ポンペイ
今、話題の映画「それでもボクはやっていない」を見に行ってきました。新聞記者如き、映画評論家風情とは違って、ちゃんと自腹でお金を払って見てきたので、奴らよりは説得力はあると思います。平日の午前中に某所で見たのですが、やけに人が多くて並んでいて、チケットを買うのに10分も並びました。不思議だなあ、と分からなかったのですが、後で、その映画館は毎週水曜日は「レディースデイ」で、女性のみ1000円で見られることが分かりました。道理で…。これ以上書くと、女性から顰蹙を買うので、止めておきます。私も女装していけばよかったと後悔しています。
さて、映画の話です。エンターテインメントでもハッピーエンドでもないので、現実の辛さを忘れて気晴らしで見たい人は止めた方がいいと思います。全く、身につまされる話です。粗筋については、これだけ、マスコミ等で情報が氾濫しているので、「痴漢冤罪事件」を扱った裁判映画とだけに留めておきますね。
普通、映画はシンデレラ・ストーリーにしろ、SFにしろ、現実には「ありえない」ことをテーマに取り上げるものです。ところが、周防正行監督は、これを逆手にとって、映画ではありえない、現実では「ありえる」ことを映画化したのです。(かなり長い間、取材し、実話を元に脚色されています)
ですから、本当に身につまされてしまうのです。夢も希望も理想もないのです。要するに現実にありえてしまうのですから。
役者も随分自然な演技をしていたので、まるでドキュメンタリーを見ているようでした。さすがに瀬戸朝香は女弁護士には見えませんでしたが、主人公の加瀬亮も、裁判官役の正名僕蔵も、「この人は痴漢ではありません」とかばったOL役の唯野未歩子も、被害者の女子中学生役の柳生みゆも、まるで演技をしているのではないような名演技でした。脚本を担当した周防監督には、説明口調の台詞が少なく、裁判所で暴言を吐いたり、現実でありえてしまうことばかりなので、感服してしまいました。
男性陣には「転ばぬ先の杖」として見て頂ければいいのではないでしょうか。ただ、面白半分に「ガハハ」と笑って、内容もすっかり忘れてしまうものだけが映画ではありませんから。
私も満員電車に乗るときは、せめて両手を挙げて降参のポーズをすることにします。