知床旅行の時、羅臼町のマッカウス洞窟に立ち寄りました。
ここに、光る苔があるというのです。
ヒカリゴケ?
ああ、そういえば、武田泰淳(1912-76)に名作「ひかりごけ」があったなあ、と思いながら、痛い膝と腰をかがめながら緑色にボーと光る苔を眺めてみました。
そしたら、何と言うことでしょう。
この光る苔こそが武田泰淳のひかりごけだったのです。
「ひかりごけ」は1954年の作品。北海道大学の助教授を辞めて作家に専念した武田泰淳が満を持して発表したものでした。
知床沖で難破した船の船長が死んだ船員の肉を食べて生き延びた実話を元に創作したもので、もともと、羅臼町長を1995年まで3期12年務めた佐藤盛雄さん(76)が「羅臼郷土史」に書いたものでした。
佐藤さんは、1953年に武田泰淳の訪問を受けて会ったといいます。
「実際に武田さんと会ったのは10分程度でした。あの頃丁度、洞窟のヒカリゴケが話題になっていた。別な場所であった事件とヒカリゴケを結びつけた武田さんの文学的発想は、さすがと思った」という佐藤さん。(この項、北海道新聞による)
そのひかりごけ。
よく分かりにくいですが、とくとご覧あれ。