先日放送されたNHKの「映像の世紀 バタフライエフェクト」で、「イギリス王室の百年」をやっておりました。
120年以上昔に亡くなったヴィクトリア女王(1819~1901年)の生前の貴重な動画(フィルム)や、女王崩御後、その子孫が大英帝国やドイツ帝国などで王位を継承して、第一次世界大戦では、ヴィクトリア女王の孫たちが敵味方に分かれて「骨肉の争い」となり、第二次大戦でもまた孫と曾孫が敵味方に分かれて戦った様を「映像」で再現しておりました。そんなフィルムが残っていたとは!まさに驚くほかない番組でした。
何で欧州諸国同士の戦争が孫や従兄弟同士の骨肉の争いになるのか? ーそれは、列強諸国同士が政略結婚で自分の王女を他国の王子に嫁がせたりしているからです。日本でも戦国時代は特に、戦略結婚が政治や外交の基本にさえなっていたと言ってもいいでしょう。美濃の斎藤道三の娘濃姫と尾張の織田信長との結婚、信長の娘五徳姫と徳川家康の嫡男信康との結婚など枚挙に暇はありません。
第一次世界大戦とは、1914年から18年にかけて、主に同盟国(ドイツ、オーストリア、オスマン帝国など)と連合国(英、仏、露など)との間で行われた戦争でしたが、「最高指揮官」であるドイツ帝国のヴィルヘルム2世と大英帝国のジョージ5世は従兄弟で、ヴィクトリア女王の孫同士という関係でした。つまり、ヴィルヘルム2世は、ヴィクトリア女王の長女ヴィクトリアとドイツ皇帝フリードリヒ3世との間の嫡男、ジョージ5世は、ヴィクトリア女王の長男エドワード7世から継承した英国王ということになります。
また、連合国側のロシア皇帝ニコライ二世は、ヴィクトリア女王の孫と結婚したことにより、英国王室と縁戚となります。ヴィクトリア女王の孫とは、ヴィクトリア女王の王女アリス(ヘッセン大公妃)の娘アレクサンドラです。第一次大戦の最中にロシア革命に遭遇し、ニコライ二世は英国に逃れようとしましたが、ジョージ5世から認められず、母国で家族もろとも処刑される悲劇を生みます。(ジョージ5世とニコライ2世は、風貌と体格がそっくりだったので、衣服を替えて周囲を驚かせたという逸話が残っているにも関わらず、ジョージ5世にはロシア赤軍との戦争を回避したい思惑があったようでした。)
第一次大戦から約20年後の第二次世界大戦では、英国はジョージ5世亡き後、長男ディヴィッドが、エドワード8世として即位したものの、「シンプソン事件」でわずか325日の在位で廃位となり、弟のアルバートがジョージ6世として即位し、はとこ(また従兄弟)に当たるドイツ皇帝ヴィルヘルム2世(オランダに亡命し、客死)と対峙します。(実際は、独ヒトラーと英チャーチルとの戦いでしたが)
ジョージ6世は、映画化された「英国王のスピーチ」でも知られるように吃音を克服して、戦時中、ナチスによる空爆で損害を受けた英国民を鼓舞しました。昨年亡くなったエリザベス2世の父君に当たる人です。
エリザベス女王は、我々と同時代の人ですが、ヴィクトリア女王は歴史の教科書でしか知らない遥か大昔の人だと思っていました。でも、番組で彼女の動画を見たりすると、「つい最近の人だったのか」と思ってしまいます。不思議なものです。