人との出会いと別れ

 

 

 

昨日あったとりとめもない事を書きます。全く個人的体験なので、恐らく、あまり面白くないと思います。日記のつもりで書くのですから…。

 

午前中は、テレワーク。その仕事でお世話になっている大野さんが、今月いっぱいで辞めるという話を聞いて、本当に残念に思いました。彼女からは、メッセンジャーを使った「チャット」なるものを教えて戴き、同時進行で、仕事での不明な点を問い合わせると、返事が数秒で返ってくるのです。こちらが、次の質問をエッチラホッチラ書いている途中で、もう向こうから返事が返ってくるのです。大変優秀な方です。次はどんな仕事に移られるのか知りませんが、次の職場でもかなり活躍されると思います。私としては、残念ですが。

 

午後は、市ヶ谷の法政大学に出掛け、K教授から、約1時間半、文壇の最新事情についてお話を伺う。教授の研究室はタワー校舎の20階にあり、興味深い話をたくさん聞くことができました。前日の夜は、ノーベル文学賞の発表があり、村上春樹氏が受賞した場合に備え、某マスコミから夜の8時まで「居残り」を命じられたそうでした。

 

夕方、「鍵屋」で知り合った野村さんと虎ノ門の居酒屋「鈴傳」で飲む。野村さんは、このブログを読んでくださっている方の一人で、どうやら、私が毎日、お酒を飲み歩いていると誤解されているようでした。野村さんには、私のある仕事でお骨を折っていただいたので、感謝の気持ちを述べたかったのです。大変、気さくで饒舌な方で、私と会った時は「何か初対面のような気がしなかった」とおっしゃるのです。何か不思議な人です。生保関係のお仕事をされているせいか、「渓流さん、人生で何が一番大切なのか分かりますか」などと、急にシビアな質問をしてくるのです。

私は、返答に困っていると、「それは家族なんですよ。愛なんですよ」とおっしゃるのです。うーん、一瞬、変な宗教家かなあと思いましたが、純粋に書生ぽい質問と回答をしてきたのです。私なんかは、多感な時期に太宰治を愛読し、「家族は諸悪の根源」だの「子供より親が大事と思いたい」などという全く無頼なフレーズが頭にインプットされ、そのおかげで、今の有様があるのではないかと思ってしまいました。

野村さんは、さらに「渓流さん、あなたは人生で何をしたいのですか」と質問されるのです。酔っていなければ、とても恥ずかしくて答えられないのですが「私は自称ジレッタントですから、若い頃は、アンドレ・ブルトンのシュールレアリスムのように何か芸術運動を起こしたかったですね」と答えて煙に巻くのが精一杯でしたが…。

 

また、野村さんは前夜のプロボクシングの亀田大毅については、相当、腹が立っている様子でした。「亀田は18歳でしょう?33歳のチャンピオン内藤に対して『おまえ』呼ばわりですからね。私は大阪出身ですが、亀田3兄弟は大阪の恥ですよ。『いじめれっ子』とか『ゴキブリ』などと暴言を吐き、長幼の序がなっとらんですよ。あんな風に甘やかせて育てた父親の史郎トレーナーが悪いし、ああいうものを持て囃す公共の電波のTBSも悪い」というのです。このWBCフライ級タイトルマッチで、プロレスまがいのタックルなどをして反則行為をした亀田選手の処分について、目下、日本ボクシングコミッションが検討しているそうですから、この話題はまだまだ続きそうです。

野村さんは、二次会があったので、早々に別れ、私は一人で自宅近くのパブに入りましたが、ここで、ひと悶着がありました。何度か行ったことがある店です。最初、戸口の隙間から見て、かなり混雑していたので、引き返そうとしたところ、店の人が急に出てきて「カウンターなら一つ空いていますから、どうですか」と言うのです。そこまで、奨めてくれるのなら、ということで入ることにしたのです。これが大失敗でした。

 

隣りは、女性が一人で飲んでいました。袖を触れ合うのも他生の縁ですから、とりとめのない話をするようになりました。どうやら、彼女は英語が得意で、よく外国に行き、オーストラリアでは、ウエイトレスのアルバイトをしましたが、アイリッシュ系の英語はさっぱり聞き取ることができなかったという話や、カンボジアで仕事を見つけ、来週、プノンペンに向けて出発するなどという話をしてくれるのです。1時間くらい話していたのではないでしょうか。

彼女が、トイレで席をはずすと、店のマスターが近づいてきて「あちらの女性とはもう話をしないでください。ここはそういう店ではありません。ご迷惑ですから」と言うではありませんか。私は、一瞬、自分が何か悪いことをしているのではないかと錯覚しましたが、非常に腹が立ってきました。彼女が席に戻ってきたので、私は「あなたとしゃべってはいけないと、ここのマスターが言うので帰りますよ」と告げて退席しました。レジでお金を払ってから、相当頭にきていたので「随分、ひどいことを言うじゃないか。もうこんな店には二度と来ないからな」と捨て台詞を言って帰ろうとしました。客を何だと思っているんだ、という感覚です。長く生きてきましたが、こんな侮辱を店の人間から言われるのは生まれて初めてでした。

マスターは、血相をかえて、階下まで追いかけてきました(店は二階にあります)。そして「もう来てくれなくて結構です。女性のお客さんが一人で来て、楽しんでいるのに失礼でしょう?」と言うではありませんか!若かったら、こんな失礼な奴は殴っていたでしょう。「僕が彼女に迷惑をかけたとでも言うのかい?それなら、彼女に聞いてみようじゃないか、証人として」。もう行きがかり上、引き返せなくなりました。

彼女は来てくれました。その時、初めて彼女の名前がエリさんだということが分かりました。店長は丘という名前でした。私は「あなたに話しかけてご迷惑でしたか」とエリさんに聞きました。するとエリさんは「そんなことはありません。そんなことはありません。以前、この店で、私が一人で飲んでいたら絡まれたことがあったので、今回も丘さんが気をきかしてそういう態度を取ったのだと思います…丘さんは、本当に本当にいい人なのです」

「じゃあ、僕が、あなたに迷惑をかけたわけではありませんよね?このマスターは、僕がまるで、あなたをかどわかそうとしたみたいな扱いをするんですよ」

「全然迷惑じゃありません。楽しかったですよ」

「じゃあ、このマスターに証明してくださいよ。僕はひどく傷つきましたし、あなたに迷惑をかけていないことを証明してくれれば、それでいいですから」

というようなことがありました。最後まで、マスターから謝罪の言葉がなかったので、不愉快でしょうがなかったです。でも、わざわざ、この店の名前を出すつもりはありません。つぶれてほしいとも願いません。もう二度と行かないし、どうでもいいのです。ただ、最近、いや、この1年、ひどく人との「別れ」が多すぎるなあと実感するばかりです。私の周りからどんどん人が去っていくのです。何十年も付き合った友人もいれば、仕事でお世話になった大野さんや、エリさんのように行きずりの人も含めて、今年になって、出会うとすぐ別れがあるのです。

何とも不思議な年です。

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