新年2020年はどんな年になるかと思ったら、米軍が1月3日に、バグダッド国際空港近くでドローンを使ってイラン革命防衛隊クドゥス(アラビア語でエルサレム) 部隊のカセム・ソレイマニ司令官らを殺害するというとんでもないニュースが飛び込んできたことは、ご案内の通りです。
どんな大義名分があるか知りませんが、断じて戴けない行為です。トランプ大統領は、保安官気取りなのでしょうか。いや、失礼、気取りではなく、世界最高権力者そのものである米国の大統領でした。日本の政府は一言も非難しませんが、日本への影響は計り知れず。
これで、中東は一触即発の気が漲り、報復を誓うイランは、イラクやシリアにいるイスラム教シーア派 、それにレバノンのヒズボラ、イエメンのフーシー派などと連携を深め、米国との間で全面戦争が始まるのではないかという緊張に包まれています。原油先物価格も急上昇しています。早速、株式市場が反応して、3日(金)のダウ平均は一時350ドル超も暴落したというのに、6日(月)は小幅反発して68ドル高でした。日本も日経平均は、6日(月)に一時500円超も下落したというのに、7日(火)は反発して370.86円高です。
あれっ? ですよ。
識者によると、軍事力では圧倒的に劣るイランが、全面戦争に踏み込みたくても、実際無理なので、報復といっても小競り合い程度に長期にわたって続く可能性が高い、といった分析が、株高につながったものとみられます。
もう一つ、防衛産業大手のロッキード・マーチン社の株が過去最高値を更新したそうじゃありませんか。そうだったのか!何か読めた気がしますね。(とはいえ、8日になってイランによる米軍駐留基地攻撃が開始されると、日経平均は、またまた370円以上値を下げました)
暗殺されたソレイマニ司令官(62)は、日本でいえば、山本五十六大将に匹敵するぐらいの英雄でしょう。ペルシャ帝国の流れを汲み、1979年の革命で国王を追放してイスラム統治国家になったイランは、殉教者は最高の地位になるといわれ、ソレイマニ氏は、まさに軍神として祭り上げられることでしょう。軍需産業に唆され、再選しか頭にないトランプさんは、権力の魔力に取りつかれたとしか言いようがありません。
◇ゴーン被告の場合
今回のイラン司令官殺害事件のニュース関連で、久しぶりにレバノンの国際テロ組織ヒズボラの名前を聞きましたが、国外逃亡したカルロス・ゴーン被告(65)は、レバノンで悠々自適な生活を送れるのでしょうか?やはり、難しいでしょうね。日本脱出するのに22億円もかかったという週刊新潮の報道もありましたが、レバノン入りの際、手ぶらで入国できるわけがなく、政府高官に多額の資金が贈与したのではないかと言われています。賢いゴーン被告のことですから、ヒズボラのハッサン・ナスララ書記長にも手を回したかもしれません。
レバノンという国は、シリアを委任統治していたフランスが1920年代にキリスト教徒が多かった地域を独立させたのが始まりです。かつて、首都ベイルートは「中東のパリ」なんて呼ばれていましたが、1975年から宗教上の理由から内戦が始まり、90年に停戦になったとはいえ、今でも政情は不安定です。35歳以下の失業率が37%とも言われています。現在、国会ではイスラム教徒とキリスト教徒が50%ずつ議席を持つことが決まっており、ゴーン被告も信者であるキリスト教マロン派から大統領が、イスラム教スンニー派から首相が、イスラム教シーア派から国会議長が選出されているそうです。だから、ゴーン被告は、同じキリスト教マロン派のミシェル・アウン大統領を頼ったわけですね。同大統領は関与を全面的に否定しても、現政権がゴーン被告を日本に強制送還しないことから何らかの取引があったのではないかと忖度されます。
日本人社員の首を散々切って合理化した功績で、私腹を肥やしたゴーン被告の総資産は200億円ともはるかそれ以上とも言われていますから、日本政府が没収した保釈金15億円なんて、庶民換算すれば、本人にとって15万円程度なんでしょう。でも、その15億円は何に使うんでしょうか?偽証の疑いで国際手配されたゴーン被告の妻キャロル容疑者も含めて、2人を捕縛して日本に送還した人への報奨金とすれば、元グリーンベレーの連中とか、次々と手を挙げてくるんじゃないでしょうか。皮肉ですけどね。
8日の午後10時(日本時間)に、本人は記者会見するそうですが、自己弁護と自己保身と自己正当化に終始することでしょう。宣撫活動として利用したいがために会見をすることは目に見えています。金持ちは「逃げれば恥だが役に立つ」という先例をつくっては駄目でしょう。
それにしても、ブログとはいえ、現在進行形の事件を書くことは疲れます。この先、どうなるのか予想もつきませんからね。でも、ゴーン被告逃亡の遠因をつくったのは、富裕層専門の弁護士弘中惇一郎氏にもあるという記事に接し、思わず相槌を打ちました。