沖縄問題に関しては無力感しか味わえず=金平茂紀著「新・ワジワジー通信」を読んで

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 沖縄にお住まいの上里さんから、また沢山の資料や本が送られてきました。この中に、金平茂紀著「新・ワジワジー通信」(沖縄タイムス社、2019年4月25日初版)がありました。「『沖縄問題』を忘れないでほしい」とのメッセージなのでしょう。(上里さんにはいつもお世話になっております。いつぞや送って頂いたビートルズのロゴの入ったコーヒーカップは今でも愛用しています)

 金平氏は、TBSのキャスターで、ジャーナリストの最高の名誉でもあるボーン・上田賞を受賞した人であることは皆さん御存知の通り。でも、これほど長く、そして深く「沖縄問題」に関わってきたことを知る人は少ないかもしれません。同書は、毎月1回のペースで地元紙の沖縄タイムスに連載したコラム(2015年1月~18年10月終了)をまとめたものです。

 この間に、普天間基地の辺野古移設問題、大阪府警機動隊員によるデモ参加者に対する「土人」発言、墜落事故が多発し騒音の激しいオスプレイ配備など次々と沖縄県民に問題が降りかかります。2015年6月には、作家百田尚樹氏の「沖縄2紙(琉球新報と沖縄タイムスのこと)はつぶさないといけない」発言もありました(本人の弁明では、あれはオフレコ発言で、真意は、自分と歴史認識が違う沖縄2紙は誰も読者が読まなくなり、つぶれてほしい、という趣旨だったらしい。けれど、自分の意にそぐわないから言論封鎖するというのは、同じ言論人として恥ずかしくないだろうか?)

 金平氏は怒ります。沖縄県民に対する差別意識をー。そして、怒ります。国土面積が全国の0.6%しかない沖縄県内に、全国の70%の在日米軍専用施設・区域が集中していることを-。また、芥川賞作家目取真俊氏が、大浦湾でカヌーに乗って、辺野古への新基地建設を反対する海上抗議活動を行っていた際、待ち構えたかのような不当拘束も「不条理」だと嘆きます。NHKの報道姿勢も批判します。

 まさに枚挙にいとまがない不条理の連続に、読んでいて胃酸が逆流してくるような感じで、正直、読み進めていくことが嫌になってきます。つい数年前に起きたことなので、沖縄県民は忘れはしないでしょうが、本土のほとんどの人々は忘れてしまっていることでしょう。(2018年8月に翁長雄志県知事が病気で急逝したことも)

 2004年8月に米海兵隊のヘリコプターが沖縄国際大学に墜落する事故が起きた際、米軍は事故現場を一方的に封鎖し、沖縄の警察、消防、行政、大学、それに報道関係者を一切、締め出す挙に出ます。その光景を見た沖縄在住の米国人の政治学者ダグラス・ラミス氏がこうつぶやきます(2015年公開の映画「沖縄 うりずんの雨」より)

 「18歳か19歳のガキンチョたちが、海兵隊の軍服を着て、自分たちより年上の報道陣に向かって大声で命令し、勝手に外国の領土に入り込んで人に命令する権威を持っているかのように振る舞っている。…子どもだ。すごい光景だ。同じことを日本の本土やドイツ、イタリア、英国でもやるかどうか分からない。…やらないと思う。でも、沖縄なら確実にやる」

 この後、筆者の金平氏は「世界史的に言うと、これは『植民地』でよく見られた光景だ」と補足します。沖縄もそして日本も米国の植民地ではないか、と言っているわけです。

 日本の外務省の公式ホームページに「日米地位協定Q&A」なるサイトがあり、問5として「在日米軍の基地はアメリカの領土で治外法権なのですか」というのがあります。その答えが以下の通りです。

 米軍の施設・区域は、日本の領域であり、日本政府が米国に対しその使用を許しているものですので、アメリカの領域ではありません。したがって、米軍の施設・区域内でも日本の法令は適用されています。その結果、例えば米軍施設・区域内で日本の業者が建設工事等を行う場合には、国内法に基づいた届出・許可等が必要となります。

 へー、そうだったんですか。でも、沖縄国際大学は、米軍の施設ではなく、日本の私立大学ですから、民間の施設です。つまり、民間の施設でさえ、日本の警察、消防、行政、大学関係者が事故現場に入れず、米軍の海兵隊によって締め出されることが当然の如く行われたのですよ。

 本土の片隅に棲息している日本人の一人として、沖縄問題について関心を持ち、声を挙げることしかできませんが、結局、大きな権力の前では無力感を味わうことしかできません。嗚呼…

