疲弊したアメリカ、没落した世界、大貧民になった渓流斎

アムール川 Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

 11月8日。もうすぐ世界中が大注目している米大統領選挙です。

  私はアメリカ政治に全く詳しくありませんが、11月8日投票は決まり事なんでしょうね。今年は平日の火曜日ですから。だからこそ、期日前投票があり、これが全体の4割を占めているそうです。ということは、既に投票を済ませている人もあり、メディアの事前調査もかなり選挙民の動向を反映していたのですね。ヒラリーかトランプかー。今両候補は拮抗していて、本当にどちらに転ぶか分からない状況です。

 多くの全世界の民衆は、なぜ、あんな暴言を吐く扇動家のトランプ候補に人気が集まるのか、さっぱり理解できませんが、色々と探っていると、多くの白人労働者階級が真面目に支持していることが分かりました。

 トランプ支持は、根本的にアメリカ全体が疲弊した、その現れです。
 プーシキン像 Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur
 
 背景にはここ10年の、異常とも言える貧富の格差拡大があります。トリクルダウンなんて可笑しな話です。富める者はますます富み、貧しい者は、心まで貧しくなる時代ですよ。

 米商務省の最新の統計によりますと、米国の「貧困層」は4600万人にも及び、世界一の経済大国だというのに、7人に1人が貧困層だと言われています。また、それだけではなく、「貧困予備軍」も控えており、そうなると、驚くべきことに米国民の3人に1人が貧困・貧困予備軍となります。

 数年前にウォール街を占拠した民衆の「1%の超富裕層と99%の貧困層」というスローガンは大袈裟ではなかったのです。

 つまり、中間層の没落です。
レーニン像 Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

 昨晩、NHKスペシャルで、トランプ人気の真相に迫っていましたが、「アメリカの市民は相当疲弊している」というのが私の正直な感想でした。

 「メキシコ国境に万里の長城を築く」などというトランプ候補の戯言は、「移民の国が何を唐変木なことを言っているのか」と思いましたら、ある市民に言わせると、彼らは不法入国なのに「手厚い福祉で教育まで受けられ、携帯電話までもらえる」「英語も話せないのに、レストランのウエイターやウエイトレスをやっているので、注文ができない」といった不満のオンパレードでした。

 彼らに共通して言えるのは、自分たちの権益が侵されているという危機感です。「よくぞ、トランプ候補が移民問題を政治イッシューに取り上げてくれた」と歓迎しているのです。自分たちが納めた税金が、「部外者」に回っていることを怒っていたのです。

 グローバリズムによって、中国などから安価な鉄鋼製品が入ってくるため、オハイオ州のある工場が閉鎖されて失業し、薬物に走って亡くなってしまう多くの労働者の問題も取り上げていました。彼らも識者も「もうアメリカンドリームなんかない。生きている歓びも希望もない」とまで言う始末ですからね。

 ここ数年、公立大学でさえ、授業料が2~3倍に高騰し、親もリストラされているため、奨学金の返済額が何百万円にも及んで、それでも卒業してもいい職業に就けないで絶望している若者たちもおりました。彼らが民主党のサンダース候補を熱狂的に支持していたわけです。

 一方、ヒラリー候補に関しては、「既得権益の代弁者」として、格差社会の推進者ということで、嫌われている側面があったわけです。

ワシントンポストもニューヨークタイムズも、既得権益の代弁者ですから、それを破壊しようとするトランプ候補が脅威に見え、10年以上昔のスキャンダルを持ち出してネガティヴキャンペーンを張っているという一部の人の意見もありますが、なるほど、一理あります。

 外国人からは常軌を逸したように見えたトランプ候補への異常な人気の背景に、こうした要因があったのですね。

 行き過ぎたグローバリズムの反動として、EUを脱退した英国でも、工場閉鎖が相次ぐイタリアでも、極右政党が勢力を伸ばすフランスでも、世界中というより、先進各国が歩調を合わせたように内向きな貿易保護主義、移民排斥主義の方向に移行しているのは、善悪は別にして、人間の業と言いますか、誰にも止められない趨勢のような気がしてきました。好き嫌いも別にして、です。

 今日は真面目過ぎたテーマでしたね(笑)。

 私も没落した大貧民ですから、足を踏まれた人間の痛みは同じように感じることはできます。

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