悲しみのどん底にいる人たちへ

「物事の成り行きに対して、汝の心を煩わせてはいけない。事の成り行きは、あなたが悩もうと何をしようと、関係なく進行するのだ。人生に起こる何事についてであれ、驚くということは何と滑稽でおかしなことであろう」

マルクス・アウレリウス(121-180)ローマ皇帝。五賢帝のうちの5代目(在位161-180)。ストア学派の哲学者でもあり、戦陣の中で「自省録」を執筆。ゲルマン諸国と戦い、ウイーンで病死。

【納得】この言葉を友人から教えられた時、まさに目から鱗が落ちるような感慨に襲われた。サラリーマン生活を経験した人なら誰でも一度は考えたことがあるだろう。「俺がいなければこの会社はもたない」「私がいなければ、仕事は進まない」と。しかし、何てことはない。代わりの人間などざらにいる。自分がいなくても会社はなくならないし、仕事だってテキパキと進む。別に、才能だけがすべての芸能、スポーツ界でもいい。いなくなれば、そのポジションを他の誰かが狙うまでだ。社長でも学会のボスでもヤクザの世界でも同じこと。
しかし、この箴言は「悩んでも仕方がない」と謂わんがための言葉では決してない。仏教的諦観でもないし、キリスト教的宿命論でもない。何と言っても、何不自由のない地上の最高権力者ともいえるローマ皇帝から発せられたという事実が興味深い。人生に対する思惟力と洞察力が生半可ではない。

この言葉を今、悲しみのどん底にいる人たちへ贈りたい。

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