代わりはナンボでもいます

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 渡部健(わたなべ・けん)です。よく間違われますが、今、話題沸騰中の渡部建(わたべ・けん)さんではありません。健康の健です。

 コロナ禍の中、世間の皆様には久しぶりに明るい話題を提供してしまいました。特に、15歳も年下の超美人女優と結婚したことから、もてない男たちからの羨望、やっかみ、誹謗中傷、糾弾は、相当なものがありましたが、今回のスキャンダルで、彼らからの皮肉を込めた嘲笑と拍手喝采にはかなり堪えました。

 カイロ大学ではなく、神奈川大学首席卒業を自称していますからね。インテリの皆様からは付け焼き刃のグルメぶりを見抜かれて、それが、単なる、若いお姉ちゃんとお付き合いする方便に過ぎないことまで見破られてしまいました。今回、コロナ禍なのにお持ち帰りまでしまったことで、馬脚をあらわしてしまったわけです。不徳の致すところであり、大変猛省しております。

 それにしても、日本人というのは、他人の不幸は蜜の味で、スキャンダルが大好きですね。おかげで、テレビもラジオもレギュラー番組からの降板を余儀なくされてしまいました。芸能界は弱肉強食の世界ですから、これをチャンスに次々とライバルが後釜を狙っています。一部、相方の「小島だよ」君が代演してくれるのは有難いのですが、他の奴が起用されるのは我慢できません。

 しかし、ディレクターさんからは「余人に代えがたい」なんて言われ続けていましたが、嘘偽りだったんですね。代わりのものなんか、他にもナンボでもいます。あれだけテレビに出まくっていたみのもんたさんの代わりに、今、有吉弘行さんと坂上忍さんが後釜に居座っております。広域任侠団体との交際が発覚して芸能界引退に追い込まれた島田紳助さんの後名跡には、今田耕司さんが襲名し、見事にお株を奪っております。皆、あんな人気者だったみのさんや紳助さんのことを忘れてしまっています。

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 そう、大変失礼ながら、代わりはナンボでもおらすのです。実際、「余人に代えがたい」と閣議決定までして定年延長した東京高検の黒川弘務検事長(当時)でさえ、賭け麻雀という偉業を成し遂げて破門(本当は辞任)に追い込まれましたが、林眞琴・名古屋高検検事長(62)が後任として就任しました。林検事長は7月にも検事総長のポストが予想されています。

 さてはさて、御しやすい黒川高検検事長の検事総長就任を隠密に図りながら、本人の「オウンゴール」で果たせなかった安倍晋三首相は「任命責任を痛感している」「さまざまな批判を国民から頂いている。真摯に反省し、職責を全うしたい」などと、口先ばかりの弁解に終始しています。

 でも、さすがに、今回は国民の堪忍袋の緒が切れたようです。後手後手のコロナ対策、時代遅れのアベノマスク、申請してもなかなか降りない一律10万円と、持続化給付金のよく分からないトンネル法人への業務委託問題等々、問題が山積しながら、来週17日で国会を閉じようとしています。毎日新聞の調査では、安倍内閣支持率が、危険水域の30%を切りました。そうなると、代わりはナンボでもいるのです。石破茂さん、岸田文雄さん辺りが意欲を示しておられるようですが、ちょっとインパクトに欠けますね。毎日マスクを代えて、局長や副知事会見で済ましていいような些末な発表事項までテレビに出まくって、露出度を高めて再選を狙っている「カイロ大学首席卒業」の小池百合子都知事の手口を見習ったらいいのではないかと思います。

アベノマスク、やっと届きました

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このブログはほぼ毎日更新していますが、たまに更新できない日もあります。正直、どうしても書けなかったり、一応、書いてはみるのですが、自分で満足できることが書けずにボツにしてしまったりするからです。

 今日もそんな日になると思って帰宅したら、何と、自宅にアベノマスクが届いていました。

 東京の高級住宅街にお住まいの皆様は、既に、もう1カ月近く前に届いた、と漏れ聞いていたのですが、こちらはやっとですよ。首都圏とはいえ、通勤には1時間20分も掛かる「陸の孤島」みたいな所に住んでいますから、致し方ありませんけれど。

 でも、もう初夏ですからね。こんな小さな暑苦しいマスク、掛ける気にもなりません。こんなマスク、テレビに映る為政者で掛けているのは1人ぐらいじゃないでしょうか。勿論、転売禁止ですから、どこかに仕舞っておいて、この秋か初冬の「第2波」に備えるしかありませんね。

