医療ジャーナリスト松井寿一さんの近著『がんを友に生きる』(元就出版)を面白く読んでいます。
仏教で「四苦八苦」といいます。
「四苦」とは、生老病死。「八苦」とは、愛別離苦、怨憎会苦、求不得苦、五蘊盛苦のこと。この「苦」とは苦しみのことかと思っていたら、「思い通りにならないこと」を意味するらしいのです。
つまり、生まれてきたのも、誰かに頼んで生まれてきたわけではない。老いて病をえて死ぬのも同じ。全く思い通りにならない。愛別離苦は、どんなに愛し合っていても必ず別れがくる。怨憎会苦とは、顔も見たくない嫌な人に会わなければならないこと。求不得苦とは、欲しいものが手に入らないこと。五蘊盛苦は、身体の機能が思うように働かず、思うようにならないこと。
まさに世の中は自分の思い通りにならないことを、お釈迦さまは喝破したのです。
松井さんは、無着成恭さんから聞いた話を書いています。この話をしたいがために、今日はこのテーマにしました。
「財布から一万円出そうとして落としました。すぐ拾いますよね。なぜですか。自分のものだからです。傘をぶらぶら振っていて落としました。これも拾います。自分のものだからです。では生命を落としたら拾えますか。拾えないでしょう。生命は自分のものではないからです」
今日、私はあまりいいことがありませんでした。要するに、全く思い通りにならないことばかりが起きました。しかし、この本を読んで、元気をもらい、自分の陳腐な思考回路が馬鹿らしくなりました。これからは、度々、引用させてもらおうかなあと思います。