「ここは何処?」「私は誰?」がこの本で解明される=篠田謙一著「人類の起源」

 今年は、ジェレミー・デシルヴァ著、赤根洋子訳「直立二足歩行の人類史  人間を生き残らせた出来の悪い足」(文藝春秋)、エマニュエル・トッド著、 堀茂樹訳「我々はどこから来て、今どこにいるのか?」上下巻(文藝春秋)と興味深い人類学史に触れることが出来、学生時代に読み損ね、まだ未読のレヴィ=ストロースの名著「悲しき熱帯」上下巻(中公クラシックス)を含めて、わずか5000年程度の人間の文明の歴史よりも、1000万年近い原初の人類の歴史から解き明かしてくれる文化人類学、古代人類学への関心が大いに高まりました。

 今、やっと読み始めることが出来た篠田謙一著「人類の起源」(中公新書、2022年10月30日第5販)は、私にとって今年の掉尾を飾る「大トリ」みたいな本で、久しぶりにワクワクしながら読んでおります。著者は国立科学博物館の館長を務め、私と同じ世代の人なので、ということは、中学、高校ぐらいまではほぼ同じ共通の教育を受けてきたので、読んでいて同感、実感することが数多あり、実に分かりやすく、面白いのです。

 我々の世代は、人類学と言えば、教科書では「猿人―原人―旧人ー新人」の進化過程を辿り、最も古い「類人猿」としてアウストラロピテクスが発見された、といった程度しか中学、高校では習いませんでした。そんな「定説」が次々と引っ繰り返され(塗り替えられ)て、「新発見」が続出するようになったのは、意外にも21世紀になってからだったのです。ということは、比較的新しい学問、と言ってしまえば、語弊がありますが、いきなり最先端の学問になったのです。道理で、この本に書かれていることは、専門家以外誰も知らないことばかりでした。

 著者によると、そんな化石人類学の飛躍的発展には、2006年から実用化されるようになった次世代シークエンサー(化石人類のサンプルの全てのDNAを高速で解読)の存在が大きいといいます。しかし、著者は「科学は間違うものだ」という認識が必要だ、とも言います。何故なら、これまでの、科学の発展は、たゆまぬ努力による間違いと訂正の歴史だったからだと説明します。

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 それでも、現在の「最先端の科学」が解明した人類の起源は以下のようになっています。(「約」と「?」は省略します)

・700万年前=チンパンジーとヒトが分岐する。サヘラントロプス・チャデンシス(2001年、北アフリカのチャドで発見)

・600万年前=オロリン・トゥゲネンシス(2000年、ケニアで発見)

・580万年前~520万年前==アルディピテクス・カダッバ(エチオピア)

・440万年前=アルディピテクス・ラミダス(エチオピア)

 ※サヘラントロプス属とオロリン属とアルディピテクス属の3属を「初期猿人」と呼ぶ

・420万年前~200万年前=アウストラロピテクス属(勿論、1974年に発見された有名なルーシーも含みます)

・260万年前~130万年前=パラントロプス属 ※ここまでが猿人

・200万年前ホモ属誕生。初期のホモ属(ハビリスとルドルフエンシス)※猿人と原人の中間

・200万年前~30万年前=原人(ホモ・エレクトス=最初の出アフリカ、北京、ジャワなど。ホモ・フロレシエンス=インドネシアフローレス島。ホモ・ナレディ=南ア)

・60万年前~30万年前=旧人(ホモ・ハイデルベルゲンシス)

・30万年前~4万年前=旧人(ネアンデルタール人)※60万年前に、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスが分岐。その後、両属は混合した形跡も。

・20万年前~現在=新人(ホモ・サピエンス)登場

・6万年前=ホモ・サピエンスが本格的に出アフリカ、世界展開

・1万年前=農耕開始

・5000年前=現生人類の文明開始

 ※取り敢えず、ここまで。つづきが楽しみです。

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