 そうそう、「10万円の一律給付金」もやっと申請書が届き、昨日8日(月)郵送申請しました。しかし、ニュースで言ってましたが、実際に給付されるまで、早くて4日、だいたい16日間ぐらい掛かるというではありませんか。まあ、6月下旬まで振り込まれていなければ、裏の手を使いますか?(笑)。

 それにしても、何でこんな対応が遅いんでしょうかね。また、持続化給付金の支給業務も、経産省が「サービスデザイン推進協議会」とかいうトンネル会社みたいな一般社団法人に委託したりして、まだまだ実態は解明されていません。

 これでは安倍政権の支持率が軒並み下がるはずです。

入院中のGさんに贈る花の写真=名声求めず慎み深くあれよかし

躑躅

 私は、スマートフォンの「位置情報」はオフにしています。ウイルス警告アプリが「位置情報がオフになっています」と、何度も何度も警告してきますが、そのままにしています。位置情報はマップを使う際、重宝ですが、それ以外でいつでも「オン」にしている人の無防備ぶりは信じられません。

 それほど自分のプライバシーには敏感になっているのに、ブログにプライベートなことを書くことがあります。矛盾していますね(苦笑)。だって、ブログだもん(はかまみつお)。

 そこで、本日は個人的な話をー。

 5年前の私の入院中の際に大変お世話になった旧友のGさんに今日、久しぶりに連絡を取ったら、ご本人が先週から入院していたというので吃驚してしまいました。詳細は書けませんが、自宅で転倒したとかで足を骨折し、しばらく掛かるということでした。このご時勢ですから、家族との面会やお見舞いも叶わず、必要な物や荷物は、家族が病院の1階のロビーにまで運べるだけ。あとは看護師さんが病室に持って来てくれるそうです。

 新型コロナ禍のせいで、今はオチオチ、病気もケガもできませんね。

紫陽花

 そう言えば、会社の後輩の高齢の母親は養護施設にいて、もう何カ月も面会できないそうです。高齢者が感染すると重篤になるといいますからね。

 コロナは人を引き裂きます。

 新型コロナは、「濃厚接触」による感染が多いと言われているのに、東京の人たちは、わざわざ「3密」のホストクラブやキャバクラに行って、お金を払って、ウイルスに感染してきます。ご苦労様です。だって、人間なんだもん、ですか?

 私は、他人のプライバシーを業者に販売して商行為を展開しているフェイスブック(FB)は嫌いだ、といつも公言していますが、このブログを発信する手段として仕方なくFBを使っています。でも、そのFBのおかげで、卒業以来40年も会っていない学生時代の友人たちと少しずつ繋がっています。

 40年も経っていますから、若い人から見れば、ギリシャ・ローマ時代か、化石時代みたいなもんでしょうが、皆、それぞれ、山あり谷ありの人生だったようです。

 事業に失敗して破産した人。慢性病で仕事を辞めざるを得なかった人。大した出世もできないまま精神科に入院して人生を棒に振った人。離婚した人。愛する奥様に先立たれた人…。うーん、これでは、山がなくて、谷ばかりですね(苦笑)

 まあ、40年間もブランクがありますから、その間の事情について何も知らないのは当たり前です。でも、改めて知ると、それまで知らずにいたことが申し訳なく思ったりします。

 逆に言えば、昔だったら知らずに済んだのに、プライバシーを転売するFBのおかげで知ることができた、とも言えるかもしれません。キツイ皮肉ですか?

 私はこの40年、ずっとマスコミ業界の片隅で棲息してきたので、色んな有名人とお会いしたり、表に出ない裏の社会を見てきたりしました。でも、失礼ながら、有名人だからと言って、その人が一点の曇りもない人格者かと言えば、疑問符がつくことがあり、普通の人と変わらない所があります。よく有名な学者や作家や評論家に原稿を書いてもらいましたが、「えっ?この程度の人だったの?」と文章の拙さに驚いた経験もあります。

 こんなことを書いて、自分でも何を伝えたいのか分からなくなってきましたが(笑)、こうして私の周囲にいる近しい人たちが、世間では無名でも、色んな禍いに襲われながら、本当に一生懸命に生きていて、名声を求めず慎み深いということを伝えたかったのかもしれません。

 テレビでは、「リモート」になっても、タレントさんやコメンテーターさんたちが名声を求めて「出演」していますが、そこまでしてテレビに出て有名になりたいのかなあ、と思ってしまいます。有名になって、CMに出て、お金を稼ぐのが目的なのかもしれませんが、それなら、そういった商業主義には染まりたくない、と反発したくなります。そんな顔は見たくありません。共同正犯になりたくもない。

