「父・伊藤律」と映画「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」 第5刷

哈爾賓朝市は人また人 Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

 7月15日(現地時間)に南仏ニースで大掛かりなテロ事件(84人死亡、50人以上重体)があったかと思ったら、すぐさま、翌日16日には、トルコでクーデター未遂失敗事件ですか…。こちらは日本時間17日午前現在、民間人を含めて265人が亡くなり、クーデターに関与したと目されている約5000人の軍人、宗教人、司法関係者ら、いわゆる強権独裁政治を高めてきたといわれるエルドアン大統領の反体制派が次々と連行されたようです。

 一説では、クーデターにしては、あまりにも計画性がなくおそまつで、過去何度かトルコ国内であった軍によるクーデターとは異質なものだそうですね。要するに、本気で政権を奪取しようというリーダーもなく、参謀クラスの上層部ではなく、一部中堅クラスの反乱だったようです。一般メディアでは、惨状は全く伝わりませんでしたが、死亡者数だけ見ても、おぞましい事件で、巻き込まれた市民は気の毒としかいいようがありません。

 何か、昨年1月のパリのシャルリ・エブド事件以来、ひっきりなしに、世界各国各地でテロや内乱やクーデター等が起きている感じで、神経も休まりませんね。

果物あります Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

 さて、昨日は、1年ぶりにシンポジウムを覗いてきました。

 「ゾルゲ事件」で、自白によって関係者逮捕のきっかけをつくった「革命を売る男」(松本清張)であり、「生きているユダ」(尾崎秀樹)という偽りのレッテルを貼られた日本共産党の幹部で、戦後北京に幽閉された伊藤律の二男伊藤淳氏の「父・伊藤律」(講談社)の出版記念会を兼ねていたので参加してみたのです。(御茶ノ水・明大リバティータワー12階狭い1125教室。参加費1000円。98人参加)

 主催者である渡部さんや由井さんから葉書やメールなどで何度も通知を頂いたため、会場には30分以上前に到着しました。残念なことに、よりによって、ブログに写真でも文章でも何でも書くと、法的手段に訴えかねないメディアを売る男が、後から来て目の前に座り、目礼をしても無視するわ、悪びれもせずかつ丼をペロリとたいらげるわで、シンポの間中、不快でしたので、会が終了次第、二次会も出ずすぐ帰宅しました。

 また、色々書くと、この輩がいちゃもんをつけてくるかもしれないので、講師とタイトルだけを書いておきませう。

 1、伊藤淳氏(著者)「最後まで日本革命を夢見た父」
 2、保阪正康氏(評論家)「臣民・国民・人民―伊藤律は何を信じ、誰に裏切られたのか」
 3、加藤哲郎(早大教授)「歴史としての占領期共産党」

 補足ながら、伊藤律は、渡部氏らの尽力で、ゾルゲ事件端緒説とは無関係で、スパイでも何でもなく、党内で唯一、裏切らなかった男として実証されましたが、組織内では依然、名誉回復されていないようです。

果物あります Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

 私は、個人として生きているので、組織や団体は嫌いで、ヒトの思想信条には興味はありませんが、その思想信条とやらのおかげで、行動まで伴うと、他の庶民は、そのとばっちりを受けて、悪い影響を蒙らざるを得ないので、仕方なく「主義」や「思想」などを勉強したりしますが、そういった組織はあまりにも人間的ですから、やっかみ、そねみがあり、平気で恩人を誣告したり、裏切ったりするものです。こういう話を聞くと、人間というのは、実に嫌な生き物だなあと不快に感じてしまいます。

 たとえ、いちゃもんを付けられても、講演の中で、個人的に面白かったことで一つだけ触れます。

 ゾルゲ事件は、戦後になって、東西冷戦時代に入り、GHQの占領期にG2ウィロビーらによって、「反共」「反ソ」のシンボルとして利用されます。1950年に勃発する米・中ソの代理戦争ともいえる「朝鮮戦争」を目前に控えて、マッカーシズム、いわゆる「赤狩り」旋風が巻き起こります。

 上院議員マッカーシーが「俺は、国務省内の共産党員のリストを持っている」と発言したのは1950年2月9日で、マッカーシズムが本格化するのはそれ以降なのですが、その前にも色々と、米国内でジャーナリストや作家など共産主義者への弾圧が高まります。一番有名なのが、1947年に、後に大統領になった俳優のレーガンによる映画俳優組合内にいる共産主義者のFBIへの告発や10人の著名な映画関係者「ハリウッド・テン」の映画界追放事件などでしょう。

 1947年の非米活動委員会への召喚対象になった監督、俳優らの中には、著名なチャールズ・チャップリンや「ローマの休日」の監督ウィリアム・タイラーがいたことはよく知られています。 そこで、「ローマの休日」のグレゴリー・ペック、「オズの魔法使い」のジュディ・ガーランド、「怒りの葡萄」のヘンリー・フォンダ、「カサブランカ」のハンフリー・ボガート、「スパルタカス」のカーク・ダグラス、「家族の肖像」のバート・ランカスターといった俳優陣は反対運動を行います。

 逆に、告発者側には、「大統領」のレーガンのほかに、これが手柄になったのか、ハリウッド俳優ナンバーワンの地位を確立していくジョン・ウエインをはじめ、あの大人までも大好きなウォルト・ディズニー、「エデンの東」のエリア・カザン、「真昼の決闘」のゲイリー・クーパーらがいました。

◇「ローマの休日」の本当の意味
さて、「ハリウッド・テン」の中には脚本家で監督のダルトン・トランボがいます。彼は復帰後、「パピヨン」や「ジョニーは戦場へ行った」(この映画にまつわる逸話は、大変興味深いのですが、長くなるので残念ながら省略)などの大ヒット作を飛ばしますが、追放期間中の1953年に貧困の中、偽名を使って脚本を書いたのが「ローマの休日」だったのです。

 彼の生涯を描いた映画「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」が7月22日から日本でも公開されるというので楽しみです。

 さて、今回、何度も例に出した「ローマの休日」ですが、日本ではオードリー・ヘップバーン演じる王女さまとグレゴリー・ペック演じる通信社記者の淡い恋愛物語となっていますが、これを書いたトランボは、題名に特別な意味を持たせていました。

 原題は、Roman Holiday 

 もちろん、「ローマの休日」と翻訳しても問題はありませんが、本来の意味は、ローマ帝国で、貴族たちが闘技場で剣士らが闘って殺し合うことを楽しんだことから「人の犠牲によって得られる娯楽」(バイロンの詩から)なんだそうですよ。

 講演会の会場で、質疑応答意見開陳の中で、某氏が「アメリカ人なら、この話は常識で誰でも知っていますよ」と発言されておりました。

そうかなあ?と、ちょっと疑問。

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