都合の悪いことはなかったことに=菅首相の「政治家の覚悟」

  20日に発売された菅義偉首相の著書「政治家の覚悟」(文春新書)は、野党議員時代の2012年3月に刊行した単行本を改訂したもので、単行本では「政府があらゆる記録を克明に残すのは当然」と公文書管理の重要性を訴える記述があったのに、新書版では、それらの章がごっそり削除されていたらしいですね。比較して読んだわけじゃありませんが、朝日と毎日が報じています。

 ご都合主義と非難されてもしょうがないでしょう。 

  なぜなら、菅氏は8年前の単行本では、民主党政権(当時)が東日本大震災の際に、会議の議事録を十分に残していなかったことを批判し、「千年に一度という大災害に対して政府がどう考え、いかに対応したかを検証し、教訓を得るために、政府があらゆる記録を克明に残すのは当然で、議事録は最も基本的な資料です。その作成を怠ったことは国民への背信行為」とまで書いていたのに、この部分はごっそり削除されているのです。

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 ところが、自民党が野党から与党に返り咲き、しかも安倍政権の中枢の官房長官になった菅氏は民主党政権と同じかそれ以上のことをやったわけです。(直接指示しなくても、少なくとも見て見ぬふりをしたわけです)「森友学園」への国有地売却問題や「桜を見る会」問題では、高級官僚らの忖度で、安倍政権や昭恵夫人に都合の悪い公文書や記録が改ざんされたり、廃棄されたり、あったものをなかったことにしたり…。新型コロナウイルス対策会議でも議事録を残さなかったぐらいですからね。

 これでは、首相になって、今さら「公文書管理の重要性」を訴えるわけにはいかなくなった、と勘繰らざるを得ません。

 野党時代は批判していたことを、自分たちが権力を握るとシレっと同じようなことをするとは、姑息ですね。日本学術会議の会員名簿から政権に都合の悪い学者6人を外した問題は、まだまだ尾を引いていますが、菅首相の馬脚がだんだん露わになってきました。

 メディアの世論調査で、内閣支持率の低下がそれを物語っています。

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