「資本主義経済は、リスクを取っても良い人間が、リスクを取りたくない人間から利益を吸い上げるように出来ている」=山崎元著「経済評論家の父から息子への手紙」の名言です

 幸せとは何か-? 最近、個人的に、幸せとは「憂いがない」ことだと思うようになりました。「憂いがない」というのに、フランス語で丁度良い言葉がありまして、sans souci(サン・スーシー)と言います。18世紀のプロイセンのフリードリッヒ大王が建てた「サンスーシー宮殿」は有名ですから、聞いたことがあるかもしれません。

 人間、生きていれば色んな憂いがあります。その中でも将来の不安が一番かもしれません。具体的に言えば、将来の生活で、もっと具体的に言えばお金の心配です。私は、「経済音痴」を自称し、給料もほとんど、生活費や子どもたちの学費などで消え、若い頃は普通預金に入れたまんまでした。しかし、中年を過ぎて将来の不安もあり、投資も考えるようになりました。その時、一番お世話になった書籍は、経済評論家の山崎元氏が初心者向けに書いた易しい株式投資の本でした。もう15年ぐらい前かもしれません。彼の著作は何作も読みました。

 その山崎氏が今年1月に65歳の若さで亡くなったことには吃驚してしまいました。何しろ、私より若いですから。そんな山崎氏が「遺作」として「経済評論家の父から息子への手紙」(Gakken、2024年2月27日初版)を出版したことを知り、早速購入しました。

 通勤電車の中で直ぐ読了できました。内容はタイトル通り、経済評論家の山崎氏が東京大学に合格したばかりの18歳の息子に宛てた「私信」を元に、経済の仕組み、起業と投資の勧め、それに人間の究極の幸せとは何かといったことを、まさに「遺言」として説いたものでした。(あとがきで、息子さんの出身高校は、海城だと書かれていたのでこれまた吃驚。私の母校ではありませんか!)

 斜に構えて言えば、この本は、まだ世間知らずの息子に対して父親が説いた「処世術」です。私ももっと若い頃に読んでいたら大いに参考になっただろうと思いました。しかし、「人生哲学書」として読むとなかなか味があります。

 勿論、経済評論家の本ですから、投資に関する指南はまさに的を射ております。何よりも、「資本主義経済は、リスクを取っても良い人間が、リスクを取りたくない人間から利益を吸い上げるように出来ている」というのは、名言です。かなり、真相を突いていると思います。言い換えて、「世の中は、リスクを取りたくない人が、リスクを取って良いと思う人に利益を供給するように出来ている」とも言っております。

 まさに、その通りです。経済格差や世の中の不公平を叫んでばかりいても始まりません。このように、世の中の仕組みを知ることが先決です!!このリスクというのは投資と置き換えて良いかもしれません。世界の大富豪のほとんどが起業したりして自社株を保持し、その評価額が富裕層として反映されています。逆に言えば、投資しなければお金持ちにはなれないのです。(人生哲学で、別に大金持ちになる必要がないと確信している人には関係がない話ですが!)

 テレビにチャラチャラ出て(露出を優先して)、CMで1本8000万円も1億円も稼ぐような芸能人や文化人がおります。山崎氏の伝で言えば、その人は確かに強運の持ち主ではありますが、その人なりに、平凡なサラリーマンや公務員の道を選ばす、リスクを冒して今の自分の地位を築き上げた人ということになります。

 さて、これから、具体的に何に投資したら良いのか? 詳細は本書に譲りますが、山崎氏は、例えば、個別銘柄よりもインデックスファンドをお勧めしています。FXや仮想通貨、信用取引などはギャンブルだと断定しています。また、不動産投資も決して有利なものではなく、それは「不動産業者が自ら物件を保有するのではなく、客を探して売っている状況が雄弁に語っている」と説明しています。

 保険も、保険会社が得をして加入者が損をするように出来ていて(そうでなければ、保険会社はつぶれる)、山崎氏も「最近癌にかかったが、健康保険に加入していれば、民間のがん保険は不要だと改めて確認した」と言うほどです。

 いやあ、こういった助言だけでも、この本を買って良かったと思いました。著者が力説する通り、安心も、リスク(投資=本の購入)を取って初めて得ることができたということになりますか。

 

