ローマ・ナヴォナ広場
最近、沢山のコメントをお寄せくださいまして、感謝申し上げます。
さて、今年のノーベル文学賞に、ミュージシャンのボブ・ディラン氏が受賞したということで、驚きの声が上がっています。
しかしながら、彼はもう25年以上も前から候補リストに上がっていました。(主催者が発表するわけではなく、あくまでもリストとして)
25年以上も前にこのリストを見たとき、流石の私も驚いたものでした。
そもそも、私のディランとの出会いがあんまり良くありません(笑)。代表曲「風に吹かれて」を初めて聴いたのは、ピター・ポール&マリーで、彼らの十八番だと思っていました。
ヒット曲「ミスター・タンブリンマン」もバーズで初めて聴きましたし、いずれも「本家本元」のディランの唄を聴いた時は、非常にガッカリしたものです。
でも、フォークからロックに転向したとして、観衆からブーイングを受けた象徴的な「ライク・ア・ローリングストーン」を聴いた時は、ノックアウトされました。この曲は、ローリングストーンズもカバーしていますが、やはり、ディランじゃなきゃ味が出ません。
ということで、ディランの追っかけは、ジョージ・ハリスンの「バングラデシュ・コンサート」にも出演した1970年代(この頃でさえ、既にディランは過去の人とみなされていた)で終わってしまいました。90年代にニューアルバムを一枚買いましたが、とりわけ感心したわけでもありませんでした。(しかし、2005年公開、マーティン・スコセッシ監督の映画「ノー・ディレクション・ホーム」はよかった!)
それが、ディランを見直すきっかけになったのが、2005年に発行された「ボブ・ディラン自伝」を読んでからです。本当に魂消ました。(ネット通販では、この本が1万9480円にも値上がってる!捨てなきゃよかった)その読書量の半端でないこと!仏詩人ヴェルレーヌ、ランボーなんか序の口で、若い頃から、プラトンもアリストテレスも、デカルトもカントも、それにマックス・ウェバーもケインズもあらゆるジャンルの本を読破しているのです。
ディランは、若い時は、暇に任せて毎月100冊近く読んでいたようです。しかも、記憶力が抜群で、いちいち細かい所まで覚えているのです。
嗚呼、これなら、ミュージシャンである前に、超一流の詩人になれるはずだな、と確信したわけです。
ボブ・ディランの本名は、ロバート・ツィマーマンで、ジョン・レノンの「マザー」の中でもその名前が(ディランではなくて、ツィマーマンが)登場します。ユダヤ系で、祖父の代から、オデッサ(あのオデッサ・ファイルで有名)から米国に移住したようです。
新聞各紙(て言うか、共同通信)では、この本名が明記されないので、不思議に思っていたら、どうやら改名して、芸名を戸籍に届けたようですね。ディランは、英国の詩人ディラン・トーマスから借用された、と言われますが、真実は知りません。
1986年に二度目の来日を果たした時の記者会見で、「悩み? あるよ。人間だからね」と発言した言葉が、今でも妙に頭の奥底に残っています。