中村京蔵丈の夕べ

昨日から、因果応報、真景累ヶ淵のためにフェイスブックを始め、この渓流斎ブログと連結させてみました。

吃驚仰天するほどアクセスが急増するかと思いましたら、アッというほどそれほど、あんまし変わらず。不徳の致すところでございました。。。

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扨て、昨晩は梨園の中でただお一人、お友達になって下さった京屋さんこと中村京蔵 舞踊の夕べに、新御徒町の大心堂雷おこし「古代」を手土産に携えて足を運んでみました。

会場は、渋谷駅西口の渋谷区文化綜合センター大和田伝承ホール(6階)。運の悪いことに開場の5時半前ごろから急激な集中ゲリラ豪雨に襲われてしまい、生まれて初めて行くところですから、狼狽えてしまいずぶ濡れ、スニーカーもグジュグジュで、水も滴るいい男になってしまいました(笑)。

会場は、収容人数120人ぐらいのこじんまりとした劇場で、役者さんの表情がオペラグラスなしでよく見えて、雰囲気も良かったです。

京蔵丈は、一般の大学を卒業して国立劇場の研修生となり、四世中村雀右衛門丈の直弟子になった方です。小生が演劇記者だった20年前に知り合い、その頃はまだ若手の部類でしたが、今では幹部クラスとして大活躍されてます。

専門は、という言い方も変ですが、女方ですが、テレビのCMなどでコンピュータソフトの「奉行」の勘定奉行役として出演されていますので、御存知の方も多いでしょう。

昨晩の演目は、「道行初音旅」(義太夫連中)(静御前:中村京蔵、忠信実は源九郎狐:市川新十郎)、「あなめ 小町変相」(五條珠實振付)(小町の亡魂:中村京蔵、旅の男:江添皓三郎)、「風流浮世床」(常盤津連中)(浮世床のお京:中村京蔵、永木の源太:五條珠實)の豪華三本立て。

 「道行初音旅」は、人形浄瑠璃「義経千本桜」(延享4年=1747年初演)四段目の道行で、台詞がない舞踊でしたから、人形浄瑠璃を見ている感じでした。京蔵さん、赤姫役が似合ってました。

 「あなめ」は、平成20年10月に青山の銕仙会能舞台での再演(五度目)らしいですが、私は9年前の舞台も見ておりました。今回は旅の男を現代人という設定に変え、まさに幽玄的な世界になっておりました。あなめ、とは小町の亡霊が「あな目痛し…」と泣いたとか。

 「風流浮世床」は、式亭三馬び「浮世床」などを元に杉昌郎作の世話物舞踊。杉氏は「化政期の味わいを第一に心掛け、新しがることは一切排した」と言いますから、本当に江戸の文化文政時代にタイムスリップしたような気分になりました。一瞬だけ、江戸っ子になれました(笑)。

 三階席(はありませんでしたが)では、プロらしき大向こうさんが、しきりに「亰屋」「きょーや」と掛け声をかけておりました。

 掛け声で思い出すのは、11年前に亡くなった演劇評論家の萩原雪夫先生の言葉です。例えば、尾上菊五郎の屋号は「音羽屋」ですが、「『おとわや』なんて掛け声をかけるのは野暮なんですよ。『おとーわ』、いや、『おたーわ』や『あたーや』の領域にまで行けば通か粋です」

 確かに、江戸っ子は、宵越しの金は持たなくても、野暮は嫌い、粋に生きていたんでしょうね。

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