コロナ禍どさくさ紛れの種苗法案は今国会断念だけでなく廃案にするべき

WST National Gallery Copyright par Duc de Matsuoqua

  新型コロナのおかげで、重要なニュースが報道されなかったり、隠されてしまっていることが危惧されます。何と言っても、ジャーナリズムの基本は、「何が報道されたか」というより、「何が報道されなかったのか」の方が需要だからです。

 そんな目立たない記事の中で、ほとんどの日本人が気付かなかった記事があります。今月5月19日に今国会での成立が見送られることになった「種苗法改正案」です。この法案廃止の急先鋒の一人と言われている元農林水産相で弁護士の山田正彦氏によると、もしこの法案が成立すると、農家は、登録品種の自家増殖(採種)が一律禁止となり、違反すると10年以下の懲役1000万円以下の罰金が科せられ、農家は毎年、高いお金を出して、モンサント(現バイエル)など外資のグローバル種子企業から種を買わざるを得なくなるというのです。しかも、それらの種子だと遺伝子組み換えやゲノム改良品種に頼らざるを得なくなる恐れがあるというのです。

 「これから大変なことが今の国会で決められようとしています。」(山田正彦オフィシャルブログ・2020年2月14日)

WST National Gallery Copyright par Duc de Matsuoqua

 これについて、京都大学大学院教授の藤井聡氏や、どういうわけか女優の柴咲コウさんまでが賛同といいますか、論争に加わっていました。特に、柴咲さんは「新型コロナの水面下で、『種苗法』改正が行われようとしています。自家採取禁止。このままでは日本の農家さんが窮地に立たされてしまいます。これは他人事ではありません。自分たちの食卓に直結することです」(4月30日)などとSNSで積極的に発言されていましたが、どうやら今では削除されているようです。

 どうも芸能人が政治的発言をすると、日本では多くの人が匿名を使って叩く傾向があります。

 種苗法が改正されると、モンサント(現バイエル)など外資の多国籍種子企業が儲かるということに対して、「グローバル種子会社はモンサントだけでなく、日本のサカタのタネなどもあるので、山田氏の主張にはその視点に欠けている」といった批判もあります。

 それでも、私自身は、山口県の地方紙、長周新聞がコロナ禍のさなかに種苗法改定案が国会審議入りへ 農家の自家採種禁止で揺らぐ食料安保」(5月14日付)で指摘したように、食料自給率がわずか37%という日本の食料事情を鑑みても、問題がある法案であり、廃案にしなければならないと思っています。

 なお、種苗法改正法案については、農林水産省のホームページに掲載されています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

旧《溪流斎日乗》 depuis 2005 をもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む