最近、どういうわけか、自分の中学生時代のことばかり思い出されます。もう大昔の話ですが、自分の人生でも最悪だった時期の一つでした。
13歳にして、「人生は一行のボオドレエルにも若かない」と虚無的になってしまったのです。このまま、いい学校に入って、いい会社に入って、郊外に庭付き一戸建て住宅を建てて、家族と幸せに暮らすといったありきたりのエスカレーターに乗ったような人生を送ることが許せなくなってしまったのです。勉強にも手が付かなくなり、学業成績も坂道を転げ落ちるように急降下し、高校受験も失敗してしまいました。
あの頃の「孤立無援」といった気分は今でも思い出します。
でも、振り返ると、あの頃、孤立感を味わったのは自分だけではなかったのかもしれません。中学生というのは子どもから大人になる中間のような存在で、電車賃だけは大人料金を取られるのに、気持ちはまだまだ子どもの所がありますからね。
中学1年の時のクラスメートに野島さんというちょっと大人びた無口な女の子がいました。彼女も休み時間、友人とつるんでワイワイ騒ぐことなく、一人でいることが多かったのですが、ある映画スターだけは特別で、そのスターのブロマイドをいつも持ち歩いていました。そのスターの名前は、ジェームス・ディーン(1931~55年)。「理由なき反抗」や「エデンの東」などわずか数本に主演して大スターの座を獲得しましたが、交通事故で24歳の若さで亡くなってしまいました。
ジェームス・ディーンは私が生まれる前に既に亡くなってしまったので、私自身は知らなくて、野島さんからその存在を知りました。彼が出演した映画はその後、何度もリバイバル上映されたり、写真集も出版されたりしたので、日本にも根強いファンが多いのですが、「孤立無援」に悩む中学生が見ると、彼が演じる反抗期の挫折感や孤独感には妙に共感してしまうのは確かです。私も一気に大ファンになりました。
話は少し変わって、先日、テレビの「開運 なんでも鑑定団」を見たら、700万円と450万円で購入したという古くてボロボロの汚い(恐らく臭い)リーバイス501XXのジーンズ2点が出品されましたが、世界的にも数点しか残っていないヴィンテージものということで、何と、何と2点で2000万円もの値が付いて、超びっくりしてしまいました。
そこで、リーバイスのジーンズなら、映画「理由なき反抗」などで格好よく履いていたジェームス・ディーンの姿を思い出し、自分も一着ぐらい買ってみようかなあ、と思い、調べてみたのです。
そしたら、これまた吃驚。ジェームス・ディーンが履いていたジーンズは、リーバイスではなかったのです。「Lee」の101ライダースというブランドでした。確か、ジェームス・ディーンはリーバイスの日本のコマーシャルやポスターで出ていた記憶があるので、おかしいなあ、と思いましたが、ワーナーブラザースの衣装庫にあったジェームス・ディーンのジーンズは確かに「Lee 101z riders」でした。
今は、チャットGPTなんか使わなくても、何でも調べられる時代になりましたからね。私は、自分の中学生時代の「孤立無援」感を思い出してしまいましたが、いつか2000万円のリーバイスではなく、Lee の手頃なジーズンを買ってみようかなと思っています(笑)。