イラク戦争5年を想う

 

最近、気になったNYT紙の記事…

 

間もなく5年を迎えるイラク戦争の戦費総額が「3兆ドルに達するのではないか」という記事です。ノーベル経済学賞受賞のジョセフ・スティグリッツ氏の試算。

 

同氏は「この戦費の一部でもあれば、社会保障制度を今後半世紀にわたって健全に維持できた」と発言していますから、裏を返せば、米国は今後半世紀にわたって社会保障制度を健全に維持できない、ということになりますね。

 

昔、子供の頃、ヴェトナム戦争華やかりし頃、市井の勉強家に「アメリカは戦争をやり続けなければもたないんだよ。資本主義国家というのは、不況になれば、戦争によって好景気を生み出していくものなんだよ」と聞いたことがあり、今も深く印象に残っています。

 

「大量破壊兵器があるから」という大義名分の下で、イラク戦争を起こしたアメリカですが、国内の不満や経済的不況を打開するために戦争を始めたとしたら、5年経った現在、それは、失敗だったのではないでしょうか。

 

ブラックジョークで、戦争によって、景気が良くなれば、講釈も後付けで何ともなります。しかし、サブプライムローンをはじめ、大幅なドルの失墜で経済危機が叫ばれる今の米国で、イラク戦争が米国内に好景気をもたらしたという話は聞いたことがありません。

 

何と言っても、社会保障という国民の根幹にかかわることを蔑(ないがし)ろにしてまで、対外戦争を続ける意図が私にはいまだによく分かりません。

 

賛否両論をお待ちしています。

ロバート・ジョセフという人

 帯広動物園

 

アメリカ人のロバート・ジョセフという人が「原爆の使用が終戦をもたらし、連合国側の万単位の人命だけでなく、文字通り、何百万人もの日本人の命を救ったという点では、ほとんどの歴史家の見解は一致する」と発言しました。2007年7月3日、ワシントンでの公式の記者会見の場なので、伊達や酔狂ではなく、信念として発言されたのでしょう。

 

まず、事の重大性は、日本で、久間防衛大臣が「原爆投下はしょうがない」と発言して辞職に追い込まれたちょうどその時期に、アメリカでまるで援護射撃のように発言したことです。

ジョセフさんという人は1949年、ノースダコダ州ウィリストン生まれ。米政府核不拡散問題特使で、ブッシュ政権内ではボルトン前国連大使に連なるネオコンの一人だそうです。イラク戦争を推進した強硬派です。そういう思想の持ち主が政権の中枢にいるとはいえ、アメリカ人の一部(いやほとんどかもしれません)の意見を反映していることは、日本人として注目しなければいけないと思っています。

「ほとんどの歴史家の見解が一致する”most historians would agree” 」歴史家とは、どういう人を指すのでしょうか。政治家に都合のいいような御用学者を侍らしているだけではないかと勘ぐりたくなります。

何と言っても「何百万人もの日本人の命を救った the atomic bombings ended a war that would have cost millions more lives.」というのはどういう意味なのでしょうか?原爆を落とさなければ、連合国側はさらに何百万人の日本人を殺戮していたということなのでしょうか。広島、長崎の原爆で殺された人は20万人と言われています。そのほとんどの人は、非戦闘員であり、無辜の民です。簡単に何百万なんという数字を出さないでほしいですね。人間の顔を被った鬼ですよ、そんなことを言うのは。

安倍政権に反対宣言

 帯広

 

今日はちょっと、微妙な政治的な問題を考えます。

 

月刊「現代」7月号で、立花隆氏が「私の護憲論」を発表しています。東京新聞の「大波小波」でも取り上げられていたので、是非読まなければならないと思っていました。

最近、盛んに安倍首相が「戦後レジームからの脱却」を口を酸っぱくして発言していますが、立花氏はそのアンチテーゼとして論考を進めています。副題が「戦後レジーム否定論への徹底抗戦宣言」となっています。この論文は次号にも続きますが、今回の論点、つまり立花氏が一番言いたかったことは、以下のことだと思います。(換骨奪胎しています)

 

「政治とは、一国の社会が全体として持つ経済的、資源的、人的リソース(資源)をどう配分していくかを決定するプロセスのことである。戦前の日本は、全予算の半分が軍事的リソースに投入されていった。しかし、戦後はその軍の崩壊によって、リソースはすべて民生に注入することができるようになった。アメリカは、軍産複合なくして発展してこなかった。しかし、日本は軍産複合体を存在させずに経済発展を遂げたという意味で日本の成長モデルは世界に誇れるのではないか。それは、『戦争放棄』の憲法第9条の戦後レジームがあったからこそ可能なのだ」

 

立花氏は、この論考を進めるにあたって、日本国憲法の成立の過程を検証します。GHQにより「押し付けられた」というのが定説になっていますが、それでも、日本人の手によって、国民投票する機会もあったし、国会で審議する機会もあった。それなのに、当時の為政者たちが、唯々諾々と敗戦国として受け入れた。これでは「押し付けられた」という歴史的事実が一人歩きして、今後禍根を残すので、国民投票に諮るべきだと主張したのはただ一人、東大学長だった南原繁だけだったということを明らかにしています。

 

戦後レジームを云々するには、「ポツダム宣言」を知らなければならない、と立花氏はズバリ指摘してますが、本当に勉強になりましたね。面白かったのは、日本人は終戦記念日は8月15日だと思っているのですが、それは、国内向けにポツダム宣言を受諾する天皇の玉音放送があった日だけで、依然、諸外国では、15日以降も激戦が続いていた。国際法の本当の終戦は、9月2日で、戦艦ミズーリ号で日本が降伏文書に署名した日である、ということも説明され、私なんかも「なるほどなあ」と思いました。

