2月16日、北極圏にある刑務所で、プーチン政権によって殺害されたのではないかとされているロシアの反体制指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏(行年47歳)。日本のマスコミでは、「ナワリヌイ」と表記されますが、英字紙では Alexei Navalny と表記されています。このまま日本語に置き換えればアレクセイ・ナヴァルニイとなります。ナワリヌイとは読めません。ロシア語では Алексе́й Анато́льевич Нава́льныйと表記され、アレクセイ・ナヴァリヌイと読むらしいので、これが一番正しいのかもしれませんが。
国際語になっている英語は、あくまでも独自路線を貫いているということなのでしょう。地名にしても、オーストリアのウィーンは、「ヴィエナ」と言うし、イタリアのヴェネツィアは「ベニス」と発音したりしますからね。
何でこんな話をするのかと言いますと、先日、久しぶりに婿殿に会った時、驚く体験をしたからです。婿殿は米国人です。その彼が急に「オートルマンは知ってますよね」と言うではありませんか。えっ? オートルマン? 聞いたことないなあ~ 「知らないなあ」と応えると、彼は「えっ?日本人なら誰でも知ってますよ。そりゃあ、おかしい」と言いながら、スマホを取り出して、そのオートルマンというものの画像を私に見せたのです。
なあ~んだ。ウルトラマンじゃないか! 「オートルマンじゃないよ。ウルトラマン。オートルマンじゃ、日本人に通じないよ」と諭しましたが、彼はあくまでも、「いや、違う。絶対にオートルマンだ」と譲らないのです。仕舞いには、「ゴジラ」ではなく、「ガジ~ラ」が正しい、とまで言い出しました。
これで、私は1970年代に流行ったテレビCMを思い出しました。パナソニックのカラーテレビ「クイントリックス」のCMです。1930年代から「あきれたぼういず」で活躍していた坊屋三郎(1910~2002年)が、相手の外国人タレント、トニー・ダイヤが「クイントリックス」と連呼するのに対して、坊屋が日本語風に発音して、「英語でやってごらんよ。なまってるよ。外人だろ、あんた。発音だめだねえ」と切り返して笑いを誘っていました。坊屋さんは随分お爺さんに見えましたけど、当時まだ61歳だったんですね。
英語は現地語の発音を超越して自分たちの発音を押し通すように、日本語も同じことをやっています。
この渓流斎ブログで、以前にも取り上げましたが、第2次世界大戦下の米国の大統領を日本のマスコミは「ルーズベルト」と表記しますが、本来は、つまり、米国では「ローズベルト」Rooseveltと発音します。米下院議長を務めたナンシー・ペロシはペロシではなく、「プロウシイ」Pelosi と発音するので、ペロシと言っても誰のことなのか分かりません。
もっとも日本では和製英語が氾濫しています。今や事故だけでなく、事件や災害の際に大いに活躍しているドライビング・レコーダーがあります。これはdriving recorder で欧米でも通じるかと思っていましたら、米国では、略してdashcam、もしくは dashboard cameraというんですってね。ドライビング・レコーダーでは通じないのです。
何か、本日は「ゲーテとは、俺のことかとギョーテ言い」みたいな話になってしまいましたね(笑)。