「山口メンバー」には違和感

人気アイドルグループTOKIOの山口達也メンバーが25日、強制わいせつの容疑で書類送検され、ファンの間では「信じられない」との声が広がってます。

このニュースについて、特に興味を持ったわけではありませんが、何となく違和感を覚えました。

新聞でも天下のNHKも、山口容疑者のことを「山口メンバー」「山口メンバー」と表記したり、叫んだりしているからです。

警察がそう発表したのか、強大な権力を持つ有名芸能事務所がマスコミにそう呼ばせたのか、真相は分かりませんが、何か水で薄めて緩和している感じです。

ズバリ、「財界」「官界」「芸能界」のゴールデントライアングルの構図が浮き彫りになります。

まず、資本主義社会ですから、企業は物やサービスを買ってもらわなければなりません。でも、庶民は賢いのでそう易々とは買ってくれません(笑)。

そのため、「財界」はタレントを起用してコマーシャルします。消費者は、親の言うことは聞かなくても、好きな芸能人が出ている製品なら飛びついて買います。

「官界」=行政は、タレントを「1日警察署長」や「1日税務署長」に起用して、交通安全や納税を大衆を啓蒙します。山口メンバーのように、「スペシャル・アンバサダー」でもいいですね(笑)。

これらと「芸能界」を取り持って狂言回しの役割をするのがマスコミ媒体です。特に、宣伝と直結する広告代理店は、芸能人のスキャンダルにはいつも厳しい目で監視して、いざという時は、その対応に追われます。

テレビにとって、芸能人は、番組作りに欠かせません(ただし、番組は商品を売るための拡販材料)。新聞・雑誌も売るためには、タレントを起用して華やかにしなけりゃなりません。

持ちつ持たれつの関係です。

まあ、社会の構図がこうなっているのですから、第三者がとやかく言っても始まらず、いつも隔靴掻痒で終わるわけなのです。

【追記】

意外にも、東京発行の全国・ブロック紙「都内最終版」を見ると、読売新聞だけが、「山口容疑者」の表記だったのです!あと朝日、毎日、日経、東京、産経は全て「山口メンバー」でした。

テレビはいわずもがなでしょう。

ただ、まだ書類送検の状態で処分が出ていないため、各社の判断になっているようです。

資本主義のたそがれ、または終焉

大連駅裏通り Copyright Par Duc de Matsuocha gouverneur

水野和夫、大澤真幸両氏による対談共著「資本主義という謎」(NHK出版新書)が、結局、著者らは何を言いたかったのか、と考えてみますと、今の時代、日本は「失われた20年」どころか、これからまあ、あと50年か100年は経済成長のない低迷、停滞、低空飛行が続いて、働けば働くほど貧乏になるワーキングプアの時代だというのが現実で、それを冷静に見つめろ。諦めるのではなく、最後は政治の力でどうにかしなければならないので、「百年の大計」を持ったしっかりとした政治家を選ぶべきではないかと、私なんか解釈しました。

営業利益を上げて経済成長を遂げていくというやり方は、もうこの新自由主義のグローバル化時代では、どんどん低賃金の労働力が「現物」だけでなく、ネットを通して入り込んでくるので、要するに人件費を低く抑えることで労働者に分配せずに、内部留保の形で営業利益を水増しさせていく手法が、今の先進諸国の資本主義の行き着いた形、姿ということになるのでしょう。

 大連駅裏通り Copyright Par Duc de Matsuocha gouverneur

この本に再三再四出てくる「利子率革命」というのは、恐らく水野氏の造語で、「長期金利が2%以下の時代」のことを指すようです。

リーマン・ショックとユーロ・ソブリン危機で、日本に加えて米英独仏の先進4カ国の10年国債利回りがそろって2.0%以下となり、世界の牽引車となるべき先進諸国は「長い16世紀」(1450年~1650年)以来の「長い21世紀」(1971年~)の利子率革命に入っているわけです。

水野氏はこう言います。「利子率革命、すなわち資本の低利潤化が長期化すると、過去の過剰資本に耐えられなくなって、具体的には働く人を貧しくすることでしか、資本を維持できなくなるのです」

「働けど 働けとども…」の石川啄木ですね。

また、こうも言います。

「資本主義は元来、貧乏人を相手にしないという本質を持っているようです。最初の資本家が誕生した12~13世紀のイタリアのフィレンツェで、資本家が競って読んでいた小冊子に『商業についての助言』があり、そこには『貧乏人と付き合うな。なぜなら、彼らに期待すべき何もないからだ』とあります」