 

今朝の朝日新聞の朝刊で、評論家の岸田秀氏も「安倍改憲は『自主』なのか 米に隷属する現状直視を」というタイトルで寄稿していました。要するに「日本は戦争に負けて、アメリカに隷属する属国になった。だから、改憲といっても事実上、米国の許容範囲内でしかできない。今の9条の歯止めをはずせば、自衛隊員はアメリカが勝手に決めた戦争で世界のどこかの最前線に送られる消耗品になりかねない」と指摘しているのです。

 

北方領土はなぜ返還されずに、ロシアの「占領」のまま続いているのか。返還する気がさらさらないプーチン大統領の理由は明快です。「第2次世界大戦の結果、ロシア人の血を犠牲にして獲得したからだ」。これは、日本がもし、先の戦争に勝っていたか、負けを宣言しなかったら、日本が朝鮮も台湾も満洲もそのまま日本の領土として保持していた時に使う同じような理由づけでしょう。領土というのは、戦争の産物だという歴史的事実を再認識させられるのです。

 

6月10日付の東京新聞の一面トップで「日本兵遺骨 51体集中」というタイトルで「インドネシア・ニューギニア島北西部のビアク島で、旧日本軍兵士の遺骨が大量に野ざらしになっているのが、確認された」事実を報道しています。ビアク島では、日本側は陸海軍計約1万2800人のうち1万2000人以上が戦死したといわれます。そのほとんどが60年以上経っても、「帰還」を果たすことができず、遺骨が野ざらしになっているというのです。インドネシア領西部は治安状況などを理由に、戦後20余年しかたっていないのに「遺骨収集は概ね終了した」と、日本の国家は終結宣言してしまうのです。海外で没した旧日本軍兵士は約240万人いますが、このうち約124万柱しか帰還を果たしていないというのです。私が興味を持つフィリピンのレイテ島の激戦では、約8万人が戦死(生存率3%)しましたが、帰還した遺骨は1万5千柱のみなのです。

 

何と言う冷たい国家なのでしょうか。仕方なく徴兵で戦場に送られた兵士が飢えで喘いで死に瀕している時に、好きで偉ぶりたくて軍人になった将校連中は、そそくさとチャーター便で帰国しているのです。何が靖国神社だと思ってしまいますね。戦後もぬくぬくと生き抜いた偉い軍人だけを祭っているのではないかと疑りたくなります。

 

ピラミッド社会の日本人の心因性などそう変わるものではありません。戦争になれば、日本人は国家の名の下でまた同じようなことをするのです。だから、私は、改憲をして戦争国家に逆戻りさせようとする安倍晋三を全く信用できないのです。

日本は米国の植民地か?

ローマ

アメリカ合衆国政府は、東京・赤坂1の10の5の駐日大使館敷地の賃貸料を9年間も払っていないということを、10日付毎日新聞夕刊で初めて知りました。(コラム「牧太郎の大きな声で言えないが…」)

1998年以降、一切払っておらず、催促してもラチがあかないとか。

超一等地、赤坂の地価相場は、3・3平方メートルあたり、897万円(4月3日調査)。それが、駐日大使館敷地が1万3000平方メートルもあるというのに、年額250万円。その250万円さえ、9年間も払っていないというのです。

日本はアメリカの植民地なのか?

同紙の読者以外は知らない事実なので、あえて再録致しましたが、牧太郎さんには、堂々と大きな声で言ってもらいたいものです。

アメリカ追随の不思議

日頃から、日本は何故、アメリカの植民地のように、米国に右へ倣えしているのかと感じています。「それは当たり前でしょう。日米安保条約のおかげで、日本はアメリカの核の傘の下で戦後、ぬくぬくと繁栄できたのですから」と多くの方は指摘されることでしょう。まあ、それは一理あります。でも、最近はあまりにも露骨なことが多すぎるので、子供のように何度も疑問を提示したくなるのです。「戦後60年も経つのに、何で日本は、アメリカの言うことばかり聞いて、アメリカの真似ばかりしなければならないのか」

例えば、郵政民営化。これは、郵便や宅急便の配達事業の問題ではなくて、低金利のおかげで集まった郵便貯金と簡易保険の合わせて350兆円という莫大な日本人庶民のなけなしのお金を、「規制緩和」して、貯金なんてしないアメリカ人が目を付けたということではないだろうか。ハゲタカファンドが欲しくて欲しくて堪らなくて、日本政府に圧力をかけているという図式なのでしょう。

一体、誰がシナリオを書いているのかなあ、と思ったら、ちゃんとインターネットでそのシナリオは公開されていたのですね。それは「年次改革要望書」と呼ばれ、在日米国大使館の公式サイト(http://japan.usembassy.gov)に日本語でも掲載されています。
ノンフィクション作家の関岡英之氏に教えられました。関岡氏によると、米国の要求事項は、日本の担当省庁に振り分けて検討され、審議会にかけられ、関連法や制度が改正され、着実に実現されてきたというのです。
最近、最高経営責任者(CEO)や法科大学院といった米国のモデルがグローバルスタンダードの名の下で日本中に跋扈しているのも、このシナリオが遠因しているようです。
ご興味のある方は、在日米国大使館の公式サイトを覗いてみてください。参考文献は、関岡英之著「拒否できない日本」(文春新書)。