 今日はまとまりのない話になりましたが、入院しているGさんもこのブログの愛読者で、「この前の花の写真がよかった」というものですから、今日は散歩中に見かけた美しい花の写真を掲載するために、こんな個人的なブログを書いたようなものです。

 Gさん、お見舞いにも行けず、大変失礼致します。外出できないことでしょうから、せめて、綺麗な花の写真でも眺めて心を癒してください。(花の名前を知らずゴメンナサイ)

新型コロナウイルスの正体を知りたい人のための入門書

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 私は、生まれながらにして 根が真面目なもんですから、水谷哲也著「新型コロナウイルス 脅威を制する正しい知識」(東京化学同人、2020年5月19日初版)が今話題になっているという情報を察知し、早速購入し、読了しました。1964年生まれの水谷氏は北大で獣医学の博士号を取得し、現在、東京農工大付属国際家畜感染症防疫研究教育センター長。

 ネットで注文したら、プライムとか小賢しい割り増し料金を払っていないのに(A社じゃありませんよ)、何と翌日届き、2日ほどで読んでしまいました。

 本書は、素人にも分かりやすく、「新型コロナウイルス」とは何者なのか説明してくれます。巷では色々な情報が溢れすぎて、何を信じたらいいのか分からない状況ですが、筆者は、「正しく怖がる」ためにも、できるだけ正確な正しい知識を身に着けてもらいたい、と平易に書かれた啓蒙書として提供してくれます。

 平易とは言っても、nsp(non-structural protein=非耕造タンパク質)だの 、nsp12(ポリメラーゼ=複製タンパク質)だの、干渉現象だの専門用語がバシバシ出てきますが、それは致し方ないこと。最低限の知的武装手段として覚えるしかありません(笑)。

 読者を、一般や生徒、学生を想定して書かれ、ウイルスの変異や検査、ワクチン、治療薬について、などほとんど網羅されています。日々刻刻と状況が変化しているため、情報は刷新しなければならないので、本書だけでは古びてしまうという難点がありますが(ただし、水谷教授のネットでは日々情報が更新されているようです)ポイントはしっかり抑えています。(予防に関しては、マスクと手洗いとアルコール消毒と「3密」回避という地道な努力しかないようです。)

 ただ、ちょっと残念だったことは、これだけニュースで毎日報道されているPCR検査とは何なのか、それらの原理や仕組みについては専門的概念で事細かく詳述されているのに、そもそもPCRとは何の略なのかさえ説明がなかったことでした。自分で調べたら、PCRとは polymerase chain reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)の略で、性病や淋病などの検査にも使われていたらしいですね。

 国際ウイルス命名委員会によると、新型コロナウイルスの正確な名称は、SARS-CoV-2というそうです。SARS(サーズ=重症急性呼吸器症候群)は2002年に中国・広東省で初めて感染者が確認され、翌年にかけて猛威を振るった(感染者8098人、死者774人、致死率9.4%)コロナウイルス(Cov)のことで、このあと発生したMERS(マーズ=中東呼吸器症候群)でも、日本人の感染者が出なかったせいか、今では日本人には忘れられてしまったウイルスです。しかし、今回の新型コロナは、ニドウイルス目ーコロナウイルス科ーコロナウイルス亜科ーベータコロナウイルス属で、SARSと全く同じ「属」に属しているのです。ですから、SARSのことが分かれば、新型コロナの正体も治療法も予防もワクチンも分かるというわけで、日々、研究者たちは開発に努力しているわけです。そして、筆者の水谷氏は「感染源はコウモリで間違いありません」と断言しております。コウモリは、中国では高級食材として使われ、東南アジアやアフリカなどでも食べる習慣があるそうです。コウモリを捕獲したり、肉をさばいたり、市場で売られたりした際にウイルスに感染する機会があるというのです。

 ウイルスの歴史を遡ると、コロナウイルスの祖先は約1万年前に誕生したと言われますが、ストレスがあると口の周りにブツブツができるヘルペスウイルスは、約4億年前に誕生し、インフルエンザウイルスは約1億年前に誕生したといいます。46億年の地球の歴史の中で、ウイルスという生物は、我々、人類、霊長類より遥かに大先輩だったわけです(昆虫までウイルスに感染するとは!)。コロナウイルスが1万年前に発生したとしたら、紀元前8000年で、この頃、シュメール文明やクレタ文明が栄え、人類が野生動物を家畜化した時期です。野生動物との濃厚接触が感染に至らしめたことは間違いないことでしょう。

