宮沢賢治『あたまの底のさびしい歌』

思わぬお年玉プレゼントが贈られてきました。

 

宮沢賢治の書簡を集めた『あたまの底のさびしい歌』(港の人)という本です。

 

畏友里舘勇治君が送ってくれたのです。港の人は、彼が鎌倉で経営する出版社です。さほど大きな出版社ではないので、年に数冊しか出版できませんが、極めて良心的な出版社で、売れる部数が少なくても良質の高い文芸書を世に出しています。

 

興味を持たれた方は、ホームページをご覧ください。 http://www.minatonohito.jp

 

宮沢賢治の詩や小説は、何冊か読んだことはありますが、手紙を読むのは、今回が初めてでした。

 

手紙といっても、小説のようなお話が随所に出てくるの、「この人は根っからの詩人なんだなあ」と思ってしまいました。もっとも、生前は、作品はほとんど売れることはなく、「残った書き置きは、世迷言だから、すべて焼却するように」と遺言したらしいのですが、友人たちが奔走して、出版にまでこぎつけます。「雨ニモ負ケズ」も手帖に走り書きされていたものでした。

 

1921年に友人の保阪嘉内へ宛てた手紙の中で、こんな文面があります。

 

「専門はくすぐったい。学者はおかしい。実業家とは何のことだ。まだまだまだ。」

 

この後、「しっかりやりましょう。」が実に21回も登場するのです。

 

思わず、1980年に公開されたジャック・ニコルソン主演の映画「シャイニング」(監督はスタンリー・キューブリック、スチーブン・キング原作)を思い出してしまいました。ニコルソン演じる作家が、雪に閉ざされたコロラドのホテルで執筆活動中に、頭がおかしくなり、「私には休息が必要だ」という同じ文章を、百枚近くタイプで打っているシーンです。

 

わずか37年の生涯でしたが、宮沢賢治という人は知れば知るほど分からなくなる作家です。また、彼の童話が読みたくなってきました。

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