漢字を知らない私

 恥をさらします。

 仕事で、たくさんの地名や人名を扱っています。他人様の名前の中には吃驚するほど、今まで聞いたことも見たこともないお名前に遭遇したりします。例えば、祖母井(うばがい)さん、八月一日(ほずみ)さん、薬袋(みない)さんとかです。地名は、読めない漢字が多いのは沖縄や北海道に多いのですが、沖縄の豊見城村(とみぐすくそん)、北海道豊頃町の十弗(とおふつ)、青森県の鷹架沼(たかほこぬま)などがあります。まあ、何千件もありますから、キリがないのでやめておきます。

 私が取り上げたいのは、この年になるまで、間違って覚えていた漢字です。

 東京都葛飾区の「葛」です。「かつしかく」の「かつ」ですが、「くず」とも読みます。この漢字の下方に、周りに囲まれるようにして、「人」の文字が入っております。恥を忍んで申し上げますが、私は、ずっと、これは「人」ではなく、カタカナの「メ」だと思い込んで手書きでそう書いていたのです。

 その間違いに気が付いたのは、つい最近ですから、もう救いようがありませんね。それとも、「生涯勉強だ」と前向きに捉えることにしますか。

築地「魚竹」

 最近、驚いたお名前に、高橋胄さんというという方がいらっしゃいました。「胄」は「よつぎ」と読みます。この漢字は、理由の「由」の下に「月」を書きます。ところが、この「胄」に似た漢字に「冑」があります。こちらは、理由の「由」の下に「月」ではなく、月に似た、横棒がくっつかない字を当てます。実は、こちらの方が馴染み深い漢字で、甲冑(かっちゅう=よろいかぶと)の冑でした。

 逆に言いますと、甲冑の「冑」(かぶと)は、「胄」(よつぎ)ではないのです。

 新聞社や出版社にはこうした間違いを「発見」するお仕事があります。「校閲」とか「校正」とか呼ばれています。縁の下の力持ちで名前は出ませんが、なかなか大した仕事をされているのです。

 いくら大作家、文豪と呼ばれている人でも、校閲さんの影の支えがあってこそなのです。

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