 水谷氏は「新型コロナが終息しても、何年か後に新たな感染症が必ず出現する」と強調しています。その通りでしょう。ウイルスは全て撲滅できないので、共存共生していくしかないのでしょう。

 新型コロナウイルスに関して、漠然とした不安を持っている人にとっては、敵の正体を知る上でも、本書は良い治療薬になるんじゃないかと思います。

廣済堂の筆頭株主に麻生グループ=そして「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」訪問記

築地本願寺

 「古典に学べ」「日本のルーツを求めて」…だなんて、相変わらず、随分暢気な寝言や、極楽ばかり言っておられる方がいらはりますなあー。

 昨晩、久しぶりに京都にお住まいの京洛先生から電話がありましたが、御歳を召されたのか、随分、皮肉っぽくなりました。「それ、ワイのことやないけ!」と思わず、突っ込みたくなりました(笑)。しかも、「人伝てに聞いた話ですが、渓流斎とやら、昔は、文藝評論、美術評論、音楽評論、歌舞伎評論等々で、ブイブイいわせていたらしいですが、今や、すっかり任侠評論家ですね」と断言される始末。

 確かに、その筋関係をネット検索すると、「アサヒ芸能」「週刊実話」に続き、《渓流斎日乗》なるものが上位にヒットし、「こんなこと書いた渓流斎って、一体何者なんだ!」と私自身も叫びたくなりました。

  それはさておき、京洛先生が電話で御教授してくださった「本題」は、麻生太郎副総理兼財務・金融相の一族企業である「株式会社麻生」が廣済堂の株式を買い占めて、20%の筆頭株主に躍り出たという話でした。

 廣済堂はかつては銀座にビルがありましたが、今の本社は芝浦にあるようです。グループ関連企業として、出版社や印刷会社、不動産会社などがあります。そして、意外と知られていないことは、葬祭・火葬事業を手掛ける「東京博善」を子会社に持っているため超優良企業だということです。東京博善は、東京人なら必ずお世話になる落合斎場、桐ヶ谷斎場、代々幡斎場など都内の主要斎場をほぼ寡占状態で直営しています。廣済堂は、政財界のフィクサーと言われた創業者の櫻井文雄氏が2004年に死去してからは、バブル期の清算で、ゴルフ場などを売却するなど経営縮小を余儀なくされましたが、麻生グループは資産価値として東京博善に目を付けたと言われています。

 知りませんでしたね。かつて、廣済堂は、芸能事務所も運営しており、その筋との関係が取り沙汰されたこともありましたが、今は、時代は変わって麻生グループですか…。そんな話をしたところ、京洛先生は「駄目ですね。本当に。今ごろ何を言ってるんですか。任侠評論家も情報不足ですね。だから、杉野さんから何も分かっていない、と言われるんですよ」と駄目押しをするのです。(杉野さんって誰?)

 悔しいので調べてみたら、この件に関しては、5月に文春や日刊ゲンダイで既に大きく報じられておりました。

 なあんだ、最近の話ではありませんか。

 さて、昨日は、よく実体が分からない持続化給付金の請負人「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」のことを書きました。乗りかかった船なので、この法人の東京・築地の事務所を見てきました。東京の銀座を中心に、日比谷、新橋、築地辺りは私の「シマ」というか、縄張りですからね(笑)。

 それは、築地本願寺にほど近い晴海通り沿いの雑居ビルにありました。1階にはペルシャ絨毯の店が入っていました。

「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」が入居しているビル

 何と言いますか、郵便受けにしても、とても何百万人もの人の事務を処理できる事務所とはとても見えず、人影もほとんどありませんでした。

 郵便受けに貼られた名称もおざなりで、貼られたテープもいい加減。こんな法人に政府は第2次補正予算から再度850億円も追加委託するらしいんですからね。

 監視カメラに追跡監視されながら、写真を撮ったので、もう私はブラックリストに掲載されたことでしょう。写真、勝手に使ったら駄目ですよ(笑)。

豊田真由子さんと竹中平蔵さん

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 2017年、衆院議員時代に、自分の秘書に対して「このハゲ~!」「違うだろ~っ!」などと暴言を吐いたり暴行をしたりしたことが週刊誌やテレビで報じられ、同年の衆院選で落選した豊田真由子さんが、いつの間にか笑顔でテレビのコメンテーターとして復活していました。髪型も化粧も変えて、物腰も口調も柔らかく丁寧になり、すっかり別人。吃驚しましたね。女性誌もスポーツ紙(サンスポ)も復活を大歓迎しています。日本人ですから3年間で禊が済んだということなんでしょうかねえ?

