌江に戻り、2015年に95歳で亡くなった大女優を振り返っています(52年間も隠遁していたとは!)。この人、テレビも舞台にも出ず、映画一筋の女優だったんですね。原節子といえば、小津安二郎の「東京物語」や「麦秋」が代表作かと思っていました(小津の「晩春」「麦秋」「東京物語」で演じる原節子の役は全て紀子なので「紀子三部作」という)が、戦時下では「ハワイ・マレー沖海戦」(1942年、山本嘉次郎)、「熱風」(1943年、山本薩夫)など結構出ていたんですね。小生、観ていません。戦後直後の黒澤明の「わが青春に悔なし」(1946年)は観てますが、これはあの京大・滝川事件をモデルにしたものでした。何とタイムリーな(笑)。私は(世界の溝口健二から「成瀬君のシャシンはうまいことはうまいが、キン〇〇が有りませんね」と批判された)成瀬巳喜男のファンですから「めし」(1951年)と「山の音」(1954年)は是非観たい。いつか、神保町に行って、成瀬巳喜男のDVDが売っていたら購入するつもりです。

 ※文中敬称略あり。