映画「ベルリン・フィルと子どもたち」を見ました。感動のドキュメンタリーといった至って陳腐な感想しか浮かびませんが、「見てよかった」と思いました。最近、見たい映画が目白押しに公開され、「インタープリター」にしようか「キングダム・オブ・ヘブン」にしようか「クローサー」にしようか、はたまたアカデミー賞の「ミリオン・ダラー・ベイビー」にしようか迷っていたのです。
結局、「易占い」でこの映画に決めました。
正解でした。
内容は、シンプルです。「プロジェクトX」風に言えば、中退者が多く、就職できても、町工場ぐらいしかない、将来の夢も希望もない「荒れ果てた」高校の子どもたちに、急にあのベルリン・フィルとダンスで競演するという話が持ち込まれ、最初は、ふざけて、やる気のなかった子どもたちが、徐々に、使命感に駆られて、最後は見事な舞台を披露するという話です。
いや、少し「脚色」しすぎました。ベルリンに住む8歳から20代初めの「子ども」たちが無作為で選ばれて、サイモン・ラトル率いるベルリン・フィルと競演するというのは事実です。
選ばれたのは、イゴール・ストラヴィンスキーの「春の祭典」。鳥肌が立つほど素晴らしい演奏でした。ダンスを踊った子どもたちは、これまでほとんどクラシックを聴いたことがないようでした。またまた「プロジェクトX」風に言えば、恵まれない下層階級出身の子どもたちです。中には内戦で両親らを殺害されて天涯孤独でドイツに渡ってきたナイジェリア出身の16歳の少年もいました。
ベルリンは、ベルリン・フィルハーモニーを持つだけに、クラシックの本場のように思っていたのですが、どうやら、ほとんどの若者は今流行りのラップに夢中のようでした。どこの国でも同じなのですね。
大団円はやはり、250人の子どもたちが、ベルリン・フィルの演奏に合わせて、踊るところです。何か涙がとまりませんでした。「あの荒くれのヘンリーの奴が…」と、どつきたくなりました。おっと、また脚色してしまいました。
最後にサイモン・ラトルの言葉を。「ベルリンの経済破綻は想像以上だった。しかし、芸術は贅沢品ではない。水や空気と同じように必需品なのだ」