 でも、心に傷を負った年配の元男性秘書の方のトラウマは、いまだに消えていないことでしょう。彼女は、もう公人ではないので、とやかく言われる筋合いはないかもしれません。でも、起用するテレビ局(民放各社)やラジオ局(ニッポン放送)のディレクター、プロデューサーは節操がない、というか、視聴率が取れれば、何をしても許されると思っているのか、日本の視聴者は何でもすぐ忘れるから大丈夫だと馬鹿にしているのか、それとも裏があるのか、バックに大手事務所が付いているのか…。そのいずれも当てはまると考えざるを得ません。

 このままでは、今の「時の人」黒川弘務・高検前検事長も、3年も経てば、コメンテーターとしてテレビに出てくるかもしれません。

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 以上は些細なことでしたが、今盛んに報じられている「持続化給付金」の業務委託問題は、やっぱりおかしいですね。こっちの方が深刻です。何か、権力者たちが「臭い物には蓋」をしたいといった感じで隠してきたことが、急に、真相が浮上してきたようにみえます。国会でも野党が追及しています。

 この問題解明に熱心な今日付の東京新聞などによると、まず主管の経済産業省が「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」というよく分からない法人に769億円で業務委託。これを協議会が広告代理店電通に749億円で再委託したといいます。差し引きの約20億円は、みずほ銀行(振込手数料約17億1000万円)と電通ワークス(振込の人材確保)と日本生産本部(企業へのヒアリング)に割り当てられたとのこと。

 いずれにせよ、協議会から電通に「再委託」というのは何か不可解ですね。電通は、給付金支給業務は、自社のグループ会社のほか、人材派遣会社のパソナとITアウトソーシング会社トランス・コスモスなどに再々委託する格好となっています。

 そもそも、「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」は2016年5月に、これら電通とパソナとトランス・コスモスによって設立されたというんですから、受注側と委託側がまるっきり同じじゃありませんか。自作自演? しかも、法人の東京・築地の住所に人がおらず、電話番号も明記されていないとか。幽霊会社?

 特に、パソナの会長は、あの経済財政担当相時代に派遣労働者や非正規雇用者を増大させ、「政商」と言われた竹中平蔵氏ではありませんか。ここにもいらっしゃったんですか。さぞかし、金の匂いがしたんでしょうね。これでは、「臭い物には蓋」どころか、蓋をしても、政治の臭いがプンプン漂ってきます。

 

数字の魔力に幻惑されないようにしたい

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 世の中、「数字のマジック」というのか、数字とか統計に関して、素人から見るとさっぱり理解できないことがあります。

 例えば、日経平均は、昨日の1日に約3カ月ぶりに2万2000円台を回復しました。我が国でも、これだけ、コロナ禍の影響で、失業者が増大し、倒産する会社も増えているというのに何でなんでしょうか? 専門家は「国家安全法をめぐり、香港に地政学リスクができて、国際金融都市として役割が香港より東京に注目度が増したから」と、したり顔で説明してくれますが、それでもよく分かりませんね。

 今はコロナ一色で、世界各国の感染者・死者数が発表され、WHOよりジョンズ・ホプキンス大学の集計の方が信頼されているようですが、それでも、これらの数字の発表元をどこまで信用したらいいのか分かりません。

 例えば、6月2日午前10時現在、世界の感染者数が620万人、死者数が37万人を超える中、ブラジルの感染者が52万人を超え(死者は約3万人)、米国に次ぐ第2位になったと注目されています。「ブラジルでは毎日2万5000人の感染者が増えている」といった報道もありましたが、となると、ブラジルでは、毎日、少なくとも10万人以上の人がPCR検査を受けているのでしょうか? 日本でさえ、PCR検査は数千人程度、1万2000人が目標なんて言ってるぐらいですから、ブラジル政府は、日本政府以上の検査能力があるということなのでしょうか。

 感染者数が41万人超と世界第3位のロシアですが、死者数が約4800人とは他の欧州諸国と比べてもあまりにも少ない気がします。英国は感染者約28万人で、死者約2万9000人、スペインは約24万人で約2万7000人、イタリアは約23万人で約3万3000人ですからね。ロシアだけ、統計のやり方が違うのでしょうか。

 日本は、1日午前0時、厚労省発表によると、感染者数1万6884人で、死者892人。欧米と比べて少ないのは何故なのか、まだ分からないようです。世界最大の米国の感染者約179万人(死者約10万5000人)の多くが黒人やヒスパニック系の貧困層だと言われていますから、白人が新型コロナに罹りやすいということにはならないようです。そして、アジア人だからといって罹りにくいという結論は導かれないようです。

