「甘き人生」は★★★☆

祇園祭「後祭」で賑わう鉾町の一隅 Copyright par Kyoraque sensei

またまた、イタリアに行きたくなり、手元不如意だとそう何遍も簡単には行けないので、イタリア映画を観に行ってきました。

名匠マルコ・ベロッキオ監督の「甘き人生」です。会場の有楽町・スバル座は、昭和40年代の雰囲気をいまだに残す都心のオアシスです。何しろ、早いもん順で、座席指定なんかないんですから(笑)。アナウンスも「ごゆるとお寛ぎ下さい」などと明治時代の演歌調の口振りですからたまりません(笑)。朝一番で行ったらガラガラでした。

名匠ベロッキオとか宣伝されても、私は初めて観る彼の作品でした。日経の映画評で五つ星を獲得していたので、「これは絶対観なきゃあかん」と機会を狙っていたのです。

例によって、これから書くことは、内容に触れるか、観た人でなければ、さっぱり理解できないでしょうから、これからご覧になる方はこの辺で。。。。

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上映時間は2時間10分ということでしたが、随分長く感じられました。4時間ぐらいです。前半は、繰り返しのような場面が多く、緊張感が途切れて退屈してしまいました。

面白くなったのは、終了30分ぐらい前です。観客に1時間半我慢に我慢を重ねさせて、一気に弾けるといった感じです。これはハリウッドではできません。さすがイタリア映画です。

しかし、タイトルの「甘き人生」はどうにかならないもんですかね?恐らく、フェリーニの「甘い生活」(1960年)(こちらも主役は新聞記者)を文字ったのでしょうけど、原題は「Fai bei sogni(よい夢を)」。イタリア人ジャーナリストのマッシモ・グラメッリーニによるベストセラー自伝小説を映画化したものですから、配給宣伝部ももう少し考えても良かったのでは?

主人公の新聞記者のマッシモ(ヴァレリオ・マスタンドレア、44)は、1990年代初めのサラエボ内戦を取材し、イタリアに帰国するとパニック障害に襲われます。子供の頃、母親が急死し、その死因が分からないまま長年葛藤していた潜在意識が爆発した格好でした。

映画では、過去と現在を何度も往復するので、観るのが少し疲れてしまう場面もありましたが、主人公のマッシモがパニック障害で塞いでいた頃に、新聞の読者投稿に対して、その悩みに応える形で自分の少年時代の母親喪失体験を書いて、大反響を呼ぶ辺りから、やっと話が面白くなります。

主人公マッシオの相手役精神科医のエリーザ役は、アカデミー賞外国映画賞を獲得した「アーティスト」のヒロイン役を務めたベレニス・ベジョ(40)でした。

これは実話で、ベストセラーになった作品なので、イタリア人で知らない人は少ないのかもしれません。勿論、本と映画は違いますから、こういう「ワケのわからない」(笑)映画は、ボディーブローのように後になってから効いてくるものです。案外心の奥底に残る作品かもしれません。

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