大連駅裏通り Copyright Par Duc de Matsuocha gouverneur

また、水野氏は未来社会についても。こう予言しております。

「資本主義には利潤を極大化しようという意思があると思います。だから、短期でゼロ金利、長期で2%では、もう信用リスクぐらいしかない。そうすると、何処へ行っても利潤率が事実上ゼロということでしょうから、対処療法的にはこの30年間でなされたような『電子・金融空間』のようなものをつくるしかないかもしれない。
でも、それすら成立しないとなれば、資本主義はもう立ち行かなくなって、市場経済だけが残る。市場の交換によって利潤は発生しないという状況ですね。…しかし、資本主義が周辺をどんどん取り込んでいった段階で、みんなが豊かになることはありえなくなった。ということは、市場経済が残る保証だってありえないわけです」

うーん、偉い経済学者様の見立てですが、絶望的ですね。

このままいくと、年収が減るばかりでなく、年金も75歳まで出なくなる可能性もあり、若い世代も大変です。年収が増えなければ、結婚もできず、先進資本主義諸国は、どこもかしこも、ますます少子高齢化、超高齢社会となる寸法ですね。

これでは身も蓋もなくなります。水野氏らは最後に将来、人々の希望までもが奪われて、いずれ滅びるか、滅びないかは「政治の責任だ」と断言します。そして、彼はこう忠告します。

「21世紀の現在、非正規社員が3割を超え、年収200万円以下で働く人が給与所得者のうち23.7%、金融資産非保有世帯が26%という日本で、現在『民』は大切に扱われているとは全く思えません。新自由主義の人たちは、個々人の努力が足りないと非難し、貧乏になる自由があるとまで言います。『春秋左氏伝』によれば、亡国の道をひた走っていることになります」

「資本主義という謎」の衝撃

大宮盆栽村 Copyright par Keiryusai

エコノミスト水野和夫氏と社会学者の大澤真幸氏による対談「資本主義という謎」(NHK出版新書)を読み始めております。

初版が2013年ということで、もう4年も前の本ですが、久し振りにエキサイティングな本で、知的好奇心を満足させてくれます。

この本は、「どうせお前さんには社会科学の知識が足りないだろうから」という友人の本山君が貸してくれたもので、当初は全く興味がなかったのに、読み始めるとグイグイ引き込まれてしまいました。「食わず嫌い」では駄目ですね(笑)。

大宮盆栽村 Copyright par Keiryusai

この本が面白いのは、あの共産主義であるはずの中国共産党まで染まった資本主義経済とは一体何なのか、その歴史的背景を担保にして明快に分析してくれていることです。

水野氏は、フェルナン・ブローデルやカール・シュミット、大塚久雄らの著作を引き合いに出して、大変説得力のある論理を展開しています。

特に、印象的なことは、資本主義の誕生と成長にはキリスト教、その中でもプロテスタント、もっと細かく言えばルター派ではなくカルバン派の役割が大きかったという説です。

その前に何故、資本主義が欧州で起きたかという素朴な疑問です。(水野氏は、資本主義の勃興を12世紀のイタリア・フィレンツェ説に賛同しております)近世ヨーロッパが大航海時代で海外諸国を植民地化してのし上がる前は、世界一の富裕大国だったのは中国でした。何故、その中国で資本主義が起きなかったのか?また、何故、国際的に商人が大活躍していたイスラム世界ではなかったのか?という疑問です。

この中で、中国に関しては、1793年に清の皇帝が英国のジョージ3世に宛てた手紙が残っており、そこには「我々の生産品と交換に異国の生産品を輸入する必要はない」とはっきり書かれていたそうです。

つまり、中国は遠方から財やサービスを輸入するほど国内ではモノ不足がなかったから、資本主義も発達しなかったわけです。

イスラム世界に関しては、利子を禁止されていたからというよりも、「コーラン」に書かれている相続法によって、遺産は多数の家族に厳格に等分に分配されるため、イスラム経済圏を膨張させる資本の蓄積が十分ではなかったからという説が有力なんだそうです。

大宮盆栽村 Copyright par Keiryusai

水野氏は、リチャード・シィラ、シドニー・ホーマー共著「金利の歴史」(紀元前3000年のシュメール王国から金利があった!)をもとに、利子率革命の歴史を辿って、資本主義誕生・発達の背景を探ります。

●1555年=ピークの9%(アウブスブルクの和議=神聖ローマ帝国内で初めてルター派が認められる)
●1611年=2%を切る
●1622年=4%台に上昇(英、蘭が東インド会社設立。仏ブザンソンの「大市」の支配者だったジェノヴァが、アムステルダムの「取引所」に取って代わられる)
●1648年=(カトリックとプロテスタントとの30年戦争終結のウエストファリア条約)

この間、利子を禁止していたカトリック教会の監視の目をくぐって、イタリアのメディチ家が為替のテクニックを使って、実質的に時間が金利を生んでいく手法を生み出していく様も描かれます。

時間を支配するのは「神」の独占特権事項だったため、教会の権力が強かった中世までは、カトリックが経済規範を握っていました。それが近世になって宗教革命~宗教戦争~和解などのプロセスを経て、資本主義の萌芽と成長につながっていくというわけですね。

これは実に面白い!