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 ここ数日、北九州市での感染数が増加して「2次感染か」と注目されていますが、北九州市でのPCR検査が拡大したから、といった報道を耳にしました。新型コロナは症状が軽い人も多いと言われているので、検査したら陽性だったという人がゴロゴロ出てくるかもしれません。今後、唾液だけで簡単に分かる検査も普及するようですから、尚更です。

 100年前のスペイン風邪でも、死者数が2500万人とする報告があったり、いやいや1億人以上だったという報告もあり、恐らく、結論は出ないでしょう。ロシアの場合、死者数が少ないのは、合併症で亡くなった場合、死因をコロナに入れなかったせいかもしれません。あくまでも推測ですが…。

 新型コロナは、全世界に感染拡大しているというのに、北朝鮮とトルクメニスタンだけは、感染者がゼロだといいます。「国際世論」は「本当かなあ…」と疑っていますが、統計上は、ゼロとして歴史に残るかもしれません。

 ともかく、数字には自分の都合の良いように引用したり、解釈できる「魔力」を持っています。数字だけを見て盲信することは避けたいと思っています。

 緊急事態宣言が全国で解除され、今週に入り、通勤電車もバスも随分、混むようになりました。私自身、メディアが盛んに喧伝している「新しい生活様式」なるものは、信じていません。また、同じ轍を踏むことでしょう。

「古典に学べ」「移動の自由を尊重せよ」

 正直、このコロナ禍の御時世、テレビは見るに堪えられない下らない番組ばかりやっていますが、たまたま見たNHK-BS「コロナ新時代への提言」には引き込まれてしまいました。私が見たのは30日(土)の再放送なので、既に御覧になった方も多いかもしれません。

 人類学者の山極寿一・京都大学総長、歴史学者の飯島渉・青山学院大学教授、哲学者の國分功一郎・東京大学准教授の3人が別々にリモートでインタビュー出演し、それぞれの専門の立場から発言していました。個別に撮影されたのは、4月下旬から5月初めにかけてなのですが、全く古びておらず、「これからアフリカや南米に感染が拡大することでしょう」といった「予言」もズバリ当たったりして、久しぶりに知的興奮を味わいました。

 しっかり、メモでも取っておけば、正確に番組内容を再現できたかもしれませんが、そのまま見てしまったので、覚えている印象的なことをー。

フィンランドの「カルフ」靴、また買っちゃいました。宣伝ではありません!

 まず、ヒトとウイルスとの関わりについて、歴史学者の飯島教授は、1万年前に遡ることができる、と言います。この時、農業が開始され、地球自然の生態系が破壊され、ウイルスが地表に出て、人間に感染する。同時に野生動物を飼いならし家畜化したため、動物から人間にウイルスが感染するようになったといいます。分かりやすいですね。

 となると、今後も人間が、地球の自然破壊をし続け、温暖化になれば、例えば、北極や南極の氷が解け、深海から今まで見たこと聞いたこともなかった微生物やウイルスが出てくるに違いない、と人類学者の山際教授も指摘していました。

哲学者アガンベンの主張「死者の権利」と「移動の自由」

 私がこの番組で一番感銘を受けたのは、哲学者の國分准教授の話でした。國分氏は、イタリアの哲学者ジョルジョ・アガンベンの発言を引用します。アガンベンは、政府が感染拡大防止策として都市封鎖をしましたが、感染で亡くなった人の家族の葬儀もできず、死に目にも会えない状況を批判し、ネット上の炎上のような物議を醸したといいます。それでも、アガンベンはひるまず、「死者の権利」と「移動の自由」を主張します。

 國分氏の解説によると、「死者の権利」とは、彼らの生前の言動を尊重し、亡くなった人の尊厳を取り戻すべきだということです。つまり、過去に学ぶということで、書物等を通して歴史を学び直すということです。そうでなければ、現代という表面的な薄っぺらな現象だけで、皮相的思想になってしまう、と危ぶむのです。そうですね。これは、ストンと腑に落ち納得しました。自戒を込めて言いますが、我々は、くだらないテレビばかり見ないで、古典から学ぶべきです。

 もう一つの「移動の自由」というのは、最初に聞いてピンと来なかったのですが、自由の中で最も重要視されなければならないのが移動の自由だというのです。國分氏は、ベルリンの壁崩壊などの東欧革命は、移動の自由を制限された若者たちの異議申し立てが大きかったといいます。犯罪を犯した人に対する刑の最高は死刑で、最も軽いのは罰金ですが、あとは、懲役刑で牢屋に拘束されます。つまり、移動の自由を禁じられるということです。となると、一般の人でも、移動の自由が禁じられることは、刑罰に近いというわけです。

