話題の映画「バベル」を見てきました。
うーん、何というか、フラストレーションの塊となって、映画館を出てきましたね。もちろん、後悔ではなく、見て本当によかった。今年のベスト5に入るのではないかと思っています。
監督のメキシコ人のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ。監督の意図が透けて見えるようでしたね。この映画は観客にフラストレーションを巻き起こすためが目的なのだと。
モロッコと東京と、アメリカと国境に近いメキシコが舞台。別々に起こっている事件が、同時につながりがあるのですが、いずれも解決しないままで終わってしまう。そこにはヒーローもヒロインもいなく、勧善懲悪もカタルシスも何もない。これまでのハリウッド映画の王道とは正反対の道を行く作品なのではないでしょうか。
この映画を見た人は誰でも、深く深く、沈思黙考させられてしまいます。
イニャリトゥ監督は何で日本の若者をあのように、退廃的で絶望的に描かなくてはならないものかと思ってしまいました。菊池凛子の裸のシーンは必要なのかなあ、とも思いました。が、モロッコやメキシコの人たちと比べ、あまりにも自然のない、コンクリートジャングルの中で暮らしている東京人にとって、残っている自然は人間の裸くらいしかないのではないか、という監督の皮肉なメッセージが聞こえてきます。
全体的には、この映画の主題は「コミュニケーション・ブレイクダウン」にあるようですが、東京人が、一番精神的に病んでいるような扱い方ですね。東京でも、もっと静かな落ち着いたところがあるんですけどね。檜町公園、赤坂氷川神社がそうでした。
それにしても、俳優連中が皆素晴らしかった。まるで、ドキュメンタリーを見ているような感覚でした。ブラッド・ピットはいくつになったのか、随分老けましたね。役所公司も日本代表としてよく頑張っていました。
カタルシスがない、と書きましたが、ブラッド・ピット扮するリチャードがお世話になったモロッコ人の通訳兼ガイドに謝礼を払おうとすると、モロッコ人が最後まで受け取らなかったシーンです。それまで、モロッコ人を訳の分からないことしか話さない野蛮人のような描き方でしたが、そのシーンだけは救われる気分でした。
役所公司と菊池凛子の親娘関係は身につまされる感じでした。
このように、この映画は見る人の国籍、性別、職業、家庭環境によって、感想は様々でしょう。一つの意見はないと思います。