動画サイトは「承認欲求」の強さの表れか?

 旧い友人のAさんは、忘れた頃にやって来る人です。もう疎遠になったのかな、と思った頃に、急に、メールを送って来たりするのです。昨晩も突然でした。履歴を見たら、実に約1年ぶりのメールでした(笑)。

 内容は大したことではありません。「このYouTubeに出ている元朝日新聞記者・ジャーナリストの〇〇さんは御存知ですか?」といったものでした。メールにリンク添付されていたので、早速見てみましたが、私は存じ上げない方でした。(でも、間接的には彼の周囲の人の中で私が昵懇にさせて頂いている人もおりました)

 「マスコミでは語られない報道の真実。日本と報道を滅ぼす存在達との戦い。特別動画講義」と題して、政財界のスキャンダルの真相に斬り込み、舌鋒鋭く、口角泡を飛ばして、語りとばしておられました。何十万という読者さまがいらっしゃるようで、コメント欄には「情報量の多さに驚きました」「表に出ないカラクリを知るたびに日本の衰退の加速を感じます」「正義の味方」などといった賛美のオンパレードです。

 その方は、かなり自信満々の語り口でしたが、そのYouTubeは、約1時間とあまりにも長いので全部を見ませんでした。とはいえ、ジャーナリズムの世界もここまで来たか、と思いましたね。他のYouTubeを見れば、ジャーナリストと称する有名無名の有象無象の皆様方が「我よ、我よ」とばかりにサイトをアップされておりました。今の若い人たちは、新聞も週刊誌も、もう面倒臭い活字は読まないんでしょうね。YouTubeは、お笑いや映画、音楽、演劇、美術などのプロモーションに最適だとは思っておりましたけど、ジャーナリストもYouTubeで稼ぐようになったんですね。

Tsuquiji

 ジャーナリストという世間では一応「潔癖」だと思われている商売も、YouTubeの視聴者を引くためにはある程度過激でなければいけません。「絶対に儲かります」とか不確実性のことでも自信満々に断言しなければいけません。(予言が外れたり、間違っていたりしたら即、削除!)そして、アクセス数を稼ぐには肩書がモノを言います。ジャーナリスト以外に「元朝日新聞記者」とわざわざ名乗っているのは、朝日新聞がマスコミ界一の知名度と信頼度があると思っていらっしゃるからなのでしょう。確かに、大変失礼ながら、「元産経新聞記者」とか「元時事通信記者」では格が落ちますからねえ。「元読売新聞記者」も残念ながら弱い…。

 でも、ここだけの話ですが、(ブログではありえない!)正直、見ていて恥ずかしくなりました。いくら、それが真実で、正義であっても、雁首を晒して、ジャーナリストを称して登場して持論を展開するなんて、まず、私にはあり得ない。ブログで精一杯ですよ。ブログでも恥ずかしいぐらいなのに(笑)。

 それにしても、旧友のAさんは、何でこんな動画を送って来たのでしょうか?

 一応、それとなくワケを聞いてみますと、こんな答えが返って来ました。

 「この『元新聞記者』は、現役時代の空気が忘れられず、ネットの渦に巻かれて、いつまでも承認欲求が強いのかもしれません。老婆心ながら、良からぬ外的ストレスも抱えることでしょうに」

 動画サイトは、「私を見て、見て!」「ねえ、私の話を聞いて、聞いて!」のオンパレードです。普通の正常な人が見たらウンザリします。そのような作為を、Aさんは「露出狂」とは言わずに、「承認欲求が強い」なんて、随分、上手い事を言うなあ、と思いました。座布団2枚あげたいぐらいです。

 本人が至って生真面目で、悪や不正を追求している姿は美しくもありますが、世の中、そう単純ではありません。欧米諸国から「戦争犯罪人」と訴追されているロシアのプーチン大統領でさえ、中国や北朝鮮などにとっては、欧米の悪と対峙する正義の味方ということになっていますからね。

 いくら高邁な精神で、自己の良識を信じて、ネットやメディアに登場したりしても、「どうせ金儲けだろ?」と見透かされます。だから、私は、結果的に、自分で金儲けでブログを書いていることを棚上げにして、動画サイトはあまりにも露骨なせいか、「恥ずかしいなあ」と思ってしまうのです。

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