差別のない階級社会

なんじゃこりゃ?

 ◇岩波現代文庫「定本 丸山真男回顧
談」 

(昨日のつづき)

 それから、もう一つ。最近、色々な本を読んでいましたら、共産主義と国家主義とではどちらがより個人の自由を奪って人間の尊厳を蔑ろにして暴虐行為を働くのか、はっきし言いまして、どちらが究極の選択なのか、考え込んでしまいました。

 そしたら、岩波現代文庫版の「定本 丸山真男回顧談」で、元大阪朝日新聞記者丸山幹治(白虹事件で、長谷川如是閑らとともに同社を退社)の子息に当たる政治学者丸山真男は面白いことを言っていますね。

 丸山真男は、敗戦濃厚の1945年3月に帝国陸軍二等兵として懲罰のように徴兵された経験を持ちます。その彼が「軍隊時代に朝鮮人の差別はなかったですか?」との質問を受けて、「ないですね。朝鮮人の上官にもよくぶん殴られた。その点では軍隊というところはすごい。階級だけなんですよ」と、実に明解に答えています。

 「軍隊は階級だけ」「民族差別は一切なし」といった丸山真男の体験談は、本当に凄いの一言です。戦後民主主義残留孤児世代にとっては、まさに目から鱗が落ちるような話でした。

つまり、共産主義も国家主義も共通していることは、矛盾しているようですが、差別のない階級主義社会(だからこそ、グルジア=ジョージア=人のスターリンがロシア人を差し置いて党書記長兼国家防衛委員会議長という最高指導者の地位に君臨でき、政治闘争で3000万人もの人間を粛清・処刑したと言われています)。階級のみで、人間は判断され、命令されるピラミッド社会ですから、そこには、個人の自由も、人権も、人間の尊厳も入り込む隙がないということです。

いや、そういう社会では、反権力者は殺害される運命にあり、尊厳などというものは、入り込んではいけないという社会なのです。

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