大切なものは目に見えない

ワニノ港 Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

NHKスペシャル「マネー・ワールド 資本主義の未来」は、面白くも何ともない、実につまらない漫才師が出てきて、真面目な話をぶち壊しているので、NHKとプロデューサーの品格を疑いますが、まあ、見応えのある番組でしょう。

第一回が10月16日放送で、「世界の成長は続くのか」というタイトルでした。

今や、世界のわずか62人が36億人分の富(3兆円)を独占する超々格差時代なんだそうです。

メモをしなかったので、忘れましたが(笑)、2011年に発覚したスイス最大の銀行UBSのロンドンにいた元トレーダー、クウェク・アドボリ被告による2500億円に上る不正取引を取り上げておりました。アドボリ被告は、懲役4年の刑を服したのか、番組のインタビューに出てきて、「厳しいノルマを課せられ、不正取引をやらざるを得なかった。上司は知っていた」などと発言しておりました。

番組では、英国エジンバラに銅像が立つスコットランド出身のアダム・スミス(1723~1790)の「見えざる手」理論を、資本主義の権化のような扱い方をして、そのアダム・スミス以来の自由な資本主義が250年経過した現在、成長の終わりを迎えたのではないかといった感じで、リードしていました。

漫才師の一人は「いやいや、資本主義は終わっていない。まだまだ希望は持てる」といった楽観論を展開してましたが…。

 ワニノ港 Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

昨日22日放送の第2回の「国家 VS 超巨大企業」では、国境を越えたグローバル企業が、ISD条項(投資家対国家間の紛争解決条項=Investor State Dispute Settlement)を盾にして、国家を訴える裁判が多発している様を報告していました。

狙われるのは弱小最貧国で、例えば、南米のエクアドルを取り上げていましたが、国家予算の何倍もの何兆円も債務を背負ってしまい、そのツケがエクアドル国民に深刻な影響を与えている「事件」を報告していました。つまりは、国民が教育や医療福祉などの行政サービスが受けられなくなったのです。

このISD条項は、早期調印を安倍政権が推し進めているTPP(環太平洋パートナーシップ)にも密かに盛り込まれております。もし、日本政府が裁判に負けて多大な債務を背負えば、日本国民にそのツケが回ってくる危険が潜んでいるわけです。

あと、グーグル、アップル、アマゾン、スターバックスといった米国の超巨大グローバル企業が、「税金回避」のために、あらゆる手段を使っている様も教えてくれました。

アップルは、法人税が高い米国から、12.5%と極端に低いアイルランドに逃げて、実質0005%しか税金を納めていないことを解明しておりました。アップルは、議会で追及されても言い逃れておりました。

このほか、グーグルはフランス、アマゾンがルクセンブルク、スターバックスがオランダへ租税回避しており、世界では総額2400億ドルもの大金が税逃れされているようでした。

よおし、私は、もともと、スターバックスのコーヒーは飲むとお腹が痛くなるので、スタバには一切入りませんが、アマゾンの通販はやめよう。グーグルも使うのやめよう。あ、でも、アップルは今、iPhoneを使っているなあ…(トホホホ)

 ワニノ市役所 Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

第3回の「巨大格差 その果てに」は今日23日夜に放送される予定です。

思うに、星の王子さまではないですが、大切なものは目に見えないもんですね。

先日、チラシがポストに入っていて、インターネットのWiーFi設備が、7GBで通常料金が月額3880円のところ980円に値引きすると大々的に広告しておりました。

しかし、下に眼に見えないほど小さい字で、980円の割引が続くのはわずか6カ月だけで、7カ月目からは2600円と書いてあるのです。

しかも、通常2年契約が普通なのに、この会社には3年契約という縛りがあるので、途中解約しようものなら、ヤフーのように莫大な解約金を請求するに決まってます。阿漕な商法です。

やはり、大切なものは目に見えないものです。