ヴェニスにて
ついに買ってしまいました。前から欲しかった帽子です。銀座の老舗「トラヤ帽子店」の前を通りかかったら、たまらず欲しくなってしまいました。この店は創業90年だそうです。90年前といえば、1916年。第一次世界大戦、映画「戦場のアリア」の頃ですね。
買ってしまったのは、ボルサリーノ製のハンチング帽です。ボルサリーノといえば、1960年代にアラン・ドロンとジャン・ポール・ベルモンドの「2大スター」の共演映画がありました。てっきり、ソフト帽のことかと思っていたら、ブランド名だったのですね。これは、前にも「007」でも書いた「product placement」の最たるものです。ボルサリーノ社が相当なお金をこの映画に投資したのでしょうが、1930年代から、ボルサリーノの高級帽子を被れることだけでも社会的ステイタスがあったようです。
本場イタリア製は、目の玉が飛び出るほど高かったので、ボルサリーノのライセンスを得て製造した日本製にしました。イタリア製の半額で済みましたが、ロゴマークも同じだし、外見からは区別できないでしょう。それに、日本製の方がしっかりしていたりして。
この帽子を被って、銀座1丁目のイタリア料理店「イタリー亭」でランチのナポリタン(900円)を食べて(これは美味でした。ちゃんとプチトマトも入ってましたよ。お奨めです)、そのまま銀ブラをして、真珠のミキモトの前を通ったら、ばったり、ノンフィクション作家の松瀬学君(あえて業界の後輩だったもので)に会いました。17,8年ぶりくらいなのに、二人とも、一週間ぶりに会う感じでした。私もちょうど、東京新聞で、この日、彼が連載しているエッセイを読んだばかりで、「どうしているかな?元気かな?」と彼のことを思っていたところだったので、その偶然の一致には驚きました。
とはいっても、最近、私の予感がよく当たってしょうがないのです。いつも、偶然とはいっても、何かその前に予兆や前兆や予感があったりするのです。
彼は通訳・翻訳家の奥さんと一緒で、「印税がたくさん入ったから、今、ミキモトで300万円の指輪を買ったところです」と軽口を叩いていました。彼の性格は昔から少しも変わっていません。
あまり時間がなかったもので、名刺だけを交換したところ、彼は私の帽子に気づき「『刑事コロンボ』じゃなくて『刑事ころんじゃった』みたいですね」と言うではありませんか。これには私も思わず苦笑してしまいました。
彼のことを貶しているのではなく、彼は本当にいい奴、ナイス・ガイです。早稲田のラグビー部出身で、スポーツ関係の本を出しています。彼の本を書店でみかけたら買ってあげてください。