 東独出身のメルケル首相は、自分の体験として、その苦痛が分かりきっているからこそ、ドイツ国民に対して、「人間に対する移動の自由を制限することはやってはいけないことだが、生命に関わることで、この事態では致し方ないので、国民の理解を得たい」と正直に演説したため、共感され、結果的に欧州の中でも、ドイツは被害を最低限に抑え込むことにつながったといいます。

 哲学者アガンベンが主張する「古典に学べ」と「移動の自由を尊重しろ」というこの二つを聞いて、私もこのブログを書かずにはいられませんでした。

日本人の味覚が劣化していく恐怖

 渓流斎ブログは、「世界最小の双方向性メディア」を自称していますが、昨日書いた「コロナ禍どさくさ紛れの種苗法案は今国会断念だけでなく廃案にするべき」には結構反応がありました。

 例えば、学生時代からの畏友T君は、かつて住んでいた中部地方で週末に農業をやり、販売できるほど収穫があったといいます。しかし、それは化学肥料や農薬を使う「慣行農業」だからできたことで、色々と学んでいくうちに、「有機農業」や「自然農法」へと移っていきます。すると、みるみると収穫量が減っていくので、これはどうしたことか、と種子への関心が真剣に高まっていったそうです。そんな中で、サカタやタキイなどの企業が売っている所謂「F1種」に対する疑問が湧き、日本語講師として中国の大学に渡った時、そこで見た「もう後戻りできない」モンサントやシンジェンタなどによる種子の寡占販売を目の当たりにします。帰国後、「遺伝子組み換え」やら「ゲノム編集」やら「種苗法」の問題に遭遇すると、「もう、グルメランキングだの、どこそこのレストランが美味しいなどと言ってる場合じゃない。米国やスイスなどの巨大多国籍企業に、日本人の『食』が乗っ取られようとしている」という心情に達したといいます。

 横浜にお住まいの調理師のM氏は、さすがに、普段から色んな食材と関わってきているので、この問題には敏感です。

 「F1作物と種子戦争、遺伝子組み換え、Oー157、 モンサント、穀物メジャーなど20年以上前の亡霊がまたぞろ現れたかのようです。気付かなければ、国の農業が崩壊させられてしまう。大国の意のままにされ、阿ることしか出来ないのではないかという印象です。今更ですが、単なる属国でしか無く、今度は余った人工呼吸器を買わされるようです。只々残念です」とのメールを頂きました。

 そして、私自身の見解は、日本人の味覚がどんどん劣っているという恐怖です。もう半世紀以上も昔ですが、私が子どもの頃食べた野菜は、トマトもニンジンもジャガイモもキュウリも、もっとどぎつくて、土の味がしました。今のような水っぽい、スカスカの味ではありません。匂いも強烈だったし、エグイ味でした。

 先日、テレビを見ていたら、コンビニで売っているレトルト食品のランキングをやっていました。料理研究家と称する女性が出てきて、ファミマの〇〇が美味しいだの、セブンイレブンの〇〇は手軽にできて、子どもたちも大喜び、だのと言って、実際、子どもたちに食べせて、子どもに「おいちい」とか何とか台詞を言わせているのです。…何か、涙が出てきました。何時間も下拵えして、手間暇かけて作った料理の味とは比べものにならないはずです。

 私もたまに、レトルト食品(英語でTV dinner ということを最近知りました)を食べることがありますが、合成保存料か人工着色料か何か知りませんが、どうしても薬品の味がします。最初からこのような冷凍食品で育った子どもたちは「違い」が分からないのかもしれません。

 もしかして、その番組は、大手コンビニエンスストアと冷凍食品企業がスポンサーで、単なる商業資本主義の権化のような宣撫番組だったのかもしれません。でも、これを見た多くの人は全く気付かず、「まあ、手軽ねえ。ウチも買おうかしら」「チンしたら、レトルトといっても手料理と変わらないらしい。旦那に出そう」という話になるはずです。

 新自由経済主義、グローバリズム、効率主義、料理をする時間があったら外で働いて金儲けをした方が家族のためになるという金融資本主義の幻想が極まった感じです。

 遺伝子操作食品というのは、種子の遺伝子操作だけでなく、人間自体を洗脳して味覚遺伝子までも変える意味も含まれているかもしれませんぜよ。