登り甲斐がある Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur
最近、脳に関して関心と興味が湧いています。
池谷裕二著「脳には妙なクセがある」(扶桑社)は、エッセイをまとめて、単行本用に全面書き直したもので、大変面白かったです。
悪く言えば、海外の「ネイチャー」や「サイエンス」など一流の科学誌に載った臨床実験をそのまま引用したものですが、巻末に挙げた参考文献だけでも207点もあり、しかも全て英文。これだけ、読みこなすだけでも重労働です。まあ、著者の本職は、東大大学院の薬学系研究科の准教授ですからね。
著者は、今、若手の脳学者としてメディアに引っ張りだこだそうですが、私は彼の著作は初めて読みました。
初心者にも分かりやすく書かれているので、とにかく途中でやめられないほど面白いです。悪口を言っておきながら、お勧めです(笑)。
機関車もいろいろ Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur
色んなことが書かれているので、まとめることはできません(笑)。ですから、心に残った意外な臨床結果を順不同で、そして換骨奪胎で羅列してみようかと思います。
・意識と無意識はしばしば乖離する。しかし、実は無意識の自分こそが、本来の真の姿なのだ。
・歳を取ると、より幸せを感じるようになる。
・楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しい。つまり、笑顔という表情の出力を通じて、その行動結果に見合った心理状態を脳が生み出す。これは、笑顔に似た表情を作るだけで愉快な気分になれるという実験データから得られたもので、行動(出力)は、心理や気分より先だということ。
・同じように、眠くなるから横になるのではなく、横になるから眠くなる。
・人差し指が薬指より短い人は、株儲けしやすい。
・オーガニック食品が健康によいという科学的証拠はいまだに欠如している。農薬を使わない自然派野菜が優れていると感じるのは妄想に過ぎない、という説も。
おばあさん、危ないよ Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur
・私たちは相手の顔の「左半分」を特に重視している。だから、左半分さえ笑っていれば、それだけで何となく笑っているようにみえる。相手にとっての左視野は、自分の「右側」に注意が集まっていることになる。
・人間は、映像や外界の判断を担当するのが「右脳」のため、「左視野」に強い反応をするが、「左脳」も左視野を重視する傾向がある。
・勉強は、「入力」を繰り返すよりも、「出力」を繰り返す方が、脳回路への定着が強い。つまり、教科書を復習するよりも、問題を解く方が効果的だ。
・脳によいもの。例えば、オメガ3不飽和脂肪酸(DHA=魚油に多く含まれる脂肪酸)、フラボノイド(ココア、緑茶、柑橘類など)⇒認知機能低下の改善
・脳の本来の役割は、外界の情報を処理して、入出力変換装置」だった。つまり、当時の脳は、とことん身体感覚(入力)と身体運動(出力)の処理に特化したはず。
・しかし、ヒトの場合、旧脳(小脳、脳幹、基底核)より、大脳新皮質が、発達した。大脳は、身体性が希薄で、解剖学的にも、身体と直接的な連結はほとんどない。
・従って、大脳新皮質が主導権を持つヒトの脳には、身体を省略したがる癖が生じ、その結果生まれたものが、計算力、同情心やモラルなどの機能ではないか。
ま、この辺でやめときます。ご興味のある方はどうぞ、購入されるなり、図書館でお借りになるなりして下さい。
さて、渓流斎ブログの恒例のランキングを下欄に付記しておきまする。
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